留学内容
みなさんはドラマや映画の登場人物の関係性を矢印などで示す相関図を見たことありますか?相関図を見ると、ドラマの背景がわかり、本編のストーリーを観たくなるものです。
私は、非生物な原子や分子が集まって、細胞や臓器そして動物の体ができるまでのストーリーを知りたいと思っています。ですが、生物学の教科書を開くと、ドラマの相関図のような、細胞内にある分子たちの化学反応のながれを矢印で示す図ばかりで、私が気になるストーリーについてはほとんど語られていません。
なぜ、生物学の教科書には相関図がたくさん書いてあるのに、肝心なストーリーが書かれていないのでしょうか?それはモノの動きの理を探求する物理学で、細胞内のように、化学反応がある時の分子の運動をまだ、記述しきれていないからです。つまり、生き物を深く理解するためには、一度、生物学から離れて物理学をより成熟させる必要があるのです。
細胞の遺伝子発現を制御する技術は、再生医療で安全な臓器を作るためにも、癌などの難病を治すためにも不可欠です。遺伝子発現の変化は物理的な力によって細胞が変形するときにも生じる。しかし、遺伝情報を担うDNAで詰まった細胞核内に局所的な変形を制御する方法がないため、力学的に遺伝子発現が制御される仕組みは分かっていない。私は、細胞核に磁気微粒子を挿入してそれを磁石で動かすことで、細胞核内に局所的な変形を加える実験をしています。すると、硬さや粘り気など、物理学でよく理解されている現象と比較することができるのです。