2019.02.01

南米コロンビアでの稲作研究、現場に行って初めて見えた自分の国際協力

コロンビアで稲作研究のため現地農場や研究所での実験、また農家への聞き取り調査などから、実用可能な節水栽培の技術開発を行った、7期理系、複合・融合系人材コースの武田直也さん。農場での実演やプレゼンにより農家・研究者・普及員など総計100名を超える現地稲作関係者研究成果を伝えることができるまでの軌跡をまとめてもらいました。

南米コロンビアでの稲作研究、現場に行って初めて見えた自分の国際協力

現場で使える研究なのか、南米コロンビアでの試行錯誤

  私の稲作研究は果たして南米コロンビアの現場で本当に役に立つのか?この疑問から私はトビタテ!留学JAPANへの応募に踏み切りました。もともと東京で生まれ育ち、"いい学校"を目指して受験勉強をするばかりで、農業にも外国にも触れる機会はほぼありませんでした。大学に入ってからは旅行などで海外に出る機会があり、途上国を訪れもしました。そうして目の当たりにする未知の世界があまりに新鮮で刺激的で、自分の活躍の場を世界中に広げたいと思うようになりました。その一つの形として国際協力・開発という仕事に関心を寄せ、世界の食への興味と食糧生産への課題意識から、中でも農業を専門とするに至りました。修士では、日本の経験や知識の蓄積も大きく技術協力案件も多い稲作を研究対象とし、所属研究室で共同研究のプロジェクトもあったコロンビアに注目しました。実はコロンビアではお米がよく食べられ、生産量は国の穀物で最大である一方で、栽培ではより効率的な水資源の利用が求められていました。
  私は当初東京で稲の栽培管理を研究していましたが、自分の成果が現地で使えるのかも、そもそも現地農家に届くのかさえも自信がありませんでした。現地の稲作は気候や地形で独自に発展したもので、東京の試験場では再現できません。それでも有用な部分もあるはずですが、その成果は論文や報告書の形に留まり、実際に農家に受け入れられるかは現地の技術普及員任せというのが多くの農業開発の実態です。それだったら稲作研究からその成果普及に至るまで自分が現地でやってみればいいと考えて留学を決意しました。しかし、学生がコロンビアまで行って通常の学業の枠を超えた活動を長期で行うための資金を提供しているところはほとんどありません。トビタテ!留学JAPANではむしろそのような学校に留まらない社会での実践的活動を支援していて、自分の希望する留学に最適な奨学金でした。

現場研究を通じて見えた国際協力のカタチが自分の自信に

  留学を通じての成長として、現地稲作の知識や技能・研究実績そのものよりも、研究者としての自分に自信を持てるようになったことが大きいと感じています。自分の研究が役に立つのかという冒頭の疑問は、実用性の面と同時に、自分が取り組む意義や決意に対しても突きつけられたものです。そこに実体験による確信をもって答えられず、もどかしく思っていました。
  そうしてコロンビアに渡りまず思い知ったのは、応用研究の難しさと現地の人との共同作業の大変さです。学術的に認められるだけでなく現地の環境や産業に適した実用的な研究となるように実験を設計しなくてはなりません。そしてその実験を言語や知識や姿勢も異なる現地の人たちと協力して実行するというのは、拙くてもきちんと意図を主張する、知識や技術を教えながら作業をする、相手の経験や手法を取り入れるなど、なかなか骨の折れるものです。
  一方で、苦戦しながら試行錯誤していく中で、研究者の自分にできる農業開発への貢献の仕方が徐々に見えてきました。実験でのデータによる技術の有用性に加えて、現地の稲作関係者からの聞き取りや作業観察から技術の実用性も評価できること。研究に必要な作業も、最初は手本を見せ、後半には現地人だけでやらせ、更に現地人同士で教えさせるなど、研究のノウハウが現地スタッフに蓄積され今後の技術開発の土台とすること。そして研究成果の普及では自ら報告会や農場での実演によって稲作関係者と直接やり取りすることで、研究成果の実用の可能性と更なる課題が鮮明にできること。自分が経験した研究者のこうした側面は本文たる論文などの学術成果にはほとんど現れず、あまり評価されません。ですが、それらを併せ持つ現場研究は農業開発の持続性や発展性に大きく影響するもので、現場を重んじる自分ならではの国際協力のカタチであるという確かな自信となりました。

噛めば噛むほど味わい深いトビタテ!留学JAPAN

  単に留学をすれば何かを学び変わるのか、というとそうとは限らないと私は思うのです。私自身も目的意識と計画をもって留学に臨み、それでも想像を越えてくる経験をしたときや、経験を何度も捉え直した末に、ようやく自分にとっての意味や価値が見えてきました。留学を経験しても、そこまではしない人も多い気がするのですが、トビタテ生はします。奨学金のみならず、留学前後の研修やメンタリングに加えて、外部に向けて留学の報告を行う機会が数多くあり、更にトビタテ生同士でも経験と展望を語り合う。その度に留学計画は研ぎ澄まされ、留学経験は一層深みを増し、より大きく決意のある次の一歩が生まれる。そこまでの留学の機会を、本気と本音でぶつけてくれるのがトビタテ!留学JAPANである、と考えています。
  そして今後も研究を通じて自分の専門性を高めながら農業開発に携わるべく、オーストラリアで博士課程に進むことを決断しました。オーストラリアは農業が盛んで、自分の専門分野でも優れた研究実績とチームがあります。研究内容では栽培管理という軸はコロンビアの経験と共通しながらも、オーストラリアのサトウキビ生産を扱い環境負荷の低い栽培法を開発するという、自分にとって未知の領域を開拓することになります。途上国からはいったん離れてしまうものの、異なる研究環境で自分を試せる、自身の作物栽培の専門性に幅と深みの双方をもたらせる、何より農業の現場と密に関わりながら活動できる絶好の機会であると捉え、将来の農業開発への大きな一歩を踏み出すこととしました。

ご支援者向け留学体験談~世界に羽ばたく若き挑戦者たち~について

この記事はトビタテ!留学JAPAN事務局が企画・編集を行なったものです。今後もトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムに選抜され、世界を舞台に活躍する奨学生をご紹介してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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