留学内容
本留学の目標は、ヒトの肝臓を生体外で創り出し肝疾患のモデルを確立することです。私は化学を専攻する学生でしたが、細胞と分子が織りなす複雑で規律的な生命の発生現象に興味を持ち、再生医学を学ぶ決意をしました。肝臓は人体の化学工場ともいわれており、様々な分子の合成や分解・貯蔵を担っています。したがって、分子が持つ性質や相互作用の解明を対象とする化学との相性が非常に良い臓器です。留学中は、ヒトのiPS細胞から小さな肝臓様の組織を創り出し、この組織を脂肪酸分子と共に培養して脂肪肝の生体外モデルを構築しました。「組織を構成する細胞」と「脂肪酸分子」との相互作用を深く観察することで、どの様に脂肪が肝臓に蓄積していくのかなど、興味深い結果を得ることができました。現在、先進国の成人人口の30%が脂肪肝の疑いがあるという報告があり、その治療薬の開発が世界中で行われています。今回の留学で構築した脂肪肝モデルは、今後スクリーニングへの応用などが期待され、創薬分野に大きなインパクトを与えることができると考えています。