留学大図鑑 留学大図鑑

きしちゃん

出身・在学高校:
茨城県立水戸第一高等学校
出身・在学校:
東京藝術大学大学院
出身・在学学部学科:
音楽研究科音楽文化学(音楽学)専攻
在籍企業・組織:

トビタテで留学後も、別の財団の支援を得て、同じ中部ジャワのスラカルタに留学を続けています。2020年9月までは留学中の様子を定期的にSNSで発信する予定です。ガムランやワヤンについての学びを日本の音楽教育に活かしたいので、音楽関係や教育関係の方と繋がりたいです!


最終更新日:2019年11月19日 初回執筆日:2019年11月19日

ジャワのガムランとワヤンを本格的に学ぶ

留学テーマ・分野:
専門留学(スポーツ、芸術、調理、技術等)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • インドネシア国立芸術大学スラカルタ校ダラン科
  • インドネシア
  • スラカルタ
留学期間:
12ヶ月(2018年9月〜2019年8月)
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,440,000円
  • ダルマシスワ奨学金 240,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
インドネシア語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

私の留学計画は、諸外国の音楽(特に中部ジャワのガムランと影絵芝居ワヤン)について詳細に知り、将来的には日本の音楽教育、とりわけ諸外国の音楽の分野の専門家として活躍することを目標とした。インドネシア国立芸術大学スラカルタ校影絵芝居(ダラン)科に留学した1年間では、大きく分けて3つの活動を行なった。
まず一点目は大学のダラン科の授業で、影絵芝居上演における4つの要素の授業(上演を実践する授業、語り、音楽、歌)で、基礎(1年生)の授業を受けたことである。
二点目は、影絵芝居、歌、グンデル(楽器の名前)、ジャワ語と4人の先生方のプライベートレッスンを受けたことである。これらを通じて、影絵芝居の人形遣いダランや伝統音楽ガムランの実技の徹底的な習得に努めた。
三点目は、フィールドワークで、スラカルタ周辺で開催された各種の芸能を鑑賞したことや、定期的に練習会に参加したことである。市民のグループが各曜日に開催しているガムランや舞踊、ワヤンの練習会は、個人レッスンで指導を受けた楽曲を合奏の中で練習する良い機会となった。さらにそこでは多くのジャワ人と交流することもできた。
上記のような活動から、影絵芝居を取り巻く伝統芸能の伝承の様子や問題点について知り先生方のレッスンからは実技を学ぶだけでなく、「教える」ということについても数多くの重要な視点を学ぶことができた。

留学の動機

大学のサークル活動で中部ジャワの伝統音楽ガムランを勉強していた。初めてジャワを訪れた時、自分が非西洋や日本の音楽についてあまりにも無知であることを実感した。さらに、自分がそれ以前に受けてきた音楽教育が西洋一辺倒であることに気づき、それに疑問を持つようになった。自分がジャワの音楽や影絵芝居を本格的に学ぶことで、非西洋の音楽の専門家として日本の音楽教育に貢献したいと考えた。

成果

大学ではダラン科1年生の授業に出席し、ワヤン上演の基本的な流れや使用される楽曲などを知ることができた。大学という教育機関で集団に対して伝統芸能を伝承するということの課題も明らかになった。プライベートレッスンではワヤン上演やガムラン演奏の基礎を学ぶことができ、特にワヤンでは留学中に4回本番を行うことができた。大学や練習会では多くのジャワ人と交流でき、食文化やジャワ語についても教わることができた。

ついた力

物事を前向きにとらえる力

この留学を通して物事を前向きに捉え、様々なことに積極的に挑戦できるようになった。これは、ガムランの練習会によく一緒に足を運んだ留学生の友人の影響である。わたしは練習会で自分が習っているグンデルという楽器に入る勇気を持てずにいたが、この友人が、自分が習ったことを合奏で試せる機会を積極的に探しに行かなくてはいけないと教えてくれたのだ。わたしはその後、多少の失敗は恐れず、何事も挑戦できるようになった。

