留学大図鑑 留学大図鑑

星野 真志

出身・在学高校:
群馬県立太田高校
出身・在学校:
一橋大学
出身・在学学部学科:
社会学部、言語社会研究科
在籍企業・組織:

文学・文化研究に関心があり、イギリスに留学を考えていて、とくにマンチェスターを候補地として検討している方には、ご相談に乗れるかもしれません。TwitterでもFacebookでもメッセージを送ってもらえれば、可能な限りでお返事します。


最終更新日:2018年11月20日 初回執筆日:2018年11月20日

マンチェスターで英文学博士号をとる

留学テーマ・分野:
大学院進学(修士号・博士号取得)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • University of Manchester, School of Arts, Languages and Cultures, English and American Studies and Creative Writiing
  • イギリス
留学期間:
40か月
総費用:
14,000,000円 ・ 奨学金あり
  • (独)日本学生支援機構(JASSO)「海外留学支援制度」 11,000,000円
  • JASSO第1種奨学金(貸与) 4,000,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<IELTS 7.0> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

 イギリス文学・文化の研究者になるつもりだったので、博士留学は避けて通れない道でした。日本での指導教員がイギリスで博士号を取得していたので相談したところ、留学未経験なのにいきなり長期留学するよりも、まずは1年行って様子を見た方が良いと言われたので、マンチェスター大学に1年間交換留学しました。その際、後に博士留学時に指導教員となる先生と出会い、彼の指導を受けるために博士課程の院生としてマンチェスターに戻りました。
 私の所属した学科はEnglish and American Studiesといって、日本の伝統的な「英文科」よりも幅広い、狭義の文学に限らない対象を研究しています。私の研究テーマは、「1930年代イギリス文化におけるユートピア」というものでした。1930年代は世界恐慌とファシズムの台頭を受けて、厳しい現実を直視しようということが声高に叫ばれ、「ユートピア」という語はもっぱらネガティブな意味合いを持って用いられ、美術、文学、映画などにおいてリアリズムへの志向が強くなりました。しかし私は、そのような「いま - ここ」の混沌とした現実を捉えようとする試みの中にこそ、理想へと向かうユートピア的衝動が読み取れるのではないか、と考えました。博士論文では、この問いを当時の新聞や雑誌、詩や映画、小説など様々な資料を読み解くことで検討しました。

留学の動機

私は高校生の頃、イギリスのロックが好きで、どうしてもイギリスに行きたいと思っていました。そこで、ちょうど読書も好きだったので、大学ではイギリス文学を専攻し、それを口実にイギリスに留学するという計画を立てました。なので留学したいという気持ちはずっと持っていたのですが、腰が重く、博士課程になって奨学金をとってようやく実現しました。

成果

現在博士論文を提出し、審査を待っている状態です。留学を通じて研究対象に関する知識がついたのは当然のことですが、英語の読み書き能力も飛躍的に伸びたと思います。私の学科はイギリス人ばかりだったのと、ハウスシェア仲間もバンド仲間も全員イギリス人だったので、英語の喋り・聞き取りも随分上手になりました(とくにマンチェスター訛りもあり最初はかなり苦労しましたが)。

ついた力

のんびり力

イギリスの博士課程の院生は、学生というより研究員とみなされるので、授業に出る義務はなく、ひたすら自分の研究をすることが求められます。とくに私のような人文系は、本を読むのが仕事の中心なので、生活にメリハリをつけるのが非常に難しいです。下手をすると起きている時間ひたすら研究だけしてしまうというときもあります。しかし必ずしもそれで成果が伸びるわけではなく、適度にのんびりするのが大事だと思います。

今後の展望

今後は日本に帰り、大学での就職を目指します。博士課程での研究の成果を、学術論文、そして可能であれば書籍として出版することが、まず研究者としての目標です。そして、教育活動を通じて、自分の学んだ知を社会に還元していければと思います。

留学スケジュール

2015年
9月~
2018年
12月

イギリス(マンチェスター)

