【岐阜県】「一人でも多くの生徒に外の世界をみせたい。」
周知方法の見直しで留学フェアの集客が大幅に増加!

 集客の安定しなかった県主催の留学フェア。そもそもどうあるべきかから問い直し、周知方法を見直すなどすることで、100名集客という高い目標に対して150名の集客と、大盛況を収めた。岐阜県教委の行った取り組みとは?

満席となった留学フェアの様子
満席となった留学フェアの様子
<はじまり>
「高校生の長期留学者を増やしたい。でも留学フェアをしても人がなかなか集まらない」
そんな課題感をもつ自治体は少なくないのではないだろうか。岐阜県もそういった自治体の一つだった。
グローバル人材育成のためにも、もっと多くの生徒に長期留学に行ってもらいたい。しかし、留学したいという岐阜県の生徒は36.9%(平成28年 文部科学省調べ)と多いのに、なぜ実際に留学する生徒はこれほど少ないのか。

「数字だけでなく、留学した生徒一人ひとりを見ていくと、結局実際に留学しているのは、ノウハウのある学校や先生のいる所に集中しているのがわかりました」(岐阜県教委)
<2つの転機>
学校や教員といった環境に依存せず、どの生徒にも等しく留学の機会を提供したい。そのための留学フェアはどうあるべきなのか。そういった議論があがったとき、見えてきたのは『一人でも多くの生徒に外の世界をみせたい』そのためにも『留学に対するハードルを下げたい』という思いだった。
「まずは情報を隔たりなく生徒たち隅々まで行きわたらせることを意識しました」(岐阜県教委)

2つ目の転機は文部科学省からの一通の通達。『国際理解教育担当指導主事等を対象とした地方研究会の開催』(別称:ワクワクするグローバル人材育成を考えるワークショップ)についての案内。地方研究会の開催地候補を募る通達に、岐阜県は迷わず手を上げる。その研究会で他都道府県の取り組みを知り、何をしていくべきかの糸口が見えたという。
ポスター(学校配布)からリーフレット(個人配布)への変更
ポスター(学校配布)からリーフレット(個人配布)への変更
※リーフレットはクリックでダウンロード可
<何をしたのか>
周知方法の変更
それまでは留学フェアの告知ポスターを作成し、県内中学・高校・特別支援学校に各2枚ずつ配布。これを改めた。
県内の中学2年生、3年生、そして高校1年生全員に情報が届くよう、4ページのリーフレットとして作成。6万部を刷ってその全員に届くように手配。
「予算がないのでポスターは辞めました。配送費も削るために、すべて機会あるごとに手渡しで配布をお願いしました」(岐阜県教委)
手渡しでの配布は予算削減のためと行ったことだが、うれしい誤算としては、学校現場でより配布を促す効果もあったのではないだろうか。
リーフレット一部拡大
リーフレット一部拡大
リーフレットの内容に工夫
ポスターで周知を行っていたときは、開催告知がメインだった。しかし、リーフレットに改める際に、内容も他都道府県の事例をもとに工夫。Q&Aを取り入れ、生徒に親しみやすくしてみたり、キャッチコピーは目にも心にも留まりやすいようにしてみたり。写真付きの留学体験談は、留学ニーズ潜在層の心にも火をつけたいという思いからだ。
実際に留学した生徒によるパネルディスカッション
実際に留学した生徒によるパネルディスカッション
留学フェアの中身も改変
何のために留学フェアを行うのか。それまでの「長期留学者を増やしたい」という取り組みから、『一人でも多くの生徒に外の世界をみせたい』という思いに合わせ、ターゲットを短期留学から海外大学進学まで幅広く含めた層に変更。フェアの内容も講演+先輩留学体験談の発表というレクチャー形式から、ワークショップを取り入れた「参加者の留学ニーズを喚起させる」取り組みに変更を行った。
<どうなったのか>
12月14日(土)開催の1週間前には、目標を大きく上回る130名の申込みを受け付けた。当日は開場前から多くの人が集まりだし、当日参加も含めて154名の生徒・保護者を迎え大盛況に。
開催後のアンケートでは、生徒の回答者43名の全員が「留学したい気持ちが高まった」と回答。(88%が「とても高まった」と最高値で回答)
保護者の回答者31名も、その全員が「留学させたい気持ちが高まった」と回答。(81%が「とても高まった」と最高値で回答)

「楽しかった!留学することで多くのことが身につくことがわかった。」(生徒)
「私と同じような子がとても生き生きとした姿で話していて憧れた。」(生徒)
「日本の中だけを見て育っていくだけでなく、他の国の生活を見ることの大切さを感じることができた」(保護者)
「留学の目的は語学力だけでなく、積極性や海外でしか経験できないことの体験が大きいことを知ることができた」(保護者)

岐阜県から外の世界を見ようという生徒が、応援する保護者の想いが、これまで以上に高まってきている。
AIDMAの図表イメージ
AIDMAの図表イメージ

【編集後記】
古くからあるマーケティング理論にAIDMAというものがある。(Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字を取ったもので、アメリカのローランド・ホールが提唱した「消費行動」の仮説)
この岐阜県の取り組みはAであるAttentionをリーフレットの全件配布という形で大幅に拡大し、IであるInterestに対しては生徒に寄り添う形でその内容を刷新。留学フェアの中身も見直すことでD:Desireを高めることにも成功した好事例。すぐにでも真似できるところも多く、数多くの自治体に参考にしていただきたい。

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