- 現在の研究分野等について簡単に教えてください。
- 映像人類学と呼ばれ、従来の論文に映像を加えることで、より多角的な他文化理解を目指す新しい学問です。私の研究テーマはアマゾンの森林に住む先住民の方々の自然環境との関わりについてで、衣食住を中心に彼らの生活が現代においてどのように変貌しているのか、またそれに対する新たな取り組みなどは何か、について研究しています。研究の一環として、実際に1年間現地に住み込みで滞在し、彼らの生活様式に直に触れる貴重な経験を積むこともできました。
- 海外の大学に進学をしようと思った理由、きっかけは何ですか。
- 現在学んでいる学問を専門的に学べる機関が日本になく、世界的にも希少だったため、海外に出ようと思いました。また、現在私が所属している博士課程の同僚たちは、イギリス人に加えアジア、中南米、中東、北米、他のヨーロッパ諸国といった様々な国々から集まっています。このように、イギリスという国際色豊かな大学院教育を行っている国で学ぶことで、日本に留まっているだけでは決して触れることのできない多角的な考え方を身につけることができ、学問的な能力が研ぎ澄まされるだけでなく、人間的にも成熟できると思いました。
- 海外の大学に進学をするにあたり、ハードルに感じていたことは何ですか。そしてそれをどう乗り越えましたか。
- 博士論文の執筆はもちろん、口頭発表や毎日の授業などを、高いレベルの英語でこなすことができるかは不安でした。一年目は自信もあまりなく苦労したものの、地道な努力と日々英語での議論を積み重ねることによって、完璧で複雑な英語でなくても正確に議論を行う力が身についたと思います。非ネイティブスピーカーの学生たちから英語の使い方について学ぶことも多く、今では国際学会で発表や質疑応答を堂々と行えるようになりました。
- 実際に留学をしてみて、良かったいと思っていること、大変と思っていることは何ですか。
- よかったことは、日本では学ぶことが難しい分野に関する先端的な教育を受けることができたこと。多様性溢れる環境の中で他者に対する感受性が高まったこと。国際的に重要な国際学会などに参加するチャンスが多く、世界中に人脈を広げることができたこと。大変だったことは、外国人という立場になることで時には偏見や嘲りと戦わないといけないこと。
- 海外の大学に進学することを希望している後輩へのメッセージはありますか。
- 海外の大学に進学することのメリットは、決して勉学面だけではありません。語学はもちろんのこと、今まで気にも留めなかった日常の細部から様々なことを学ぶことができます。帰国後は慣れ親しんだ日本も全く違う姿として目に入ってきます。そのような経験はあなたの思考や人格を豊かにし、深みを与え、今後様々な場面で活かされると思います。ぜひ真剣に考えてみてください。
- その他伝えたい事、思うことがあれば自由に記述してください
- 海外で学位を取得することは、交換留学とは全く異なる重要性を持つと思います。単なる経験を超え、異なる国の歴史や学問の体系を、その身に刻み込み、魂を宿すことに等しいからです。人生の様々な機会で、それは大きな意味を持つことになると信じています。国境を越えることが以前ほど難しくなくなった今日だからこそ、「手軽」ではないけれど「本物」のチャレンジをしてほしいと思います。