留学大図鑑 留学大図鑑

K

出身・在学高校:
兵庫県立長田高等学校
出身・在学校:
神戸大学大学院
出身・在学学部学科:
国際文化学研究科
在籍企業・組織:


最終更新日:2021年01月06日 初回執筆日:2021年01月06日

対話の媒介項としての芸術のあり方

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • ベルリン自由大学
  • ドイツ
  • ベルリン
留学期間:
8か月
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,530,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
ドイツ語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

2019年のあいちトリエンナーレでは平和の少女像展示が炎上するなど、挑戦的な主題を持つ芸術作品をあたりさわりのない解釈に回収せず、作品鑑賞を通じてみなが現実のさまざまな問題を考え議論する場を整えることは時折大きな困難を伴います。本留学では、ナチズムの反省に基づき議論する観衆というあり方が根付くドイツへ渡り、上記の問題意識に基づきながら、フェミニズムの主題を持つダンスパフォーマンス作品の制作・上演アシスタントとミュージアムでのインターンの実践活動、加えてベルリン自由大学の美術史学科で研究を行いました。

留学の動機

学部生時代にもドイツに留学した経験があり、そこで芸術文化鑑賞を通じて議論する観衆の姿、またそういった鑑賞のあり方が根付いている光景に非常に触発された経験が下敷きとなっています。以来ドイツに関心を持ち続け、大学院生になってさらなるステップアップをしたいと思い、再度留学することを決めました。

成果

実践活動では具体的に、作家サイドに立った作品制作のサポート能力や運営側とのすり合わせの経験を積み、ミュージアムでは実際にその運営や展示の作り方を学ぶ機会を得ました。また、研究においては自身の研究テーマを含む近現代美術についての議論形成の過程に身を置き、日本の大学ではなかなか体系的に学ぶチャンスの乏しいテーマに関する知識を修得しました。

ついた力

立ち止まる・寄り道を許容する力

学期末に近づき自身の留学も終盤を迎えつつある中、はたして自分は本当に成長できているのだろうかと思い悩んでおり、英語やドイツ語の言語学習の調子が悪かったことも相まって暗い気持ちが長く続いた期間がありました。そういった時、一度立ち止まって自身と対話し悩みや不安を言語化すること、他人に聞いてもらうこと、それにより不安の原因や不安を乗り越えた先の目標を再設定することを身に着けました。

今後の展望

今後も、芸術文化の分野に寄与していきたいと考えています。

留学スケジュール

2019年
8月~
2019年
10月

ドイツ(ベルリン)

ベルリンのダンスカンパニーcokasekiが、2019年10月に劇場DOCK11で公演するダンスパフォーマンス《W!O!man MADe》の制作・上演アシスタントとして活動しました。本番までは練習スタジオのブッキングやリハーサルの撮影、衣装準備など作品制作におけるサポートを行い、フライヤーの配布、招待メールの作成、SNSでの告知等広報については一任される形で仕事を行いました。また公演の4日間は、会場の設営補助、チケット管理、パフォーマーのサポートなどの補助的役割を担いました。成果としては、作家と作品制作に一から密接に関われたという点において質の高い実戦経験が積めたことが挙げられます。作家から丁寧にフィードバックや助言を頂けたこと、ベルリンのダンス界隈や業界について具体的な事情を聞き知ることができたのは、定石のない作家のサポートにおいて意義のある活動だったと言えます。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

劇場DOCK11入口と公演の看板
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

2019年
10月~
2020年
2月

ドイツ(ベルリン)

