留学大図鑑 留学大図鑑

村山安寿

出身・在学高校:
東京都立日比谷高校
出身・在学校:
東北大学
出身・在学学部学科:
医学部医学科
在籍企業・組織:


最終更新日:2024年09月13日 初回執筆日:2024年09月13日

利益相反研究で患者さんのための医療を実現

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • マウントサイナイ医科大学ポピュレーションヘルスサイエンス・医療政策学分野
  • アメリカ合衆国
  • ニューヨーク
留学期間:
6.5か月
総費用:
5,000,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,300,000円
  • 大学独自のもの 300,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル<TOEFL iBT 86点> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

医療者は製薬企業や医療機器企業から研究費やグラントだけでなく新薬・新製品の販売促進のためプロモーション目的の講演会や説明会に招待されることや飲食を振る舞われること、高額な講演謝金やコンサルティング料を受け取ることがある。このような企業からの金銭供与は本来患者の治療を第一に考える医療者にとって利益相反になり、時として不必要な治療や不適切な医療行為につながる。
アメリカではこのような製薬企業・医療機器企業から医師、看護師、教育病院に対して支払われた全ての金銭を米国政府がホームページ上で公開している。私が留学したマウントサイナイ医科大学を含め、ハーバード大学やイェール大学、コロンビア大学、ペンシルベニア大学、南カリフォルニア大学、コーネル大学など世界トップの医療政策学者が日夜このようなデータを使用して利益相反が医療経済や医師の処方傾向、患者の治療効果に対して与える不適切な影響について研究を行っている。
このような背景から私は日本で唯一医療界における利益相反研究を行う研究者としてマウントサイナイ医科大学のDeborah Marshall教授の研究室に留学し、世界を牽引する米国の利益相反研究の研究・調査手法やトップジャーナルに論文を掲載するノウハウを学ぶだけでなく、世界トップのアカデミアの雰囲気などを知ることができた。

留学の動機

大学2年生より医師と製薬企業間の金銭的利益相反がガイドラインや医師の治療行為に与える影響の調査など学術研究に取り組んできた。研究成果は大学5年生時点までに60報以上の学術論文を英文専門誌から世界に発表した。しかし、自分の研究範囲は日本に限られていたため、同時期にアメリカなど海外の研究チームから自分よりも優れた研究成果が多数発表されたことから、海外の著名な研究者の下で学びたいと考え留学した。

成果

留学期間中に合計30本以上の学術論文を執筆した。例えば、製薬企業が新薬の販売促進目的で婦人腫瘍科医にふるまう高級弁当が婦人腫瘍科医の癌治療内容に影響を及ぼすことを世界で初めて証明した(Gynecol Oncol. 2024.)。さらに製薬企業の影響は医師個人だけでなく、治療ガイドラインを作成する医学会に対しても莫大な金銭が流れていることを明らかにした(JAMA Netw Open. 2024)。

ついた力

何とかなる力

留学前の時点では自分の研究にかかわる専門的な会話はある程度できたが、文法的に正しく話せているかなどが気になって上手く自分の考えを主張できないことがあった。また、留学先の大学は医学領域で世界一の研究機関と称されていたため漠然とした憧れと劣等感があった。しかし留学中は毎日自分の意見を求められる環境で、留学中も多数の論文を一流誌から発表でき、自分の力が世界でも十分に通用することがわかった。

今後の展望

今後はこれまで学生時代や留学中に培った研究能力や思考回路を生かして1人の臨床医として患者を診ながら現場からの課題発見、解決に努めていきたいと考えている。またこれまで研究を重ねてきた利益相反に関する研究は私が一人の医師としてどんな人間かを規定するためにも重要であると考えるため、今後も継続していく所存だ。

留学スケジュール

2023年
9月~
2024年
3月

アメリカ合衆国(ニューヨーク)

医療者は製薬企業や医療機器企業から研究費やグラントだけでなく新薬・新製品の販売促進のためプロモーション目的の講演会や説明会に招待されることや飲食を振る舞われること、高額な講演謝金やコンサルティング料を受け取ることがある。このような企業からの金銭供与は本来患者の治療を第一に考える医療者にとって利益相反になり、時として不必要な治療や不適切な医療行為につながる。
アメリカではこのような製薬企業・医療機器企業から医師、看護師、教育病院に対して支払われた全ての金銭を米国政府がホームページ上で公開している。私が留学したマウントサイナイ医科大学を含め、ハーバード大学やイェール大学、コロンビア大学、ペンシルベニア大学、南カリフォルニア大学、コーネル大学など世界トップの医療政策学者が日夜このようなデータを使用して利益相反が医療経済や医師の処方傾向、患者の治療効果に対して与える不適切な影響について研究を行っている。
このような背景から私は日本で唯一医療界における利益相反研究を行う研究者としてマウントサイナイ医科大学のDeborah Marshall教授の研究室に留学し、世界を牽引する米国の利益相反研究の研究・調査手法やトップジャーナルに論文を掲載するノウハウを学ぶだけでなく、世界トップのアカデミアの雰囲気などを知ることができた。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

