藤本拓実

出身・在学高校:
出身・在学校:
京都大学大学院
出身・在学学部学科:
エネルギー科学研究科 エネルギー社会・環境科学専攻
在籍企業・組織:

留学に関する質問等ございましたら、お気軽にご連絡ください。


最終更新日:2026年09月24日 初回執筆日:2026年09月24日

人々に寄り添うエネルギー技術者を目指して

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • マラヤ大学
  • マレーシア
  • クアラルンプール
留学期間:
1年
総費用:
2,000,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,530,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<IELTS 6.5> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

今回の留学では、「地域の人々に寄り添える技術者」への第一歩として、途上国地方部への電力供給の現場を知ることをテーマとした。途上国地方部には、遠隔地であるため電力供給が難しく、電化率が低いという問題がある。今回はこの問題に取り組んでいるラボに滞在し、電化プロジェクトに参加した。

具体的には、修士学位取得のための講義を受けながらラボに所属し、そのラボのプロジェクトとして地方への電力供給に向かうという体制をとった。これにより、講義や研究を通して経済・環境的側面を学び、プロジェクトを通して社会的側面(住民のニーズなど)を知るという計画でテーマの実現を目指した。結果、講義では経済や法制度の知識を深め、研究では環境的側面の最先端の知識や研究スキルを得ることができた。その成果として派遣先大学の単位取得及び修士論文の提出は完了し、現在投稿論文の執筆を行っている。また、プロジェクトでは実際の設備導入に必要な知識と経験を得るとともに、住民や関連するステークホルダーの考えを学ぶことができた。

これらの当初予定していた活動に加えて、ラボ内で産学連携のEV(電気自動車)蓄電池の再利用プロジェクトに参加し、コアメンバーとして実験・調査とイベントでの広報を行った。結果として、大学構内でのプロジェクトを技術部門のリーダーとして完遂し、帰国後に行われるEV蓄電池を利用した地方電化プロジェクトの基幹設計にも携わることが出来た。また、こうしてラボ内で得た知識や技術をもとに他の学生と積極的に議論を行い、今後の研究に繋がる国際的なネットワークを構築できた。

留学の動機

学部生でエネルギーという分野に進んでいくと決めたとき、卒業までにその分野で世界に通用する研究力を身につけたいと思うようになった。そのためには海外の研究者と対等に議論を行い、自分の感覚や視野を拡げる必要があると考え、修士での留学を決めた。その後、専門の勉強をしていく中で途上国でのエネルギー地方格差の問題を知り、大学間協定校で、かつその研究を行えるマレーシアの大学・研究室への留学を決めた。

成果

本留学の一番の学びは、研究が社会実装として実を結ぶまでの過程の複雑さを知ることが出来た点である。特に今回はラボと大学、企業、政治家、そして地方に住む住民など、様々なステークホルダーが関わるプロジェクトに携わることが出来た。その中で、それぞれのキーパーソンがいかに綿密に連絡を取り合い、どのようにトラブルに対処していくのかを知り、細かなコミュニケーションの重要性がよく分かった。

ついた力

人に頼る力

留学中はチームでプロジェクトに取り組むことが非常に多く、社会実装に関わるため失敗も許されなかった。初めはそのプレッシャーや周囲への過度な遠慮から自分一人で多くの仕事を抱え込んでしまい、苦しくなってしまうこともあった。しかしそれではプロジェクトの成功のためにはならないと気づき、変にためらうこと無く周りに頼ることが出来るようになった。

今後の展望

留学を経て学術研究の楽しさに気づくことが出来た。今後は留学で築いた人脈を活かして、博士課程への進学を予定している。その中でも産学連携や社会実装についての経験を積み、エネルギーシステム導入の現場を理解できる研究者に成長したい。そのような経験を通じて、地域に寄り添うエネルギーとはどうあるべきなのかを模索し、最終的に自分がどのような立場でそれを実現できるのか考えたい。

留学スケジュール

2025年
10月~
2026年
9月

マレーシア(クアラルンプール)

マレーシアのマラヤ大学で1年間、Master of Renewable Energyコースの講義聴講、修論提出を行い、UMPEADCのSmart grid research labに所属して研究活動とフィールドワークを行った。講義では持続可能な開発や環境に優しい街づくり、取られている政策などについて学び、特に政策では途上国ならではのスピード感を感じた。また、このコースは主に東アジア、東南アジアの様々なバックグラウンドの学生が受講しており、それぞれの国におけるエネルギー資源への考え方など、貴重な意見を聞くことが出来た。

一方、研究室では地方電化プロジェクト3つと大学キャンパス内のプロジェクト1つに参加し、そのプロジェクトに関連する研究を行った。地方電化プロジェクトではマレーシア・サラワク州の森林地帯の奥深くまで四駆やボートで進み、そこにある集落で太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムを導入した。普段の生活とは全く異なる環境で1週間程度過ごし、言語や衛生環境の問題で心が折れそうになったが、チームの皆や住民の方々の優しさに支えられ、無事システムを導入することが出来た。システムが完成し電気が通った時、皆と喜びを分かち合えた経験は、これからの自分の研究の原動力になると感じている。