 私の留学は非常に幸先が悪く、ビザの発給が遅れたために入学オリエンテーションの類をすべて欠席しました。ただ、指導教員とはすでに面識があったので、良くも悪くも個人プレイなイギリス博士課程において、具体的に困ることはそれほどありませんでした。マンチェスターには一度留学経験があったのですでに友人がおり、日本語を勉強しているイギリス人2人と街中のフラットを借りて住みました。
 ときどき学科で行われる任意参加のセミナー以外は、ひたすら自分の研究のための読書を進め、月に一度指導教員と面談し指導を受け、各学期末には副指導教員ともう一名の教員を相手に進捗を報告するという調子で3年間を過ごしました。
 ロンドンの大英図書館に半年に一度くらいの頻度で資料調査に行き、三年目には作家の自筆原稿を見にケンブリッジ大学とイェール大学まで遠出しました。学会には一年に2、3回くらいずつ参加しました。

費用詳細

学費:納入総額

7,500,000 円

住居費:月額

2,700,000 円

生活費:月額

1,800,000 円

マンチェスターの街
調査に訪れたイェール大学バイネッキ図書館
費用詳細

学費:納入総額

7,500,000 円

住居費:月額

2,700,000 円

生活費:月額

1,800,000 円

スペシャルエピソード

ココでしか得られなかった、貴重な学び

 イギリスの博士課程では、基本的に個人で独立して研究を続けなければならないので、場合によっては非常に孤独な3年間になります。私の場合は、日本でも行なっていたジャズの演奏を続けることで、そのストレスに対処することができました。
 東京は世界でも有数のジャズが盛んな街だと思います。マンチェスターに来た当初は、街にジャズクラブが一軒しかないし、正直不満でした。しかし、徐々に地元のミュージシャンと知り合っていくうちに、小さなシーンながらそれぞれが工夫して新しい音を生み出そうとしていることを知りました。私が留学を開始したころは、ちょうどGo Go Penguinなどマンチェスター出身のジャズバンドによる、既存の「ジャズ」の枠に収まらない独特な音楽が日本でも人気を集め始めた頃でした。実際に住んでみて感じたのは、ジャズだけで成り立つ大きなシーンがないからこそ、多様な音楽の交流が生まれやすいという良い面もあるということでした。ライブに来る人たちも、ジャズファンというよりは、音楽や芸術一般に関する多様な関心のなかでジャズを聴くようになったというような人が多いようです。この街では本当に多様な音楽を聴くことができます。私も、マンチェスターに移ってからの方が、より多様な文化に柔軟に接することができるようになったと感じています。そしてそのような柔軟な好奇心が、研究においてもよい方向に作用したと思います。

バンド仲間との演奏

イギリス英語は方言が大変

  • 語学力 : 英語

よく日本人で、アメリカ英語は聞き取れるけれどイギリス英語が苦手、という人がいます。ただ、一口にイギリス英語と言っても、イギリスは方言がとても多くて、ロンドン出身の人でも地方に行くと、地元の言葉をよく聞き取れなかったりすることもあるそうです。なので、マンチェスターなどの地方都市に留学するときは、地元民と円滑に話すのはかなり大変です。大学関係者はだいたい聞き取りやすい英語を話してくれるのでそこまで困らないと思うのですが、せっかくだし街の人と仲良くなりたいと思う方もいるかもしれません。私は最初に交換留学をした際に、イギリス映画を観て方言を学ぶ、という留学生向けの授業を受けたために、よくある方言の言い回しはなんとなくわかるようになりました。なので地方を舞台にした映画を観るのは良い手かもしれません。それから最近はYouTubeにも、方言を教えてくれる動画がたくさんあがっています。これらを駆使して、ぜひ地元民との交流を楽しんでください。

留学前にやっておけばよかったこと

私はのんびりしていたために、大学に出願したのが4月でした。これはとても遅いと思うので、もっと早く準備を進めておけばよかったと思っています。しかもその後、イギリス入国管理局がビザの申請ルールを変えて、そこで手間取り、ビザが出たのが本当に渡航の直前でした。留学前に家族や友人と過ごす大切な時間をじゅうぶん楽しめないまま留学を開始するハメになったので、そうならないためにも準備は早めに始めてください。

これから留学へ行く人へのメッセージ

ぜひこれまで経験していないような新しい活動に挑戦して、未知の世界へと踏み出してほしいと思います。留学を経てもたいして何も学ばない人はたくさんいますし、新しい環境を活かせるかどうかは自分次第です。ただ、好奇心とか向上心というのは留学する以前の、国内で過ごしているときから高められるものだと思うので、日頃から地道な努力を怠らないようにして、留学を実りあるものにしてもらえればと思います。