留学大図鑑 留学大図鑑

前島 拓矢

出身・在学高校:
茨城県立水戸第一高等学校
出身・在学校:
筑波大学
出身・在学学部学科:
医学群医学類
在籍企業・組織:

キューバに行ってみたい人、ぜひ連絡ください!


最終更新日:2018年11月19日 初回執筆日:2018年11月19日

キューバ医療とは何か

留学テーマ・分野:
大学生:交換・認定留学(日本の大学に在籍しながら現地単位取得を伴う留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • ハバナ医科大学
  • キューバ
  • ハバナ
留学期間:
2ヶ月
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 790,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
スペイン語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

 単刀直入に言うと、キューバ医療は発展しています。平均寿命は80歳に迫り、それを支える医師数は人口当たりで言うとなんと日本の3倍。ハバナの街を歩けば10分で2つや3つの診療所を見つけることができる。病院に行けば最先端とは言えなくともちゃんと手術まで受けられる。そして、ほぼ全て無料なのです。
 そんな国にて臨床実習をしてきました。主に行ったのは診療所。キューバでは医師の4割強が家庭医として診療所で働いています。患者さんはまず診療所を受診し、その後家庭医が処方せんを出したり、病院へ紹介したりというシステムを取っています。僕も少し診察したり、患者さんのお話を聞いたり。印象的だったのは、1人にかける診察時間がとても長く、長い場合は1時間ほど。
 また、キューバという国の成り立ちを知るために、資料館などへ足繁く通い、現地の方々とも政治や文化の話をするようにしました。さらに、キューバには世界中(特にラテンアメリカやアフリカ)から医師が学びに来ているのですが、キューバにいながらにしてベネズエラ、コロンビア、ペルー、アンゴラ、タンザニア、コンゴ、東ティモールなどの国の医師たちとも交流でき、その国の情勢も知ることができました。

留学の動機

 マイケル・ムーア監督による「シッコ」という映画があります。散々アメリカの医療をこき下ろし、一方でヨーロッパやカナダはなんと素晴らしい…ということを描いたそれはそれは極端な映画です。そしてクライマックスでは、アメリカでは経済的な理由から医療を受けられない人を連れ、キューバに行く。するとそこではなんと無料で医療が受けられる。
 「キューバ!?」動機はそんな単純な理由でした。

成果

 「例えば患者さんがひっきりなしに来るなど、無料だからこその問題はありませんか?」とキューバの医師たちに質問すると、この日本人は一体何を言っているのかわからないなあという顔をされつつ「無料で受診できるのは誰しもの権利よ」「有料にするなんて考えたこともなかったなあ」という答えが返ってきました。一体この倫理観はどこから来るのか。考えなければならないことはまだまだいくらでもあると再認識しました。

ついた力

現場から物事を考える力

 日本の医療は医師不足や医師の過重労働などがありつつも優れているものだと思っていましたが、キューバの医療がいかに成功しているかを学び、考えを新たにしました。一方でキューバは経済力が弱く、医師たちも「給与が低い」と文句を言っていました。一面から物事をみるのみではなく、まずは現場の実態はどうなのかを知り、そこから考えるようにしなければなりません。フェイクニュースに流されないようにしなければなりません。

今後の展望

 キューバには家庭医がたくさん存在し、誰しもが気楽に診療所に行けるようになっています。日本でも家庭医療、総合診療という形でやっと普及してきましたが、まだまだ不十分と言わざるを得ないでしょう。僕は1人の総合診療医としてどのような患者さんも診れるようになるとともに、日本の医療が抱える医師不足などの問題についても積極的に発信し、より良い医療を作るために何ができるか考え続けます。

留学スケジュール

2018年
5月~
2018年
6月

キューバ(ハバナ)

 キューバには、コンスルトリオという医師、看護師が1人ずつしかおらず、聴診器や血圧計くらいしか置いていない小さな診療所と、ポリクリニコという採血やレントゲンができるやや大きめの診療所があります。主にその2カ所で実習していました。
 コンスルトリオでは外来見学をしたり、つたないスペイン語で患者さんとお話ししてみたり、訪問診療へ同行したりしました。地域に住む人であれば誰でも診るので、赤ちゃんから年配の方までどんな人でもやって来ます。
 検査が必要となればポリクリニコへ行くこととなるのですが、と言っても日本では見たことのないような古い設備でした。暗室でどのようにX線写真を現像するかなど学びましたが、果たしてその知識は日本で使うのか…。しかし、すぐに検査に頼る日本において、「何事も人の手でできるようにしておくことが大切」と言っていたキューバ人医師の言葉は、改めて考え直すべきことかもしれません。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