また、クアラルンプール滞在中は研究にハマってしまい、特に講義の少なかった後期は朝から晩まで研究室で実験とプロジェクト準備に時間を費やした。この際、指導教員やPhDの先輩と何度も議論を重ね、自分の英語でのコミュニケーション力に少しずつ自信をつけていった。皆さんが多忙な中で、端的に情報をまとめ、次のアクションプランを何度も提案したことは、非常に良い経験だった。たまに友人と都市部へ出かけて、ご飯や遊びを楽しんだのは良い思い出である。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

96,000 円

生活費:月額

30,000 円

研究室があったマラヤ大学のビル
プロジェクトで導入した太陽光発電システム
友達と初めてビリヤードに挑戦
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

96,000 円

生活費:月額

30,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

指導教員の先生にはとてもお世話になった。マレーシアに渡航した日、単身で海外に長期間滞在するのが初めてで不安だった私を先生は空港まで迎えに来て下さり、ご家族と一緒に夕食をご馳走して下さった。「世の中にはこんなに親切な人がいるのか」と感動したのを覚えている。その後も先生とは何度もランチに出掛け、そのたびに現地での生活を気にかけてくださった。
また、PhDの先輩にも大変お世話になった。アカデミアの基本を分かっていない私に対して、先輩は研究の仕方や論文の書き方を丁寧に教えて下さった。プロジェクトでも常にお互いをサポートし、築き上げた信頼関係は生涯の宝物である。これから研究者として成長し、お二人に恩返ししたい。

研究室でのランチ
先輩とタッグで臨んだ大学構内のプロジェクト

ココでしか得られなかった、貴重な学び

マレーシアは多民族、多宗教が共在する国で、人々の価値観も様々である。信仰が薄い私にとってその国での人々の暮らしは興味深く、より知識を深めるためにモスクや教会に足を運んだ。
イスラム教のモスクにはラマダン中にお邪魔し、イフタール(日没後に断食を終えて食べる食事)のイベントに参加した。そこではイスラム教の考え方を学び、同時に日本人のイスラム教徒の方ともお話出来た。また、キリスト教の教会にはマレーシアの独立記念日にお邪魔し、英語での礼拝に参加した。こちらでは主にキリスト教を信仰している皆さんの考え方や、入信に至ったきっかけなどを中心にお話を伺った。
こうした経験を通じて、宗教がいかに人々の生活に浸透しているのかを深く実感できた。また、これらの宗教に対する敬意をこれからも忘れないようにしたいと思った。

モスクでのイベント
キリスト教の教会。中はモダンな内装だった

拙い英語でも議論を行う工夫

  • 語学力 : 英語

留学開始当初は長時間英語で話し続けることにあまり慣れておらず、指導教員との議論がうまく進まないことがあった。指導教員は多忙な中で時間を割いてくれていたので私としてもとても申し訳なく思い、英語がうまくなくても素早い議論の展開を行うにはどうすれば良いか考えた。
そこで有効だったのが、議論の前にできるだけ詳細に資料を準備することだった。自分の提案をパワポに起こしたり、紙に書いて整理したりして端的に状況を整理し、論文で読んだ単語をすぐ使えるようにしておくことで、短い時間で相手に意図を伝えることが出来るようになった。また、それをくり返す内に単語や言い回しに慣れてきて、資料を減らしても口が回るようになった。
今回は準備に時間をかけることで乗り切ったが、元から議論できる英語力があるに越したことはない。これからは日頃から単語を使い慣らしておき、主張を組み立てる練習をしておく必要があると感じた。

留学前にやっておけばよかったこと

基礎的な中国語の勉強。東南アジアの大学(特に修士課程)には中国からの留学生が最近は非常に多いらしく、私の取っていたコースや研究室のメンバーも半分以上が中国からの留学生だった。そのため、彼らの日常会話は中国語で行われることが多く、そのグループにはなかなかなじめなかった。交流の幅を拡げるためにも、言語事情にはもっと気をつけるべきだった。

留学を勧める・勧めない理由

留学は自分の将来についての先入観を壊し、可能性を広げる手段として、非常に魅力的だと思う。日本で得られる限られた情報の中で自分の将来を考えるより、世界の若者達が今どのような考えを持ち、世界の研究者達が今どんな目で社会を見ているのかを知った上で今後を考える方が、自分にとってより後悔の少ない選択になるのでは、と私は考えている。

これから留学へ行く人へのメッセージ

普段とは異なる環境に身をおけることはとても貴重なことだと思います。最低限、自分の心と体を休める場所を確保した上で、色んなことに挑戦してみて下さい。そして考えたこと、感じたことを言葉にしてみて下さい。後からそれをゆっくり整理すれば、自分の想像とは全く違う、新しい発見があるかもしれません。皆さんの留学が皆さんの納得のいくものになるよう、心から願っております。