中村 彩音

出身・在学高校:
長野県立野沢北高等学校
出身・在学校:
明治薬科大学大学院
出身・在学学部学科:
薬学研究科 生命創薬科学専攻
在籍企業・組織:
(公財)がん研究会 がん化学療法センター


最終更新日:2026年08月25日 初回執筆日:2026年08月25日

AI×がん創薬

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • ケンブリッジ大学
  • イギリス
  • ケンブリッジ
留学期間:
6ヶ月
総費用:
3,860,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,310,000円
  • (学内奨学金、長井記念薬学研究奨励金、日本学生支援機構 等) 2,550,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<TOEIC 865点> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

本留学では、「AIや最新の解析技術を駆使して、新たながん治療につながる研究ができる研究者になること、そして世界で活躍する研究者とのつながりを築くこと」をテーマに、英国ケンブリッジ大学のRaza Ali研究室に約6か月間滞在しました。
がんは、同じ種類でも患者さんによって性質や治療への反応が異なります。その違いを理解して創薬へと結びつけるには、がん細胞だけでなく、周囲にどのような免疫細胞がいるのか、どのような遺伝子が働いているのかなど、さまざまな情報を組み合わせて捉えることが重要だと考えました。そこで、約5,000検体の乳がん組織を対象に、「どのような細胞が、どこに、どのような状態で存在しているのか」を調べる最新の空間解析技術を学び、がん細胞と免疫細胞の関係や治療後の経過との関連を解析しました。
また、異なる専門を持つ研究者との交流にも積極的に参加しました。留学先では毎週金曜日の夜に研究所内に一時的なパブが開かれ、AI・データ解析、免疫、遺伝学、細胞老化など、世界トップレベルの研究者と気軽に議論できる環境がありました。こうした交流を通じて、新たな研究の視点や解析方法を学ぶとともに、今後の研究につながる国際的なネットワークを築くことができました。

留学の動機

がん創薬研究に取り組む中で、解析技術が目まぐるしく発展する一方、自身の専門性だけでは限界があり、新しい技術や考え方を取り入れる必要性を感じていました。そんな中、Natureに掲載されたAli研究室の論文に出会い、最先端技術でがん組織を空間的に解析する研究に強く惹かれました。「留学するならこの研究室」と決意し、自ら研究室に連絡。面接の機会をいただき、今回の留学が実現しました。

成果

約5,000検体の乳がん組織を対象に、細胞の種類や位置を捉える最新の解析技術を習得し、遺伝子やタンパク質の発現、細胞の形に着目した解析にも取り組みました。また、研究成果を発表し、さまざまな専門を持つ研究者と議論を重ねました。これらを通じて、がんを多角的に捉える研究視点や、AI・データ解析を生かす考え方を身につけ、帰国後の研究につながる国際的な研究者との関係も築くことができました。

ついた力

異分野を統合し研究を拓く力

本留学を通して、AI・データ解析、免疫、遺伝学など異分野の研究者と日常的に議論し、一つの課題を多角的に捉える視点を学びました。特に身についたのは、一見難しく見える新しい技術も、仕組みを一つずつ紐解いて理解し、自分の研究に取り込む力です。異なる技術や知識をただ学ぶのではなく、自らつなぎ合わせて使いこなすことで、これまで見えなかった発見へつなげる姿勢が身につきました。

今後の展望

今後は、「自分に何ができるか」から研究を考えるのではなく、「患者さんのために何を明らかにすべきか」から逆算し、必要な技術や専門性を柔軟に取り入れられる創薬研究者を目指します。AIや空間解析など、分野の境界を越えて得た知識を自分なりに組み合わせ、まだ誰も見つけていない治療の可能性を形にしたいです。そして、国内外の研究者と協働しながら、研究室で生まれた発見を実際の治療へとつなげていきたいです。

留学スケジュール

2025年
8月~
2026年
2月

イギリス(ケンブリッジ)

英国ケンブリッジ大学Raza Ali研究室に訪問博士学生として約6か月間所属し、乳がん組織約5,000検体のIMC解析やXeniumとの統合解析に取り組みました。研究室のミーティングやセミナーでは自身の研究成果を発表。11月にはNorwichでのラボ合宿に参加し、研究室の振り返りや今後の方針についてメンバー全員で議論しました。毎週水曜日はピザを片手に最先端の研究者によるランチセミナーを聴講し、金曜日は研究所内のパブで分野を越えた研究者との交流を楽しみました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

160,000 円

生活費:月額

100,000 円

項目:航空券

380,000 円

留学先のCancer Research UK
初日に迎えていただいた手書きのWelcome Board
金曜の夜は、研究所のパブで乾杯!
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

160,000 円

生活費:月額

100,000 円

項目:航空券

380,000 円

スペシャルエピソード

まさかの研究者バンドに加入!

