茨城県教育委員会では、ハーバード大学進学者も輩出した受講期間2年間に及ぶ中高生対象「次世代グローバルリーダー育成事業」、留学フェアの開催や国連大学との連携など高校生対象「国際社会で活躍できる人材育成事業」、「いばらき海外留学支援事業」など、中学生から高校生を対象としたグローバル人材育成に県をあげて取り組んでいる。
≪義務教育課≫
2018年度に「茨城県まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中でグローバル人材育成という柱がたった際に立ち上げた主要施策。茨城県から世界に通用するトップリーダーの育成を目的に、単なる英語力向上だけではなく、茨城と世界を結びつけたグローカルな視点を育み、正解のない問いへの思考力や自分の考えを表現する力・議論の仕方などといった国際社会で必要不可欠となるスキルを2年間かけて培う濃厚な内容となっている。令和3年度は98名の応募があり、40名を採用。令和2年度はコロナ禍にもかかわらず133名の応募があった。オンラインでの対応を早い段階から導入していたため、コロナ禍で行動が制限されている時期だからこそ参加したいという生徒も多かったようだ。
さらに、本プログラムの大きな特徴は、募集対象が中学2年生~高校1年生であり、中学校から高校にまたがって生徒が参加しているところである。中高生にとって、違う年代の人たちと同じことに取り組み、討論できるような場が少ない中で、このプログラムでは、中学生も高校生も関係なく、高いレベルで同じ話ができることが魅力の一つとなっている。
また、集合研修会等では実施内容に合わせて高校教育課に協力をしてもらうなど、教育委員会内でもスムーズな連携体制が取れている。
◎3つの柱「英語力」「価値創出」「異文化理解」からなるプログラム(詳細)
海外大学留学生とのディベート演習
Tokyo Global Gatewayでの研修
グループでの課題解決学
海外大学留学生の体験談を聞く受講生
県の主要施策とはいえ、何よりも情熱を持った担当チームがこのプログラムを支えている。保護者同伴ができる説明会を複数回に分けて実施し、内容をできるかぎり知っていただくことはもちろんのこと、チラシを自分たちで各学校に配布することや、国際教育に力を入れている学校にアポイントを取って、意欲のある生徒にぜひ参加いただきたいという思いを直接伝えてきたという。特に、これからグローバル人材育成や国際教育などで特色ある教育活動を進めていきたいという学校はとても興味を示してくれたのが印象的な反応だったそうだ。そのような学校では、先生たち自身がもっと詳しく聞きたいので説明会に参加させてほしいという要望や、多くの応募者を参加させてくれたという。
「世界の第一線で活躍する人材との交流」における講師の依頼は、県担当者が直接している。「とびこみというわけではないですが、ネット検索にはじまり、情報収集や人づてにお知り合いを紹介していただくなど、より生徒たちの目標にあった活動をしている方を私たち自身もお呼びしたいと考えています。依頼のところで苦労することも多いのですが(笑)」(義務教育課)。思いとは裏腹に、様々な理由によって講師の方にお越しいただけないことも多々あるが、それでも生徒たちの夢や希望へ寄り添うことを続けている。「コロナを経験したこともあってか、3期生(2020年度)、4期生(2021年度)は海外の病気で苦しんでいる人たちのために何かできることがしたいなど医療に興味のある生徒が多いので、お忙しく難しい状況は分かってはいましたが、今回はスーダンなどの途上国で活動している医療関係の方にお越しいただけるよう調整したところです。」(義務教育課)
学校の中だけではなく、持っている力を存分に発揮できる環境を求めている生徒たちを更に伸ばしていきたいという思いで、学校教育の中では経験できないような場や機会を県が積極的に提供している。
≪高校教育課≫
高校教育における国際教育の充実を図り、グローバル化を見据えた「国際社会で活躍できる人材育成事業」において、①ディベート・チャレンジ ②留学・国際交流促進事業 ③茨城県高校生国連グローバルセミナーの3つのプログラム(詳細)がある。
海外留学支援制度があっても、まずは認知してもらうことが重要なため、生徒はもちろんのこと、保護者や教員も対象として開催している。また開催する時期についても生徒が留学に対して想いを持ち始める時期や、参加しやすい時期などを毎年検討しながら計画を立てている。コロナ禍のため昨年は中止したが、今年はオンラインでの留学フェアを検討している。前回は、水戸駅周辺での開催になっていたが、オンライン開催により県内全域へ留学機運を高められる仕掛けを意識して取り組んでいる。
令和元年度 留学・海外進学ガイダンス(留学フェア)
いばらき海外留学支援制度は平成27年度より開始。14日以上の海外派遣プログラムに参加する生徒を対象に、留学支援金として一人上限10万円を交付する。英語の実践力向上プログラムが組み込まれていれば、学校や地方公共団体、高校生の留学・交流を扱う民間団体等が主催するプログラムが支援対象となり、より多様で自由度の高い留学を支援する制度となっている。
「県内の各学校も工夫した様々なプログラムを持っています。ただ、応募したくても経済的理由により応募できない生徒もいるので、本制度は経済的支援という側面があります。また、『自分の興味ある分野を学びたい!』『留学に行きたい!』と、自分で留学情報を集め、学校以外の留学プログラムを自分で見つける行動力があり、学ぶ意欲のある生徒に対しても支援できるようにしています。」(高校教育課)
令和元年は50名枠に対して応募が89名(※渡航は中止)あり、本事業を通じて200名を超える生徒を海外へ送りだしてきた。その中には、前述の中高生対象「次世代グローバルリーダー育成事業」を受講し、その後に海外留学支援制度を利用して海外に飛び立っている生徒もおり、茨城県のグローバル人材育成に貢献している。
コロナ禍の現在は実施できていないが、それ以前は先生方に国際交流の良さを知っていただくことを目的とした連絡協議会を実施していた。各校で国際交流にかかわる先生であれば担当教科等の縛りはなく、国際教育担当1名が参加できる。協議会では、いばらき海外留学支援制度についてはもちろんのこと、各学校の実践活動についてシェアする時間やトビタテ!留学JAPAN事務局メンバーがお邪魔をし、高校時代の留学の意義について話したり、留学まで学校としてのサポート等について質疑応答したりする時間を設けている。
平成30年度 国際教育推進協議会
グローバル人材の育成で終わることなく、生徒たちが茨城でどう活躍していけるか、活躍できる場をどう創出し提供できるかについても今後は取り組むべき課題だという。
次世代グローバルリーダー育成プログラムの第1期生には、今年2021年に海外の政策などを学びたいと、ハーバード大学に進学した生徒がいる。県は、プログラムの後輩たちが渡米前の彼と交流する場を設け、「なぜ海外大学へ進学するのか?」など、後輩たちが先輩の思いを直接聞くことで、将来の選択肢を広げる機会となるよう研修を行った。
今頑張っている中学生・高校生が「あ、こんな風に自分もなってみたい!」「頑張ってみたい」と、この茨城の地で身近に感じられ、それを応援する仕組みや環境があるのが茨城県の強みである。「ハーバード大学進学など様々な進路やキャリアを選択している本事業の先輩の皆さんには、これから頑張ろうとしている次の世代の身近なロールモデルになってもらい、今後も多くの子どもたちが茨城から世界に飛び立てるように頑張ってもらいたい。」
ハーバード大学に進学した1期生(右)
https://resemom.jp/article/2019/04/19/50211.html