留学大図鑑 留学大図鑑

櫻田 康太

出身・在学高校:
日本大学付属藤沢高等学校
出身・在学校:
東京藝術大学大学院
出身・在学学部学科:
美術研究科建築専攻
在籍企業・組織:


最終更新日:2018年07月23日 初回執筆日:2018年07月23日

熱帯の国において地域性のある建築をつくる

留学テーマ・分野:
海外インターンシップ
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • 建築設計事務所Tropical Space
  • ベトナム
  • ホーチミン
留学期間:
7ヶ月
総費用:
900,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 990,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

急速な勢いで経済成長をしている都市であるホーチミンにおいて、グローバライゼーションによる建築や都市の無個性化に対して、地元建築家とともに地域性のある建築を思考し提案した。
また、日常生活では、都市における人々の自由かつ創造的なふるまいを観察することを通して、そうした自由を許容するような途上国における建築や都市のありかたを学んだ。
インターンシップでは、現地出身のベトナム建築家のもとで、彼らが共有する熱帯における気候や風土に適した建築手法を知り、実践として提案することができた。
例えば、雨季にはスコールが頻繁におこるので、屋根のない中庭や天窓の提案は難しいことや、日射が厳しいのでダブルスキンと呼ばれるような外壁を二枚設けること、などといった工夫を学んだ。
日常生活では、自身の担当する住宅プロジェクトの敷地はなるべく自裁に訪れて、施主や地域の住人と直接対話することで、どういった価値観を共有しているのか、どういった文化のもと生活をしているのかを学ぶことができた。休暇を利用した小旅行では、カンボジア・ラオス・マレーシア・スリランカといったベトナムと同じ熱帯の気候に属する諸国に訪れることができ、各地での建築様式の違いを体験したことは、ベトナムへ帰国後も自らの仕事のインスピレーションとして役立ち、大いに助けになった。

留学の動機

名前のついている部屋のような予め機能が決められている空間ではなく、そこにいる人のふるまいによって機能が決まるような空間に魅力を感じていた。こういった人々が自由にふるまうような空間は、法や規制のゆるい環境においてはよく見られるものと思い、途上国に対して魅力を感じていた。幼少期の旅行の経験があるので東南アジアに絞り、その中でも自分が魅力的に感じた建築事務所があったのでベトナムに決めた。

成果

建築のアイデアを考えることは、外国人の自分には簡単ではなく、特に気候や生活形式の違いからくる建築への要請に答えることが非常に難しかった。その際には、ボスや同僚と議論し、実際に敷地を訪れ、生活をしながら自分の体で覚えたリアリティーを糧にして乗り越えていくことができた。現地の気候や人々の生活に寄り添った地域性のある建築を思考すること、またその難しさを感じられたことは非常に貴重な経験だった。

ついた力

がしがし力

事務所に外国人は自分一人で、ボスは英語が堪能ではなかったため、たびたび英語が堪能なベトナム人スタッフに通訳してもらいながら対話をしていた。自分も英語が得意ではないため、お互いが簡単に理解できるような明確でわかりやすいビジュアルコミュニケーションを心がけた。例えば、スケッチや模型をたくさん用意し、そういった視覚情報によって相手に伝えることを意識していた。

今後の展望

今回の留学を経て、途上国への興味がますます大きくなった。修了制作では、この経験と学びを何らかの形でアウトプットしたいと思っている。また、修了後はアフリカや南米といった途上国のエリアでプロジェクトを行なっているような建築設計事務所に勤務したいと考えている。

留学スケジュール

2017年
9月~
2018年
3月

ベトナム(ホーチミン)

ベトナム人建築家夫婦による建築設計事務所(Tropical Space)にてインターンシップを行い、現地での住宅プロジェクトをメインに、集合住宅、別荘、カフェ、リノベーションなどの建築プロジェクト、ギャラリーでの展示プロジェクトに携わった。
勤務内容としては建築設計、図面制作、模型制作、プレゼンテーション補助、などを行なった。
基本設計案は基本的にはボスの一人が全てつくるが、途中から自分はそのうち1つを任されるようになり、施主の要望や敷地条件などからオリジナルのアイデアを出し、施主へのプレゼンを模型や図面を用いて行なった。
また現地にあるTOTOの建築ギャラリーで行われた個展の際には、展示用の模型制作を担当として任された。
生活面では、最初は外国人向けアパートに住んでいたが、途中からは現地で事務所を構える日本人建築家とともに住んでいた。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

担当した鶏小屋で記念写真(Photo:QuangTrần)
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

留学中に手に入れた、今でも大事にしているもの

心身ともに非常につらく、仕事のアイデアが出ない、仕事が辛いなどのストレスを抱えて、留学中は仕事を数日間休むことが何度かあり、事務所には迷惑をかけた。
そういったスランプに対して有効だったのが、ボスの勧めで行った地方や隣国への小旅行だった。行き先はいつも決まってアジアの熱帯の国、もしくはベトナムの地方である。その理由は、熱帯などの気候が厳しい地域では、建築への要請の大部分を占めるのが気候にたいする事柄であることから、建築形式も気候に基づくものが多いからである。小旅行で自分の知らない熱帯の土地に行ってみることは、新しい文化や人々、生活様式や風景と出会うきっかけを与えてくれて、そこには必ずいつも日本とは異なる建築様式が存在していた。そういった事全てが自分にとってのインスピレーションとなり、ベトナムに帰国後も勤務時には生き生きとアイデアを考えることができた。また、ベトナムには50以上の少数民族が暮らしており、ベトナムでの旅先では彼らと出会い、集落へのホームステイなどを体験したことがとても印象に残っている。留学先、また小旅行先も含めた日本とは異なる風景に出会うことで、新しい視点や制作へのアイデアが得られるという点はものすごく価値のあることだと思い、これらの経験は、日本に帰ってからも常に自分の制作のモチベーション・インスピレーションになり続けるだろうと思う。

ベトナム、ハザン地方でのザオ族による焼畑農業

途上国であることを忘れない

  • 生活 : 治安・安全

ベトナムに滞在して数ヶ月たつと、周囲の友人や職場での同僚などは非常に親切なので、気が緩んでしまい、1月には続けて2回盗難にあった。1度目は、事務所の外廊下にある下駄箱に入れた靴を置き引きされた。2度目は路上の屋台で友人と食事中にバイクで背後から迫られiPhoneをひったくられた。被害をうけたことはしょうがないことではあるが防げた部分もあると思う。やはり途上国に滞在している以上は、現地の人から、「外国人は先進国から来ていて、お金持ちである。」といった印象をもたれることを意識して生活をしなければならないと強く感じた。

これから留学へ行く人へのメッセージ

月並みではあるが、当事者意識をもって世界を捉えられるようになったと感じます。例えば、今までは地球のどこかでおこる事件に対してリアリティーを持てなかったが、直接なにかができるわけではないけれども、「地球上のどこか」から「自分の立っている球体上で、地続きでたしかに存在する場所」という認識へと変わりました。まずは色々な風景を目で見てみることからだと思います。