「ピアノを弾いたことがあります」と何気なく話したことをきっかけに、研究者たちのバンドに参加することに!後から、メンバーが研究所長や著名な研究者の方々だと知り、とても驚きました。毎週練習を重ねるうちに、普段は少し緊張してしまうような先生方とも音楽を通じて打ち解け、最後には研究所内で演奏を披露しました。練習のためにイギリスでロールキーボードを購入したのも、良い思い出です。

本番に向けて猛練習した研究者バンド

ケンブリッジを巡る10kmのNight Walk

がん研究支援のチャリティイベント「Shine Night Walk Cambridge」に参加しました。募金活動を行いながら、多くの参加者と夜のケンブリッジを10km歩きました。普段は「研究する側」にいる私にとって、がん研究を支えるためにこれほど多くの人が集まる姿はとても印象的でした。研究は研究者だけで成り立つものではなく、多くの人に支えられていることを改めて実感。仲間と真夜中のケンブリッジを歩き切った経験は、忘れられない思い出です。

無事完歩!
真夜中のケンブリッジを歩く10kmコース

大の苦手だった英語を『研究を語れる英語』へ

  • 語学力 : 英語

英語は、昔から全教科の中で一番の苦手科目。留学前も日常会話ができる程度でした。そんな私に、留学初日にPIから言われたのが「この留学では、言語の壁を理由にシャイにならないこと!」。しかし、実際はブリティッシュアクセントの壁も高く、最初の頃はPIとの毎週のミーティングで聞き取れない部分を、ラボマネージャーに英語から英語へ“通訳”してもらうほどでした。
特に悔しかったのは、日常会話ではなく、研究について「自分はこう考える」と言いたいのに、英語が出てこないこと。そこで、お金をかけずにできる方法としてChatGPTを活用し、毎日約2時間、研究ディスカッションに特化した英会話練習を始めました。
毎回、最新論文を2本ほど選び、「この研究をどう考えるか」「どんな課題が残っているか」などを、専門用語を使いながら英語で議論。さらにブリティッシュアクセントで話してもらい、自分の文法や発音、伝わりにくい表現はその場で修正して、もう一度言い直すことを繰り返しました。
目指したのは、単に「英語を話せる」ようになることではなく、「自分の研究や考えを英語で伝え、相手と議論できる」ようになること。苦手だからこそ逃げずに、自分に必要な英語を自分なりの方法で鍛え続けました。

渡航前最大の難関!日本から家探し

  • 住まい探し : シェアハウス

留学前、最もヒヤヒヤしたのが「家探し」です。私は交換留学ではなかったため大学が用意する住居には入れず、さらに渡航は8月。9月に新学期が始まるイギリスではまだ学生の入れ替わり前で、ケンブリッジ大学の学生寮にも空きがありませんでした。
そこで、比較的家賃を抑えられるシェアハウスを日本から探すことに。最初はRightmoveを利用しましたが、不動産会社を介する物件が多く、英国での居住歴や英国在住の保証人、家賃の一括前払いなど、渡航前の私には難しい条件がありました。そこで、オーナーと直接やり取りできるSpareRoomに切り替えました。
まだ入居者がいる物件も、WhatsAppのビデオ通話でオンライン内見をお願いし、探し始めて1週間で約5軒を内見。最終的には、家具だけでなく食器や鍋まで貸してくださる親切なオーナーの物件に決めることができました。
人気の物件はオンライン内見後にもすぐ埋まってしまうため、「ここだ!」と思ったら素早く決断する思い切りも大切だと実感しました。結果的に、国際色豊かなフラットメイトにも恵まれ、夜にはそれぞれの研究について語り合うことも。苦労した家探しでしたが、シェアハウスだからこそ得られた出会いも、留学生活の大切な思い出になりました。

国境を越えて仲良くなったフラットメイト

留学前にやっておけばよかったこと

英語、特に「研究について議論する英語」をもっと練習しておけばよかったです。日常会話ができても、自分の研究を説明し、その場で相手の意見を理解して考えを返すのは全く別物でした。専門用語を知るだけでなく、論文を題材に「自分はどう考えるか」を英語で話す練習をしておくと、留学初日からより積極的に議論へ飛び込めたと思います。

留学を勧める・勧めない理由

私は留学を強く勧めます。最先端の技術以上に、「こんな研究の考え方もあるのか」と、自分の当たり前が何度も覆された6か月でした。英語や専門の壁があっても、飛び込めば周囲が助けてくれます。一方で、自分の知識や何気ない発言が、誰かの研究のヒントになることもありました。環境を変えることで研究の選択肢だけでなく、「自分にもできること」の幅が大きく広がりました。

これから留学へ行く人へのメッセージ

「英語ができるようになってから」「もっと研究成果を出してから」と、準備が整うのを待つ必要はありません。私自身、英語は大の苦手で、留学先探しも一通のメールから始まりました。それでも、一歩踏み出した先には想像以上の出会いと経験が待っていました。完璧でなくてもまず飛び込んでみる。そして、面白そうなことには遠慮せず手を挙げる。それが留学を何倍も面白くしてくれます。皆さんの留学が素敵なものになりますように!