ベルリン自由大学の美術史学科では、芸術とエコロジー、フェミニズムアート、ダンス・アーカイヴのリサーチプロジェクト、退廃芸術、消費主義とアートに関する講義を受講しました。
講義では、そのテーマにおける作品や作家の歴史的な位置づけ、展覧会史、美学的考察の変遷などを扱うなど、理論的基礎を修得することができたと言えます。加えて、外国語で抽象度の高いテーマについて議論する、プレゼンテーションする、レポートを執筆する等の言語にまつわる能力を向上させることができました。特筆すべきはダンス・アーカイヴのリサーチプロジェクトに参加できたことで、日本では本格的なパフォーマンス学に触れるチャンスがなかなかないため非常に貴重な経験が積めたこと、そして直前の実践活動で得た経験を補強できた点が非常に意義深いことでした。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

所属研究科のあるキャンパスへの通学路
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

2020年
2月~
2020年
3月

ドイツ(ベルリン)

プライベート・ミュージアムであり、中世から江戸時代にかけて広く日本の侍にまつわるコレクションを有するSamurai Art Museumでインターンを行いました。主な活動内容は、コレクションのアーカイヴ作成、所蔵品の鑑定書の文字起こし・データベース化、カタログの英語訳、所蔵書籍の内容に関するドイツ語要約などです。その中で特にカタログ編纂に部分的ではあるものの従事できたことは、キュレーターが持つ企画への視点、展覧会設計への理論的アプローチの最前線を目撃する重要な機会でした。日本に関する博物館資料を西洋圏のキュレーターが展示するという現場に立ち会えたことで、自身の研究における視座の持ち方を省察することができたと言えます。またコレクションの分類整理という美術館の中核に関わる仕事に携わることができ、質の高い経験が得られたことは非常に意義深いことでした。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

館蔵品棚卸の様子
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

この国のことが、とても好きになった瞬間

入寮前私は、ベルリン中心部のローゼンターラー通りという大通り沿いに建つアパートの一室に滞在していました。そこは曜日に関わらず、また夜遅くでも人が常に行き交っているのですが、その日は車の通行がなくやけに静まり返っており、しばらくして楽器の音が聞こえ始めます。やがて大きな弾幕やプラカードを持つ人々によって通りが埋め尽くされ、大規模なヴィーガンデモの行進が行われたのを通り沿いのベランダから目撃することができました。ベルリンでは多くのレストランでヴィーガン・オプションが選べるようになっています。バーガーからチーズまで何でもござれ。これらはヴィーガンの厳しいルールに従って生きている人でなくても十分に選ぶ価値のあるもので、そして誰もがその魅力を理解していると言えます。フード・トレンドから政治的表明へ。運動の熱が最も高まる現場を目撃でき、より街のことが好きになった出来事でした。

デモの様子

人脈をフル活用する

  • 留学先探し : インターンシップ

私は留学開始前、最初の実践活動先として想定していた機関から直前になって受入ができなくなったとの連絡を受け、急きょ新しい受入先を探さなければならないというトラブルがありました。その際、大学教員や当時バイトしていたギャラリーの上司、その上司の知り合いでベルリンに住んでいる作家など、自分の持つ人脈をフル活用+知り合いの知り合いのそのまた知り合いへと繋がっていくような形で協力を頂き、受入を承認して下さる機関にたどり着いたという経緯があります。留学開始後も継続して受入先を探す必要のあるトビタテ生も少なくありません。そういった際、思わぬところでチャンスや縁がめぐってくることは珍しくないので、特に頼れる人の少ない海外では人との出会いやつながりをしっかり紡いでいくことが大切だと思います。

留学前にやっておけばよかったこと

月並みな意見ですが、語学はいくら準備をしても足りないくらいだと思って臨むべきだったと感じます。どんな人でも留学中は心が弱ったり、精神的にゆらぎのある時期がありますが、そういった時に限って語学面で思うにいかないという経験がボディブローのように効いてくることがあります。語学ができない(と感じる)ことは知性がないということと同義では決してありませんが、できるだけの備えはやるに越したことはありません。

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学のかたちはひとりひとり異なります。留学を終えて帰ってきたあとに、自分だけの素晴らしい経験ができたと胸を張れるような学びができることを祈っております!