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亀山 頌互

出身・在学高校:
駒場東邦高等学校
出身・在学校:
東京大学
出身・在学学部学科:
工学部 航空宇宙工学科
在籍企業・組織:
Honda Aircraft Company

KTH, Duke, THRUSTプログラムについて質問がある場合は、LinkedInでメッセージをいただければ可能な範囲でお答えします。


最終更新日:2019年01月23日 初回執筆日:2019年01月23日

北欧発米国行き・航空宇宙エンジニアの旅

留学テーマ・分野:
大学院進学(修士号・博士号取得)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • KTH Royal Institute of Technology・Duke University THRUST Master's Program (スウェーデン王立工科大学・デューク大学)
  • アメリカ合衆国・スウェーデン
  • ストックホルム・ダーラム
留学期間:
2年
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • (独)日本学生支援機構(JASSO)「海外留学支援制度」 3,000,000円
  • KTH授業料免除 1,900,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<TOEFL iBT 102> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル<現地にて就職>

留学内容

私は学部生の時に航空宇宙工学科で学んだのですが、その中で一番興味を持った対象がロケットエンジンでした。そこで、大学院ではロケットエンジンの中でも心臓部にあたる、ターボポンプに関わる技術について専攻しようと考えました。
私が学んだTHRUSTプログラム(Turbomachinery Aeromechanical University Training)では、ターボ機械の空力弾性分野について、ヨーロッパ3大学(スウェーデン KTH, ベルギー University of Liège, ギリシャ Aristotle University of Thessaloniki)とアメリカ1大学(Duke University)におけるダブルディグリー(複数学位)の修士号を取得することができます。ニッチな分野かつ、1年目はスウェーデン、2年目はテーマによって留学先を変えるという特殊なプログラムです。
様々な国の友人と共に2カ国に留学し修士号を取得するのは、他に代え難い経験でした。

留学の動機

航空宇宙工学を専攻したことから、各国の宇宙機関の活躍や英語文献を通して、海外に自然と目が向くようになっていました。海外大学院進学を念頭に置きつつ、まず学部4年生の際に大学間協定を利用してKTHでの交換留学を経験したのですが、その際に研究の指導をしていただいた先生からTHRUSTプログラムを紹介されました。

成果

ターボ機械・空力弾性の研究で著名な教授陣による授業および研究指導を受けられた上に、9カ国15人の同期と強い繋がりを築けました。実務にあたるエンジニアを養成することが目的の課程だったため、理論だけではなく商用ソフトを用いた実用的な解析手法も学び、起業に必要なビジネス基礎やマネジメントの知識も得られました。アメリカで卒業後、現地で航空機エンジニアとして就職しました。

ついた力

実現力

留学の根本的な動機は、未知の環境に対する好奇心や直感ではありましたが、夢を実現可能な目標に落とし込むためには工夫が必要でした。そもそも海外で工学系修士号のみ取得することの市場価値はあるのか考えることも大事ですし、高額な学費をやりくりするためには奨学金取得の計画も必要です。純粋な興味と将来のキャリアを両立させるためにどのような経験を積むか考え、主体的に選択することができたと思います。

今後の展望

幸い就職後すぐ非常に面白いプロジェクトに携わることができているので、数年のうちに、エンジニアとして1つの技術的な強みを確立したいと考えています。

留学スケジュール

2016年
9月~
2017年
5月

スウェーデン(ストックホルム)

KTHで修士1年目を過ごしました。基本的にはターボ機械・流体力学・構造振動学などに関連する必修授業を履修していました。また、日本で応募したプログラムを利用して、イギリスのロールスロイス社を見学したり、メキシコで開催された宇宙関連の学会に派遣学生として参加しました。
ストックホルムに住むのは2回目だったので、着いた初日からあまり違和感なく過ごすことができました。夏は特に過ごしやすく美しい街です。ただ、日照時間が短い冬は東京との気候の差が大きく、生活リズムを保つのに苦労しました。市内は公共交通機関が発達しており、夜でも安全です。私はキッチンのみ共用の学生向けの寮に住んでいました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

55,000 円

生活費:月額

40,000 円

夏のストックホルム旧市街
KTHキャンパス
ストックホルムでの学会にて
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

55,000 円

生活費:月額

40,000 円

2017年
6月~
2017年
8月

その他の国・地域(東京・北海道)