450,000 円

生活費:月額

200,000 円

項目:往復旅費、研究用解析ソフト・データベースサブスク費用、その他

400,000 円

恩師のデボラと共同研究者のエリザベスと留学最終日のディナー
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

450,000 円

生活費:月額

200,000 円

項目:往復旅費、研究用解析ソフト・データベースサブスク費用、その他

400,000 円

スペシャルエピソード

留学前後での、自分の変化

全てにおいて金がかかるニューヨークにおいて唯一金のかからない娯楽があった。美術鑑賞である。Fifth Avenueの中心にあるメトロポリタンミュージアムは合計300万点もの芸術作品を収蔵する世界最大の美術館である。ここはニューヨーク居住者であればPay what you wish で1セント(約1円)から自分の好きな金額を払えば入場できる。さらに夜21時まで開館しているため、私が仕事終わりに毎日のように通った思い出の美術館だ。MET以外にもMoMAやGuggenheim、Noguchi美術館など他の名だたる美術館も訪れたが、特にMETには留学中合計50回以上も訪れた。
これまでの私の論文は、感覚的に目指すべき方向を定め進んできた感覚があった。しかし、留学中に数々の優れた芸術作品に触れて、今後は今まで以上に真善美を意識した診療・研究・論文執筆をしていこうと決意した。

メトロポリタン美術館の外観
ゴッホのTwo Cut Sunflowers
アメリカを代表する印象派画家Mary Cassattの作品

留学先探し

  • 留学先探し : 大学

私が留学したマウントサイナイのDeborah C. Marshall教授は、大学や知り合いの伝手で留学が決まったわけではなかった。私が自ら留学したいとデボラにメールをしたところ、2日後には「ぜひ留学においで!まずは今週中にZoomミーティングをやろう!」と返信があり、とんとん拍子で留学受入れが決まった。
実は、私はデボラ以外にも30人ほどこの研究分野で著名な研究者に留学できないかと連絡した。そのうち返信をくれたのは5人、留学受入れを快諾してくれたのは3人だけであった。打率1割であった。デボラ以外に私の留学受入れをしてくれた2人の研究者のところに実際に留学することはなかったが、デボラと共に彼女らとも研究チームを築き、多くの共同研究を現在も行っている。
よく留学をしてみたいが留学先が無いと言う学生に出会うが、難しいことを考えず自分の興味がある研究分野の研究者を50人くらいピックアップして、とりあえず手当たり次第に連絡を取ってみるのが良いと思う。
そもそも何の専門性もない大学生や修士学生などには誰も期待も信頼もしていない。数か月間研究留学したところで何かの研究プロジェクトを完遂するのは困難である。しかし、難しく気負って踏み出せずにいればいるほど時間ばかり経って、より一層動けなくなる。何も持たない学生という身分だからこそ気軽に動けるし、目の前のことに懸命に取り組み良い仕事をすれば、自ずと信頼されるようになる。

留学前にやっておけばよかったこと

特にない。

留学を勧める・勧めない理由

留学に限らず、何かしら自分と異なる世界、特にその業界でトップの世界に飛び込むのはとても良いことである。海外留学すると、他国の「常識」と日本の「常識」がどれほど違うのか感じるはずだ。特にこの1年間でChatGPTやGeminiなど一般人でも容易に高性能なAiにアクセスできるようになった。そのような世界では、かつてないほど実際に自分の足を運ぶことでわかるリアルな情報に価値が出るようになった。

これから留学へ行く人へのメッセージ

出来もしない大口ばかり叩いてないで、目の前のやりべきことを淡々とやる。毎回ちゃんと良い仕事をして信頼を得る。たとえ世界一と言われる人物であっても、死ぬ気で食らいついていけば自ずと上手くいく。一朝一夕で飛躍することなど有り得ないのだから黙々と良い仕事をしていれば、自然と周りから大きなチャンスをもらえるようになります。