2018.04.26
トヨタ自動車株式会社
人材開発部 採用・計画室 採用グループ長 荒井邦彦様
留学で壁にぶつかる経験を
「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」への御支援ありがとうございます。今回は、グローバル企業である御社が求める人材と“留学”の関係についてお伺いできたらと思います。まず、“留学をすることの意味”についてどのようにお考えでしょうか?
荒井:採用活動の中で最近感じていることですが、「効率よく正解を見つけようとする方が増えている一方、失敗経験を積んでいる方が非常に少ない」、という感覚があります。
今、この立場になって分かることですが、挑戦してもなかなか上手くいかず壁を乗り越えられない。それで、凹んだり悩んだり挫けたとしても、諦めずにもう一度頑張ろうと踏ん張ってチャレンジし続ける。このような困難な経験こそ成長の機会であり、また実際に第一線で活躍している方は、そのような経験のある方が多いと思います。
「壁にぶつかる」という意味では、留学というのは非常に有効な方法の1つだと思います。海外での生活は、言葉が通じない、文化が違うなど、分からないことばかりです。また、困ったことがあっても助けてくれる人も少ないでしょう。でもだからこそ、自ら考え主体的に行動し、結果として失敗も含めて多くの経験を得ることができると思います。留学経験のある学生さんは、やはり良い経験をしている方が多いと思いますし、自分なりの目標や目的を持って頑張ってきた方は非常に魅力的に映ります。
異文化コミュニケーション力は大前提
御社の海外プログラムについて教えてくだい。
荒井:修行派遣プログラムという制度を導入しています。入社4年目以降の若手社員に対して、「1~2年現場で修行してもらう」プログラムです。会社ニーズや本人希望をベースに派遣し、国内関連会社さんもありますが、基本的には全員海外事業体、または海外の大学などの教育機関に行って、現地現物で修行してきます。
トヨタは生産の約6割、販売の8割以上を海外で展開しており、語学力はもとより、なぜ相手がそう言う事を言ってくるのか? を理解できる異文化コミュニケーション力がないと、これから戦っていけないと考えています。
異文化コミュニケーション力とはどういったことだとお考えでしょうか?
荒井:色々必要な能力はあるかと思いますが、大切なことの1つに、「日本人と外国人では考え方が違うということを理解する」ことだと思います。
トヨタがアメリカ進出した直後のことを例にあげますと、トヨタは生産ラインで不良が見つかると、その時にアンドンを引いてラインを止め、不良の改善に努めます。ですが、アメリカでは、そのアンドンをなかなか引かなかったそうです。日本人としては不良品を見つけたいだけなのですが、彼らは自分の非をさらし評価を下げる行為と捉えていたそうです。アンドンを引く事は悪いことでなく、むしろ良い事なのだという考えを浸透させるのに、当時の方は大変苦労したそうです。
このように、考え方の異なる人たちとも粘り強くコミュニケーションを取り続け、常にお客様にとっての最善を目指す、トヨタ流で言わせていただくと「もっといいクルマをお届けする」ために、愚直に行動し続けることが大切だと考えています。
現地を肌で感じてものづくりに反映させる
技術系(理系)の方の留学についてどうお考えでしょうか?
荒井:トヨタの場合、研究開発拠点がアメリカ、タイ、ヨーロッパなど各地にあります。そして、現地と日本で開発部分を分担しながらやっており、そこの擦り合わせで議論が発生します。
例えば、日本と外国では道路事情が異なり、日本で開発したものがその国ではマッチしないことがあるので、現地の開発者から「このように設計を変えて欲しい」「アメリカ人ドライバーはこれを求めているんだ!」といった生の声でのやり取りがあるわけです。その時の語学力や、なぜ相手がそう言ってくるのかを理解する異文化コミュニケーション力を技術系の方も持っていないといけない訳です。よく現地のチーフエンジニアの方が「アメリカの道路を運転した事もない人が設計しないでほしい!」と言っていますが、当然のことと受け止める必要があると思います。
お客様の8割以上が海外の方である今日、イマジネーションだけでものづくりをするのではなくて、問題をつかむあるいは問題を解決する第一歩として“現地現物”の考え方を実践、つまり、どういったお客様がどういう車の使われ方をしているのかを目で見て、肌で実感して、会話をして、自分の感性にしっかり入れ込んで、それをものづくりに反映させることがとても大切で、そういう意味で、技術系の方でも国内だけではなく海外の経験を積んでおくとよいと思います。
最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。
荒井:「自ら考え、高い目標を掲げて、泥臭く自らの足で行動する」。たとえ壁にぶつかっても、悩みながらもなんとか乗り越えて一回りも二回りも成長する機会をたくさん経験して社会人になって欲しいです。そして、そういった機会を得る手段のひとつとして留学は有効だと思います。学生のみなさん、是非チャレンジしてください!
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