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Shiryu Kirié

出身・在学高校:
埼玉県立春日部高等学校
出身・在学校:
東京大学
出身・在学学部学科:
農学生命科学研究科
在籍企業・組織:
metaPhorest

生物学と美術に関心があります.専門は理論生物学.主に植物の研究をしてます(2019年現在).
返信等お時間いただく場合があります.


最終更新日:2020年03月03日 初回執筆日:2020年03月03日

モネの睡蓮にまつわる植物学/美術史的研究

留学テーマ・分野:
フィールドワーク
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • フランス国立農学研究所(INRA)
  • フランス
  • タンプルシュルロット・モンペリエ
留学期間:
2か月
総費用:
500,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 570,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
フランス語 挨拶など基本的な会話ができるレベル 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル

留学内容

私は人為交配の繰り返しにより花が「美しい姿」を獲得するプロセスを生物学的な観点から研究しています.特に美術史に登場するような花がどのように生まれたのかに関心があり,今はモネの『睡蓮』に描かれているスイレンの花のかたちを研究しています.トビタテのプロジェクトでは,スイレンの形の変遷過程を明らかにするためのデータ取得と解析手法の開発を行うため,Latour-marliac社とフランス国立農学研究所(INRA)に滞在しました.Latour-Marliac社(LM社)はベルエポック期に画家モネの庭園にスイレンの苗を提供したナーセリ(種苗取扱業社)であり,フランスのTemple-sur-Lotに現存しています.ここではモネが描いた品種を含めたくさんの花の画像データを取得することができました.また,現地で開催された国際睡蓮協会のシンポジウムに招待され発表を行いました.モンペリエのフランス国立農学研究所ではスイレンの三次元花形態を解析するためのプラットフォームを開発しました.ここではコンピュータモデリングを駆使し植物器官の形態を表現・解析する新規モデルの提案を行い,現在論文および国際学会での発表を目指して研究を継続しています.

留学の動機

私の研究はフランスの美術史と深いかかわりがあり,またモネが描いたとされる品種のコレクションを保有するナーセリもあります.なによりそのナーセリ自身がかつてモネのスイレンを生み出した場所となれば,これ以上私の研究に必要な場所もありません.修士課程2年の時に初めてLM社にコンタクトを取ってから,粘り強く調整を重ね植物採取のチャンスをつかみました.トビタテには主に経済的な面で背中を押していただけました.

成果

十分な画像データの取得以外にも多くのブリーダやコレクタと知り合いになることができ,今後プロジェクトの進展に生かしうる人脈を形成することができたと思います.シンポジウム外でもミラノから本プロジェクトに関心を寄せる美術作家が私の活動を聞いて訪問してくれ,協力関係を結ぶことができました.INRAでも実りある研究活動ができ,日本に戻ってからも研究を継続しています.

ついた力

協力

あらゆる場所で様々な人の力を借りました.これは滞在している現地に限ったことではなく,日本の友人や研究室のメンバなど,ずっと支え続けてくれる人々の力も含まれます.

今後の展望

博士論文を仕上げる,というのがさしあたり目標ですが,この研究にはアートプロジェクトとしての側面もあるため制作と展示を積極的に行っていきたいです.生物(学)と美学は私の活動のなかの一貫したテーマでもあるので,博士課程を終えた後も極めていきたいと思っていますし,できれば関連が見いだせる仕事を見つけたいと考えています.

留学スケジュール

2019年
8月~
2019年
8月

フランス(タンプル=シュル=ロット)

植物採取以外にも,スイレンのブリーディングにまつわる国際シンポジウムに招待していただき発表するなど多くの交流の機会を得ることができました.とくに滞在の終盤には私の研究活動を聞きつけてミラノから美術作家の方が訪問してくださり,協力関係を結ぶことになったことは印象的な出来事でした.また,LM社のはからいでモネ自身とも交流があった初代オーナの邸宅(現在はすでに一族は住んでいない)に宿泊させていただくことになり,ベルエポック期当時の雰囲気を感じ取ることができました.

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

シンポジウムの様子は地元の新聞で取り上げられました.
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

2019年
9月~
2019年
10月

フランス(モンペリエ)

INRAの数理統計情報チームで研究活動を行ったほか,日本数理生物学会のシンポジウムのオーガナイザを遠隔で務めました.『数理生物学の生命観』と題したテーマは美術史と生物学の交点に関心がある私にとって思い入れの強い事柄でもあり,シンポジウム前後にフランスで思索を深める中で影響を与えてくれたと思います.

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

おはようございます(フランス時刻AM2:00).
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

この国のことが、とても好きになった瞬間

モンペリエのよいところは,やはり海とワインでしょう.きらきら輝く海を眺めつつ,ラングドック産のすばらしいブドウから作られたワインを飲むこと以上に気分の良いことはそうありません.かのポール・ヴァレリーが『海辺の墓地』で「ああ,風が立つ!」(有名な邦訳では「風立ちぬ」)と詠んだSèteの海もモンペリエのすぐ近く.「生きねば」と気力をみなぎらせ......ることも大事ですが「生きてるな~」くらいの感じで美しい時間を感じることもまたよいものです.

ヴァレリーの眠る海辺の墓地.こころなしか風が立つのを感じる.

帰国便の欠航

  • 事前準備 : 渡航手配(VISA、保険、持ち物など)

帰国予定日の前日に,台風が本州上陸予定とのニュースを耳にしました.とはいえ上陸予定時刻までは余裕があり,たかだか遅延程度で済むと思って翌日には空港に移動しました.実際,予定便は遅延になったので,一晩を空港近くのホテルで過ごすことにします.
ところが起きてみると,日本発着全便欠航!しかも数日以内の日本行きの便はすべていっぱいで,乗れる便を待つには5日くらい先になるとのこと.結構大変です.明日は友達の結婚式なのに.......泣きそうになりますが,泣いても仕方ないので他の日本人グループと合流して情報を集めることにしました.結局状況は動かず,あきらめてグループを組んだ人たちとホテルに向かいました.さよなら友人の結婚式.
そんな中,メンバが忘れ物をしたため一緒に空港に戻ることに.すると奇跡的に一便だけ動くとの情報が!すかさず搭乗手続きをして飛行機に飛び乗ることができました.結婚する友人に送ってしまった出席キャンセルを上空でキャンセルし,なんとか式を祝うことができたのでした.

家に帰るまでが留学です.もし帰れなくなってもあきらめずに情報を集めてあがきましょう.その努力がまったく意図しない流れをもたらすかもしれません.

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学に行くことが決まっている人,行くことを決意した人,行こうと思い始めた人,いろいろだと思います.
その個別の思いを前にして,僕から勇ましいことを言ったり,耳障りのよい言葉をかけるのはかえっておこがましい気もします.

というわけで,いってらっしゃい.