修士課程の要件として夏休み中の2ヶ月はインターンシップの受け入れ先を探す必要があったのですが、非常に苦労しました。
企業での研究開発を体験したかったので、まずはヨーロッパでガスタービン・宇宙関連の15社にEメールを送ったり、直接応募してみましたが、まともな返信がある方が少ないような状況でした。私見ですが、コネクションなしで欧州企業での有給インターンを自力で探すのは、EU外留学生には相当困難です。私の場合はセキュリティが厳しい業界でありビザと国籍が大きな壁となりました。同期のEU外学生は大学での研究インターンを見つけていました。
結局、ストックホルムでの学会や一時帰国中のご縁があり、国内でのインターンシップの機会をIHIとインターステラテクノロジズ(IST)の2社からいただきました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

IST社ではロケット打上げ前試験のお手伝いもしました
当日は打ち上げイベントの運営スタッフ
打ち上げ後は記者会見の準備
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

2017年
9月~
2018年
9月

アメリカ合衆国(ノースカロライナ州ダーラム)

デューク大学Pratt School of Engineeeringにて修士2年目を過ごしました。通常1年半-2年で取得する学位を1年で終える必要があり、非常に忙しかったです。
Industry向けの工学系修士課程(Master of Engineering)であったため、流体力学や振動力学に加え、MBAで教えている教授からエンジニア向けの起業・マネジメントを学ぶ機会がありました。
修士研究ではIST社の超音速タービン開発に関する共同研究を指導教員に提案し、実施しました。また、現地にて就職活動を行いました。
ノースカロライナ州は東海岸南部に位置し、気候は東京に似ていて過ごしやすいです。ただしダーラムは車なしでは買い物もままならず、留学後に免許を取得し中古車を購入しました。住居は渡米前にネットを通して同じ大学のルームメイトを見つけ、タウンハウスをシェアしていました。

費用詳細

学費:納入総額

2,379,000 円

住居費:月額

44,000 円

生活費:月額

12,500 円

デューク大学のチャペル
修士研究のポスター発表
スウェーデンから2年間一緒の仲間と
費用詳細

学費:納入総額

2,379,000 円

住居費:月額

44,000 円

生活費:月額

12,500 円

スペシャルエピソード

ココでしか得られなかった、貴重な学び

私のプログラムは15人という少人数のグループだったので、彼らとは授業もご飯も常に一緒でした。イタリア・ドイツ・スペイン・ノルウェー・ギリシャ・ウルグアイ・インド・マレーシア・日本という超多国籍チームでしたが、文化の違いよりも個人の性格の違いの方がずっと大きかったように感じました。(これもよく考えてみれば当然の話なのですが。)女性が少ない点を除けば、飛び級経験のある年下の学生から、社会人経験者および既婚者まで、多様性という言葉がこれほど似合う友人たちもいませんでした。
2年目のデューク大では一転、アメリカ人に加えて中国・インドからの留学生が多数を占める状況に。将来の職を求めてアメリカに留学してくる学生の多さを実感しました。技術経営専攻の学生との合同クラスが多く、ビジネス側の思考を学ぶことができたのも興味深い体験でした。

同期との日常の一コマ
授業の一環でガスタービン工場見学をした際に
デュークの仲間とラフティング

着実なステップアップを

  • 語学力 : 英語

多くの方にとって、留学を考える上で一番のハードルになるのは語学力だと思います。私は大学に入学した時点では全く英語が話せませんでした。身の回りに英語の環境を作っていくことで、試験のために猛勉強する以外でも実用的な力を着実につけていくことができます。

私は以下の順で英語力を伸ばしました。ぜひ自分に合わせてアレンジしてみてください。

・大学の1週間海外派遣に参加する
・1ヶ月フィリピンの語学学校でTOEFL対策をする
・英語の教科書で専門を学ぶ(特に航空宇宙分野は充実しています。)
・1年のスウェーデンでの交換留学
・帰国後、東京に住む外国人の友人を作る
・2年間のスウェーデン・アメリカでの修士留学

アメリカでの学位取得後の就職の話

  • 帰国後の進路 : 就職(企業)

アメリカで学位を取ると、OPT (Optional Practical Training)という制度を利用して就労することが許されています。STEM関連の学位の場合は、2018年現在3年間まで認められていますので、理工系の方は考えてみてください。

これから留学へ行く人へのメッセージ

マンガ「宇宙兄弟」より以下の言葉を送ります。

「迷ったときはね どっちが正しいかなんて考えちゃダメ。『どっちが楽しいか』で決めなさい」

それでは皆さん、良い旅を。