2019.01.31
家庭の事情から給付・貸与など複数の奨学金を借りて東北大学医学部に進学した中村匠汰(なかむらしょうた)さんは、「病気を治すよりむしろ、病気にならないようにする施策を考える」という目標を掲げて香港科技大学工学部に留学しました。留学中に実践した、薬や診察などの通常の臨床的方法ではない「IoTからのアプローチ」に挑戦するプロセスで気づいたこととは・・・
医師になるまえにやりたいことは、「留学する」ことでした
医学部6年に進級するとき、つまり学部生活が残すところ残り1年という時に、僕は留学することを決意しました。長くにわたって苦楽を共にした同級生と別れることや、安定的な進路から外れることに対して大きな不安がありました。しかし、医師になる前にむしろ、医師になるからこそやりたいことがあった。それは、病気になる人を治すより「病気にならないようにするための施策を考える」ことです。特に生活習慣病の予防に注目し、運動や健康的な食生活を、誰もが日常に取り入れられるためにはどうしたらよいか。生活習慣病のような慢性疾患の治療は、患者本人、医師の双方に長い治療期間を強いるだけでなく対症療法に留まることが多いわりに、公衆衛生的には医療費の約1/3を占め、健康保険への大きな負担となっているということが問題です。僕はこの問題に対して薬や診察など臨床的方法ではなく、IoTからのアプローチを検討するため、香港科技大学工学部での留学をしました。留学中に実施した実験が評価され、博士課程進学の推薦を頂くことができました。
現地で出会えた仲間との交流で気づいたこと
僕の留学では、現地で出会った友人たちとの交流が成長に気づくきっかけになりました。寮において速い英語での会話に難渋していたときに、僕がその仲間に入る後押しをしてくれた友達や僕の身体が貧弱だからといって一緒にジム通いをした研究室の仲間・香港ローカルをあれこれ体験させてくれて、誕生日までお祝いしてくれた学外の友達など、挙げればきりがありません。この経験はトビタテ!留学JAPANからの経済的援助がなければもちろん実現できませんでした。大学生活では頂くことばかりであり、この状況が恵まれたものだということすら忘れていました。しかし、今回の留学を経て、僕が多くの支えを享受していたことに気づかされました。その恩を返したい、しかも頂いた以上に。このように自分の考え方が変わったことが、今回の留学で一番成長した点です。
トビタテ!留学JAPANで経験した、”真剣に意見を言い合える”環境
トビタテ!留学JAPANでは、異なる興味関心を持つ人たちが一堂に会し、各自の留学計画または経験を紹介するところからコミュニケーションが始まります。互いにそれを受け止めあい、真剣に意見できる環境があります。単に馴れ合いの交流をするだけではない、相互研鑽の雰囲気があるのです。また、経済的な援助を得て自身の留学計画を実現する過程では、恩に報いる利他的な気持ちが醸成されました。僕もこの恩恵を受けた身として、未来の後輩たちにもぜひトビタテ!留学JAPANを活用して成長してほしいです。
ご支援者向け留学体験談~世界に羽ばたく若き挑戦者たち~について
この記事はトビタテ!留学JAPAN事務局が企画・編集を行なったものです。今後もトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムに選抜され、世界を舞台に活躍する奨学生をご紹介してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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