高校の留学・海外研修事例

現地大学と連携した調べ学習を軸に
国際理解、国際感覚の醸成を図る

豊田南高等学校(愛知・県立)

他民族国家シンガポールでの
新たな研修をスタート

20年前よりアメリカ研修(姉妹校交流)を行ってきた豊田南高等学校。2017年度からは行先をシンガポールに変更し、新たな海外研修を実施している。シンガポールを選んだ理由は、母国語ではないにもかかわらず英語を使いこなしている点や、多様な文化・価値観に触れられる多民族国家である点など、学べることが多いと考えたため。アメリカより近い国になったことで、結果的に旅費を抑えることにもつながった。また、同校は研修プログラムも一新し、調べ学習や、大学ランキングでアジアトップクラスに位置づけられるシンガポール国立大学の講義、大学生との交流などを組み込んだ。語学力向上よりも、国際理解・国際感覚醸成に重点を置いた内容で実施している。

シンガポール研修の概要

ねらい 東南アジアの中心国家の1つであるシンガポールの様々な場所を訪問し、国際理解を深める。また、現地の大学の英語でのレクチャーを受講し、大学生とのワークショップを通して豊かな国際感覚を身につける。
訪問先 シンガポール共和国(シンガポール、セントーサ島)
対象/定員 1、2年生希望者/40人
時期/期間 8月/7泊8日
学習内容 主なプログラム シンガポール国立大学(NUS)の特別講義受講(英語)、NUS大学生とのグループ別自主活動、調べ学習の発表、シンガポールのインフラに関する学習施設見学、市内観光など
事前学習 グループ別テーマに関する調べ学習(10回程度)
事後学習 全校生徒対象の研修報告会開催、その準備(5回程度)
費用 生徒負担 1人あたり約29万円
学校負担 約98万円(PTA会計より) ※主に引率教員の旅費
企画 校内担当 図書・研修部
パートナー企業 JTB中部
研修開始 2017年度(アメリカ研修からリニューアル)
  • プログラム

    国際比較の調べ学習を導入
    研修の目玉は、シンガポールを題材にした調べ学習。グループごとに「世界の水事情」「エチケットの違い」などのテーマを設定し、事前学習として下調べや話し合いを重ねた上で渡航する。現地では1日半、シンガポール国立大学の学生を案内役とし、テーマに合う現場の視察や街頭インタビューなどのグループ別調査を実施。滞在中にその学習成果をまとめ、JTBシンガポール支社にて英語でプレゼンを行っている。さらに帰国後、参加生徒が主体となって校内で開催する研修報告会でも、全校生徒に向けて発表する。
  • 事前・事後学習

    部活動と両立しやすい体制で
    研修参加者は基本、事前学習(グループ別調べ学習)に約10回、事後学習(研修報告会の準備)に約5回、いずれも放課後に取り組む。部活動との調整が困難な生徒もいるが、その場合は部活動を優先。事前・事後学習ともグループ活動が中心のため、欠席する生徒はグループ内での情報共有や役割分担を工夫することで対応している。事前・事後学習の拘束を緩めることで部活動と両立しやすくし、研修参加の門戸を開いている。
  • 積極性の推進

    ゲームできっかけ作り
    外国人に対する積極性の不足は、同校生徒の課題の1つ。そこで、自分から英語で話しかけるきっかけ作りとして、今年度は研修2日目に観光スポットを回る際、外国人と一緒に写真を撮った枚数を競うコンテストを実施した。生徒たちはたくさんの写真を撮ろうと、各訪問先で一生懸命に周囲の外国人に英語で話しかけており、コミュニケーションの「最初の一歩」を後押しする効果があったという。
 

先生からひと言上手・下手にかかわらず、積極的に英語を使うように

研修参加者の約半数は、海外に行くのが初めてという生徒たち。出発時は緊張した面持ちも少なからず見られます。それが、帰国後に全校生徒の前で行う研修報告会では、すべて英語で堂々と進行、発表を行えるようになり、その成長ぶりには驚かされます。
また、研修の成果は日常にも表れており、例えば英語の授業では、発音の良し悪しや文法にとらわれることなくどんどん英語で発言する生徒が目立つようになりました。進路を考えるうえでも影響があるようで、研修参加者からは、国際的な分野への進学や、大学進学後の留学を希望する声が聞かれます。
新しい研修を始めてまだ間もないですが、3年間続けると、全校生徒の1割以上が研修経験者になる計算です。彼らの積極性や意欲面の成長は、参加していない生徒にも大きな刺激となり、学校全体の雰囲気も変わっていくのではないかと期待しています。(教頭・松原英司先生)

[学校プロフィール]学科:普通科/入学定員:360人/進路(2018年3月卒業生):大学301人・短大5人・専門学校等22人・就職4人・その他23人