本当に何もないコンスルトリオの診察室
お世話になった先生方(キューバは女性医師が多い)
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

ココでしか得られなかった、貴重な学び

 スーパーに行ってみると、スカスカの棚が多く、棚が埋まっていたとしても写真のように1種類の商品だけか…という感じでした。「やっぱり共産主義社会だから」と言ってしまえばそれまでですが、一方でキューバの人々は不幸せそうには感じられません。すでに述べた通り医療は無料ですし、教育も大学まで無料です。そのため、賃金がいくら低くともなんとか生きていくことはできる。貧富の格差もまだまだ大きなものではない。
 もちろん、市場経済を十分に導入しなかったためか経済力は大きなものではないですし、アメリカと国交を回復したこともあり、今後どのようになっていくのかまだまだわかりません。しかし、独立戦争などのこれまでの闘いを経て結果的に共産主義というものを選んだキューバの歴史を学び、「共産主義国だから」という1つの見方に縛られることなく考えることが大切だと思いました。
 まあ、1種類しかトイレットペーパーがないのはちょっとしんどいですが、それで人が亡くなるわけでもないですからね。

洗剤とトイレットペーパー、それぞれ1種類のみ

現地語は学んでおくべし

  • 語学力 : その他の言語

 キューバは世界中から医学生、医師を集めて教育しているということもあり、いつまで経っても留学先が決まらないとか、そういうことはありませんでした。しかし、送られてくるメール、ファイルは全てスペイン語。現地に着いたら英語を話してくれる医師はほんの一握りで、ほとんどの医師はスペイン語で話しかけてきます。しかもそれが早口で何を言っているんだかわからない。
 一応、日常会話くらいはできるようになってからキューバに行ったので、しんどいながらも最終的にはなんとかなりましたが、「どうせ医師だったら英語を話せるだろう」と思ってスペイン語を勉強しないでいたら…と思うと冷や汗ものです。
 もちろん、現地に着いてからの方が語学力は圧倒的に伸びます。「現地に行ってから学べばいいや」というのが可能であるのならむしろその方がいいと思います。しかし最低限の日常会話くらいはできるようになっておかないとにっちもさっちもいかなくなりますし、短期留学となるとなおさらです。
 今はDuolingoなどのツールやSkypeで会話ができるサービスなどのおかげで、外国語をより実践的に学ぶことができるようになっています。楽しい留学をするためにも、特に英語圏ではない国へ行く方は、ぜひ、現地の言語を学んでみてください。日本語、英語を話せない人とも話せるようになるのは純粋に嬉しいものです。

留学前にやっておけばよかったこと

 語学の勉強以外で言えば、大学での勉強、病院実習での経験、さらに読書をしたり博物館へ行ったりなど、より広く深く学んでおくべきだったと思います。留学自体が目的化しては自分を見失います。どうしてその国へ生きたいのか、そこで何を学びたいのか、そしてそれを何に生かしたいのか。それを考えるには、やはり今まで身につけた知識や経験が必要です。日本にいるからこそできることはいくらでもあります。

留学を勧める・勧めない理由

 僕は率直に「キューバっていい国だな」と思いました。しかし、キューバでは賃金が低く、多くの人は海外へ行くことなんてできません。そのためか、例えばキューバの医療がかなり優れているということをあまり知らないキューバ人もちらほら。もったいない。そうならないためにも、日本ではトビタテをはじめ海外に行く機会はそれなりにあるはずなので、ぜひ多様な価値観を感じ取ってきてほしいと思います。

これから留学へ行く人へのメッセージ

 留学すると、本当にいろんなことが学べるし、今までの価値観をぶっ壊される経験もできます。しかしその分、ストレスも大きいですし、準備も大変です。留学中は日本に帰りたくて仕方なくなることもしばしば。でもやっぱり、自分の目で見た一次情報にかなうものはないと思います。正しいこととは一体何なのかよくわからないこのご時世、ぜひ、自ら足を運び自ら現実を直視する経験をしてみてください!