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ダイキ

出身・在学高校:
滋賀県立草津東高等学校
出身・在学校:
京都大学大学院
出身・在学学部学科:
アジア・アフリカ地域研究研究科東南アジア地域研究専攻
在籍企業・組織:
総合商社

数少ない博士後期課程まで進んだ学生で、しかも民間就職をするのでかなり異色な存在だと思います。東南アジアでフィールドワークや生物系の研究をしたい人、大学院にいるけど研究以外のキャリアも見据えている人なんかは相談にのれると思いますので是非お聞きください。


最終更新日:2020年07月13日 初回執筆日:2020年07月13日

タイで外来魚研究のパイオニアを目指す

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • カセサート大学水産学部
  • タイ
  • バンコク
留学期間:
7ヶ月
総費用:
1,200,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 840,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
タイ語 挨拶など基本的な会話ができるレベル 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル

留学内容

留学全体のテーマは、日本やその他諸国と比較して外来魚の研究が乏しいタイにおいて、その地域に対する影響を研究することでした。近年タイには経済発展や人口増加に伴って多種多様な外来魚が導入されています。それらが、自然水域に定着することで在来生態系にどのような影響があるのか、また魚食文化が発達しているタイにおいて地域住民の生活にどのような影響があるのかを自然科学と社会科学の二つの視点から調査しました。途中、骨折や体調を壊すこともあって全ての計画を実行できなかったのですが、なんとか主要な事項は完了することができました。外来魚は魚種によって負の生態的影響を有していたり、住民にとって重要なタンパク源・収入源になっていたりして、要は種特異的かつ地域特異的に研究を行うことが大事だということを学びました。

留学の動機

留学の動機は、熱帯地域で生物の研究をする憧れがあったこと、そして東南アジアでは外来魚の研究がほとんど行われておらず自分がパイオニアになれる領域だと考えたことでした。留学を決心したきっかけはシンプルに知的好奇心だと思います。新しいものを見たいと思った時に留学以外の選択肢はありませんでした。

成果

留学を通して得たものはもちろん論文や発表の業績もあるのですが、1から研究やフィールドワークをコーディネートする力だと思います。現地語を習得し、人間的に合わない部分があっても文化の違いを理解して常に前に進むこと。この慣れない地において全てを自ら構築した経験値は留学で得た最大の成果のひとつだと思います。

ついた力

多面的思考力

多面的思考力とは何かを調査したり考えたりするときに複数の視点をもって取り組める力です。海外で研究をすると文化や社会、自然環境などあらゆることが日本と異なります。つまり、何事をするにしても自分がもっている既存の価値観や先入観を取り払い、新たな視点を見出す必要性があるのです。自分の研究でも外来魚に対して以前は持っていなかった社会的文化的視点を持つ必要性にかられてこの力の重要性に気づきました。

今後の展望

私は研究を進める中でアカデミア以外の多様な人材と出会い、アカデミアと社会の接点、つまりは研究によって蓄積される知見が実社会に生かされる機会が十分にないという問題意識を感じるようになりました。そのため、今後は博士号を持って民間の世界へ飛び出し、アカデミアと社会の両方の経験を身につけた上でそのインターフェイス的な機能を持った人材を目指そうと考えています。

留学スケジュール

2017年
10月~
2018年
4月

タイ(バンコク)

外来魚が在来生態系にどのような影響を与えているかを調査するために、フィールドで生物の採集を行なった。ここで得られたサンプルは全て日本に持って帰り分析に用いた。また、外来魚が地域住民に利用され始めることで彼らの食文化や地域経済にどのような影響があるのかを聞き取り調査とマーケット調査によって明らかにした。これらフィールドワークとラボワークは主にバンコクのカセサート大学水産学部を拠点に行なった。時には水産学部の上級生として学部生の卒論発表に参加してアドバイスをしたり、出前授業を行なったりもした。成果はいくつかの科学ジャーナルの論文や学会発表になっている。また、今回の留学以外の成果とも合わせて博士論文の一部を構成している。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

12,000 円

生活費:月額

20,000 円

項目:研究備品・薬品、調査の際のドライバー代

1,000,000 円

フィールドで生物を採集している様子
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

12,000 円

生活費:月額

20,000 円

項目:研究備品・薬品、調査の際のドライバー代

1,000,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

留学中にお世話になった最もお世話になった人は国連インターン時代の上司でインド人のラフルだ。彼にはキャリアを選ぶ際に最も重要な助言をもらった。私はアカデミアに残って研究をするか社会に出て世の中に寄与するかは二者択一の選択だと思い込みどちらを選ぶべきかを迷っていた。そんな悩みを相談した際に、ラフルは「君はまだ若いんだからもっと世の中のことを知った方が良い。世の中にはたくさんのレバーがあって、どのレバーを動かせば世の中はどう動くか、それを知ることこそが世の中を変えることの近道だ。だから、感性が豊かなうちにいろんな国や地域に出向いてできるだけたくさんのレバーを上げ下げしておくんだ。」という助言をくれた。その意味するところは研究をしないと本当に社会を動かすことはできないということであり、むしろ両方をとらないと実現できることは少ないということであった。この助言のおかげで現在、博士号取得を目指しながら、実社会でどのような活躍をするかを考えるという柔軟なキャリアプランニングをできるようになった。

国連インターン時代の上司のラフル(真中)と同僚のサラ(左)

国際機関はWhat can you doよりもWho do you know

  • 留学先探し : インターンシップ

私はバンコクに本部をかまえるUN-ESCAPという国連機関でインターンとして働きました。私もある人の紹介によってこのインターンのポストを知ったのですが、この時、いろんな人に教わった国連機関でインターンの経験を積む上で最も大事なことは「何ができるか」ではなく「誰を知っているか」だということでした。だから国際機関で働きたいならとにかくメールを送る、会いにいくことが大事です。特に直接会って印象付けることはとても大事です。また、いきなりどうしていいかわからなくても間接的に可能性は存在しています。意外と身近な大学の先生がキーパーソンを知っている可能性もあるものです。とにかく何か知ってそうな人たちに片っ端からアポをとり直接話しをしにいくこと、これだけで可能性はかなり広がると思います。

留学前にやっておけばよかったこと

同じ国や地域にいるトビタテ生と交流したり連絡を取っておけばよかったと思います。どれだけ深く留学先の国に入り込めても複数人で情報を共有した方が気づきや新たな知識はどんどん入ってくるからです。日本人で群れすぎるのも語学力等の観点からあまり良くないかもしれませんが、利用可能なネットワークは最大限に活用することで得られるものは増えると思います。

留学を勧める・勧めない理由

留学は少しでも今取り組んでいることを伸ばしたい気持ちがある人にはオススメします。その理由は自分の現在地が認識できるからです。気が遠くなるほどの差を見せつけられることもあれば、外の世界が実はそんなに大したことないこともあると思います。大事なのはその違いを認識することだと思います。今現在何かに一生懸命取り組んでいる人にとって留学はかなり価値のあるものになるのではないでしょうか。

これから留学へ行く人へのメッセージ

とにかく先入観を捨てて新たな地域に飛び込んでみることがとても大事だと思います。そして、自分をしっかりもつこと。自分のアイデンティティがしっかりしていれば、新たに出会う人々との違いを認識できるし出会いのたびに視野が広がると思います。