留学内容
イギリス文学・文化の研究者になるつもりだったので、博士留学は避けて通れない道でした。日本での指導教員がイギリスで博士号を取得していたので相談したところ、留学未経験なのにいきなり長期留学するよりも、まずは1年行って様子を見た方が良いと言われたので、マンチェスター大学に1年間交換留学しました。その際、後に博士留学時に指導教員となる先生と出会い、彼の指導を受けるために博士課程の院生としてマンチェスターに戻りました。
私の所属した学科はEnglish and American Studiesといって、日本の伝統的な「英文科」よりも幅広い、狭義の文学に限らない対象を研究しています。私の研究テーマは、「1930年代イギリス文化におけるユートピア」というものでした。1930年代は世界恐慌とファシズムの台頭を受けて、厳しい現実を直視しようということが声高に叫ばれ、「ユートピア」という語はもっぱらネガティブな意味合いを持って用いられ、美術、文学、映画などにおいてリアリズムへの志向が強くなりました。しかし私は、そのような「いま - ここ」の混沌とした現実を捉えようとする試みの中にこそ、理想へと向かうユートピア的衝動が読み取れるのではないか、と考えました。博士論文では、この問いを当時の新聞や雑誌、詩や映画、小説など様々な資料を読み解くことで検討しました。