2018.04.26

【企業の人事に聞く】東日本旅客鉄道株式会社

東日本旅客鉄道株式会社
人事部長 JR東日本総合研修センター所長 喜㔟陽一様

【企業の人事に聞く】東日本旅客鉄道株式会社

鉄道事業もグローバル化の時代 日本を発信するための人材育成が急務

「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」への御支援ありがとうございます。今回は鉄道とグローバルの関連性についてお話を伺いたいと思っております。今後、御社の海外展開などはどうお考えでしょうか?

喜㔟:鉄道事業というと営業基盤が国内にあるので、国内で完結するように考えられがちですが、グローバル化という意味では、大きくは2つの事業展開があります。
一つは、インバウンドです。 2020年のオリンピック・パラリンピック大会開催を念頭に、2020年に訪日外国人旅行者数を2000万人にするという国の目標がありますが、その達成に向けて、私どもも、外国からのお客さまにも利便性の高い鉄道サービスのあり方を追求していくことはもとより、「おもてなしの心」やまだ知られていない様々な観光資源など「日本の良さ」を海外に発信していくことで、非常に大きな役割を果たすことができると考えております。また、日本から情報発信するということだけではなく、海外から資材を調達したり、様々な先進的な技術を導入するなど、グローバルな視野から良いものや進んでいるものを事業に取り込むことにも力を入れています。
もう一つは、当社の経営構想にも掲げましたが、日本で蓄積された鉄道技術を海外に輸出していくことです。単に鉄道車両を輸出するということではなく、システムとしての日本の鉄道を海外に輸出していこうということです。具体化したものとしては、タイの都市鉄道(パープルライン)のメンテナンスを受注することができましたが、現在インフラ整備が目覚ましい東南アジアやインドをはじめ欧米における事業参画を目指して取り組んでいます。

具体的に海外に出られた社員はどのようなお仕事に?

喜㔟:例えば、インドネシアに埼京線で使用していた鉄道車両を譲渡するにあたり、大宮の鉄道メンテナンス工場で働いている社員をジャカルタに派遣し、現地の鉄道整備員に技術交換しています。
会話は、主に日本語と聞いていますが、通訳が無くても技術者同士で通じ合うようで、必ずしも「語学力」だけが大切では無いと感じております。さらに、先ほど申し上げたように鉄道システムの輸出に備えて、世界各地でのコンサル事業に毎年現場の社員を中心に派遣したり、海外の企業への派遣も積極的に行っています。
また、まだ先のことではありますが東京オリンピック・パラリンピック大会を意識してグローバルな視野を持って活躍できる社員の育成にも力を入れていきます。そのため、MBAなど長期留学とは別に、社員を3ヶ月程度海外に語学留学させる「海外体験プログラム」を2013年度から始めています。若い社員を中心に年間100名規模の社員を世界中の都市に派遣しています。社員はホームステイしながら、語学の習得と様々な異文化体験をしています。

外から自分を、日本を見つめ直す。 そこで気付く、違う「常識」。

では留学についてどうお考えですか?

喜㔟:海外で生活することは、社員にとっては苦労もあると思いますが、様々な経験から得ることも大きく、大きな転機になることを期待しています。「日本のコミュニティ」の中だけでは見ることや触れられないこと、できないことがあると思います。
当社の社員も、運転士やメンテナンス職など職種に関係無く、「外から自分の仕事を見る」「外から日本を見る」「外からJR東日本の仕事を見る」という観点から、様々な気づきを得て日本に戻ってきます。そうした社員は、職場で新たな課題にチャレンジし、周囲に良い影響を与えてくれます。今までずっと同じ環境で過ごしていた人が、環境を変えることで「見えていなかった」ものが「見える」ようになります。留学は、そういう新たな気づきを得ること、自分とは違う「常識」があることを実感することができる機会になると思っています。

最後に学生に向けてメッセージをお願いします。

喜㔟:学生のみなさんは、留学することで、就職活動等キャリア形成において不利になるのでは?と考えることがあるかもしれませんが、それはまったくないと人事の責任者として断言できます。会社は、多様なバックグラウンドを持った学生を採用したいと考えておりますので、そこでは「人間力」がベースになります。従って、海外に行き、「人間力」を高めるということは、一つのアピールになると思います。もちろん、国内で様々なことに挑戦し、何かを達成することで「人間力」を高めることができれば、同様に十分アピールすることはできます。しかし、海外には、日本では得られないことにたくさん巡り会うことができるので、留学期間や時期、目的などはそれぞれの事情で異なるでしょうが、この経験が自分を磨き、「人間力」を高める契機になることは確実でしょう。その経験が、就職に際してどれくらいの比重を占めるかは企業によって違うかもしれませんが、海外留学を通じて、「人間力」を高めてきた学生さんには、ぜひ当社の門戸をたたいていただきたいと考えております。

Modal Example