2019.02.01
6期理系,複合・融合系人材コースで国際原子力機関IAEAにインターンシップを行った木内 寛允(きうち ひろのぶ)さん。グローバルな職場で体感した世界と日本との違いを彼自身のことばで語ってもらいました。
原子力発電の是非を見極めたい
私は、エネルギーインフラに興味があり、日本で重要な位置を占める原子力発電を学ぼうと大学院に進学しました。しかし,いざ自分のキャリアとして考えたとき、福島事故や親からの心配や業界の今後の不安などもあり、原子力業界を選ぶべきか否かに迷いました。何より、原子核工学を専攻する身の上であるにも関わらず、原子力発電に対する自分の意見が確立できていないもどかしさがありました。原子力発電が現場でどのように役立っているのかを実感するため、国内原発企業のインターンシップ等にも参加しましたが、福島原発事故後の日本では福島の影響、廃炉作業、国内原発の再稼働などに話題が集中し、視点が限定的であるように感じました。そこで国際的な視野で原子力発電の是非を見極めたいと強く思うようになり、トビタテ留学JAPANに応募し、国際原子力機関IAEAインターンシップの機会を経ることが出来ました。
IAEAインターンシップで得た気づき~視座を高くすること~
インターンシップでは、毎日のように開かれる国際会議の準備補佐や、原発導入を検討する国への意思決定を援助するアプリの開発などに携わりました。大学での講義や国内のインターンシップでは得られなかった気づき、経験がIAEAインターンシップを通して数多くありました。例えば。日々扱われるトピックは、原子力発電の技術だけでなく、取り巻く産業、規制、国際政治、核など多岐にわたり、原子力が抱えるトピックの複雑性を前に、自分の無知を痛感する毎日でした。また、ヨーロッパにありながらもIAEAは国際機関であるために多種多様な人種が混在しており、そこで求められるのは英語の流暢さではなく相手の背景を理解・傾聴し、また、自分の意見を丁寧に伝えるコミュニケーションが求められました。このような業務を通した気づきや発見は数多くありましたが、結局最後まで自分の中で原子力の是非を見出すことが出来ませんでした。そんな時、インドネシア人の上司が私に"原子力発電だけがすべてではないよ"と伝えてくれたことはとても印象的でした。たとえ原子力業界に身を置いたとしても、原子力ファーストではなく、常に原子力に強み弱みを理解し、また日々変化する他のエネルギーと連携を試みる姿勢に感銘を受け、 "視座を高くする"ことを意識するようになりました。
日本のプレゼンス向上のために何が必要なのか
国際会議で目の当たりにしたのは,各国の意思決定が交錯する国際機関においては、国としてのプレゼンスを発揮することが如何に重要かということです。しかし、国際的な場において日本人特有の内向性には危機感を覚えました。国のプレゼンスを示すためには、このグローバル化しつつある社会の中で対等に渡り合える国際的な人材の育成が必須です。つまり、日本の留学人口を増やすトビタテのようなプログラムは今後の日本の発展には必ずなくてはならないものです。皆様から支えてもらい、貴重な経験の機会を頂いたトビタテ生として、このような留学支援制度によってプレゼンスを示せるグローバルな人材が育つ事を期待しています。
ご支援者向け留学体験談~世界に羽ばたく若き挑戦者たち~について
この記事はトビタテ!留学JAPAN事務局が企画・編集を行なったものです。今後もトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムに選抜され、世界を舞台に活躍する奨学生をご紹介してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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