2019.02.22

逆境を打開するために自分ができる事を精一杯やりとおす力を身につけた留学

イギリスに留学した5期トップレベル大学等コースの岩井凌太さん。現地で移民地区に暮らす子供たちにスポーツを通して交流する活動に取り組みました。彼が実際に体験したリアルな現実とは...。

逆境を打開するために自分ができる事を精一杯やりとおす力を身につけた留学

どん底を経験した先に待っていた自分が本当にやりたいこと

  僕は体育会サッカー部に所属していた1年生の夏に大怪我をしてしまい、小学生から続けてきたサッカーが、4年生になるまではほとんど確実にできないだろうと医者に宣告されてしまいました。大学生活をサッカーにかけようと思っていた僕にとってそれは受け入れがたい事実であり、その後は落ち込んで何も手につかない時期が続きました。しかし、周囲で親身に話を聞いてくれる人がいたおかげで少しずつ立ち直り、人生で初めてサッカー以外に自分がやりたい事は何だろうと考え始めました。そして、落ち込んでいる時に「人との繋がり」が豊かな生活を送る上でとても大事だと感じたこともあり、今まで関わってきたスポーツを使って人々が繋がる場づくりをしたいと考えるようになりました。また、サッカーではない何かで自分の限界に挑戦してみたい、どうせやるなら本当に困っている人の役に立ちたいという想いがあり、それらに学校のフィールドワークでイギリスの移民地区を訪問した経験が合わさって、『イギリスの移民地区で友達作りに悩んでいる子供達を、スポーツで繋ぐ活動をしよう』と決意し、留学しました。

逆境では「我慢」と「準備」。留学で直面した壁

  僕は10ヶ月間の留学中、CATCH Leeds-COMMUNITY ACTION TO CRAETE HOPE-(以下CATCH)という6~18歳の移民地区で暮らす子供に対して居場所作りをしているボランティア団体で働き、それと並行してリーズ大学で社会学を学びました。
  移民地区では、身体能力の高低があまり関係ないスポーツプログラムを作る活動に、活動開始後4ヶ月頃から従事していました。これは、様々な国や文化にルーツを持つ子供達が参加するだけで仲良くなれるような場を作るためでした。また、最後の2ヶ月間程はボランティアの採用と研修の責任者も任せてもらいました。大学での学びについては、主に人との関わり合いの中でいかにして自己肯定感が高まるかについて学びました。そして、そこで学んだことを活かして研修プログラムを作り、ボランティアたちが子供たちのバックグラウンドや考え方を尊重した態度を取れる仕掛け作りに取り組みました。
  これらの活動を通して最も苦労したのは、ボランティア先で受けた人種差別です。ボランティア先があった移民地区には黄色人種が僕以外おらず(少なくとも見かけたことはない)、最初は子供達や他のボランティアから「中国人」とバカにされ、まともにコミュニケーションそのような状況だったため、スポーツプログラムの作成・実施を行なっても誰も参加しないだろうとCATCHの代表に判断され、ルール違反をしている子供がいないかの監視や掃除といった仕事しか任せてもらうことができない時間が続きました。しかし、当初の目的だったスポーツプログラムの作成・実施を実現したいという想いがあり、その逆境を打開するために自分ができる事を精一杯やろうと決意した僕は、雑用などの自分ができる仕事を見つけてはそれを一生懸命やるという生活を続け、「このコミュニティにいたい」という気持ちをアピールし続けました。

逆境では「我慢」と「準備」。留学で得た学び

  そのような生活を3ヶ月ほど続けた結果、少しずつ声をかけてくれる人が出てくるようになり、仲良くなる人が増えるにつれて、今までは挨拶をしても無視されていた人たちも話しかけてくれるようになりました。さらに1ヶ月が経った頃にはCATCHのほとんど全ての人と話せるようになっており、その結果、それを見たCATCHの代表からスポーツプログラムの作成・実施の許可をもらい、活動を始めてから約4ヶ月で目的を実現できる環境を勝ち取ることができたのです。
  さらに、我慢の4ヶ月の間も、スポーツプログラム作成・実施のチャンスをもらえる未来を見据えてプログラム内容の考案とシミュレーションを繰り返していたため、残りの期間を丸々プログラムの実施に使えました。その結果、最初は仲良くしてくれる子供達と運動好きの子供達ぐらいしか参加者はいなかったのですが、少しずつ参加者が増えていき、最終的にはスポーツプログラムを行う日はCATCHの来園者数が 20人程度増え(普段の来園者は100人前後)、プログラムにも安定して40~50人程度が参加してくれるようになりました。
  さらに、それまでボランティアの選考や研修がなかったCATCHでは、特定の子供をひいきしたり、子供に手をあげるなど素行の良くないボランティアがいるという問題があったため 、ボランティアを雇う時の面接とその後の研修制度を作るよう提案したところ、スポーツプログラムが上手く行っているのを見ていたCATCHの代表に「凌太が言うならやってみよう」と言ってもらえ、面接官や研修制度の作成と実施を担当させてもらえることになりました。このように信頼を勝ち取れた要因として、逆境に耐えつつ、機会が回ってきた時に備えて準備を怠らなかったことが大きかったと考えており、この気づきが大きな学びであったと感じています。

まちづくりの可能性。より豊かな暮らしを探して

  リーズで活動しながらヨーロッパ各国をめぐる中で、食、文化、自然が揃っている日本の地方は世界の中でも生活環境がとても良いのではないかと考え始めました。そして、帰国後は地域に根ざした活動をして日本の良さを肌で感じつつ、そこで価値を作りたいと思うようになりました。さらに、一ボランティア団体などよりも分かりやすく、住民の生活に多大な影響力を持つ行政の立場から地方の人々の生活をどのようにして良くできるのかを考えてみたいという想いから、史上初の自治体長期インターンシップ生として大阪府四條畷市役所で働くことにしました。当インターンシップではマーケティング業務をメインで行いながら、子育て施策や商店街活性化施策に関わりました。特に商店街活性化施策では、市内の商店街にある店舗の業種や経営状況、商店街内の人間関係、空き家や空室の家賃断層を図示したマップを作成したり、LINE@のショップカード機能を用いて商店街のお店に近隣の学生や市民が流れるような仕掛け作りに取り組みました。また、市が運営するSNSや一回の放送でビューアー数が2万人を超える市の公式ネット番組立ち上げに関わり、市の魅力発信もしました。それらの取材をしている中で、地域の人と密接に関わり、地方の人や衣食住環境の良さを存分に味わうことができたのは、大きな収穫の一つでした 。
  このインターンシップで得た経験から、人の豊かな生活とはどのようなものなのかをより深く考え実行していきたいと感じるようになり、そこに軸足を置いて就職活動をした結果、今後はパナソニックのスマートシティ事業に従事させてもらうことになりました。ここでは、当社が掲げているよう「理想のまち」を公民一体となって作っていけるように、誠心誠意頑張っていこうと思います。

ご支援者向け留学体験談~世界に羽ばたく若き挑戦者たち~について

この記事はトビタテ!留学JAPAN事務局が企画・編集を行なったものです。今後もトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムに選抜され、世界を舞台に活躍する奨学生をご紹介してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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