今後の展望

他財団の支援を受けて、2020年9月まで留学を延長予定である。帰国後、修士論文を執筆予定であるが、博士課程への進学も視野に入れながら、当面はジャワ現地で伝統芸能の大学における伝承や女性と芸能についての研究を進める。さらに、帰国後は演奏活動や音楽教育の分野での活動も行いたいので、具体的な活動計画を立てることも今後の目標である。

留学スケジュール

2018年
8月~
2019年
8月

インドネシア(スラカルタ)

大学での毎日の授業の他に、ほぼ毎日グンデル(楽器)、歌、ワヤン、ジャワ語、いづれかの個人レッスンを受けていた。実技は基本が身に付き、ジャワ語は単語が聞き取れるようになった。真摯な気持ちで学び続けていたら、先生方も本気で教えてくださるようになった。さらに夜はガムランの練習会や各種の芸能鑑賞にほぼ毎日出かけていた。特にワヤンは一晩の上演を50本ほど鑑賞した。キッチンとトイレが共同のアパートに住んでいたので、同じ家の留学生の友人にとても親切にしてもらった。この留学生の友人はわたしのことをいつも応援してくれ、その影響でわたしは物事を以前より前向きにとらえられるようになった。さらに、自分から演奏するチャンスを掴みに行くことの大切さも教えてくれた。前向きな姿勢で、まずは失敗を恐れずにチャレンジしてみることの大切さをこの友人から学んだ。わたしは以前よりも積極的に動くことができるようになった。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

5,200 円

生活費:月額

20,000 円

項目:レッスン代

420,000 円

大学のワヤンフェスティバルで影絵芝居を上演している様子
ガムランの練習会でグンデルという楽器を弾いている様子
グンデルの先生から指導を受けている様子
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

5,200 円

生活費:月額

20,000 円

項目:レッスン代

420,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

留学中、いちばんお世話になったのは、同じ大学のガムラン演奏科に留学していたシンガポール人の友人である。この友人には感謝してもしきれない。この友人とは偶然にも家が同じで、彼にはすでに一度同じ大学に留学していた経験があり、生活のこと、楽器のこと、ガムランの練習会のこと、本当にたくさんのことを教えてもらった。そして何より、後ろ向きな発言をしがちなわたしに、いつも前向きな言葉をかけて励ましてくれ、良くないことがあった時にはいつも笑い飛ばしてくれた。時には、引っ込み思案なわたしの背中を押してくれたり、厳しいアドバイスをしてくれたりもするよき存在である。色々な練習会に一緒に出かけたり、レッスンを一緒に受けたりしたことは、とても思い出深い。彼のおかげでわたしは前向きに物事をとらえられるようになった。かけがえのない友人との出会いも留学の魅力の一つであると思う。

お世話になった友人との一枚

ジャワ語の壁

  • 語学力 : その他の言語

中部ジャワでは、日常会話が基本的に現地語のジャワ語で行われる。わたしは、インドネシアの共通語であるインドネシア語の学習に気を取られ、ジャワ語にはほとんど触れないまま留学を開始した。実際に大学の授業に出席するようになると、大学の授業もジャワ語で行われていたため、困難を感じた。すぐに全てを理解することは難しいと感じたので、授業にはわかる範囲で参加し、不明なとことろは授業後、先生に質問し、内容をインドネシア語で教えていただいたり、学生に尋ねたりすることもあった。この時に、積極的に質問できるようになったことはよかった点であったと思う。また、ジャワ語を早く理解できるようにするために、週に一回ジャワ語のプライベートレッスンを受講するようにした。まだ、会話をしたり、発話の内容の詳細な理解には至っていないが、以前よりも、会話の中で単語が聞き取れるようになってきた。語学はできることに越したことはないので、現地語の習得を強く勧めるとともに、何か他に現地の人とコミュニケーションが取れる言語の習得をしておくことが非常に大切であると思う。そうすれば、わからないことを質問したり、教えてもらったりすることができる。

ジャワ語のレッスンのノート

留学前にやっておけばよかったこと

課題と解決方法で詳述するが、中部ジャワでは日常会話が基本的にジャワ語で行われるので、ジャワ語の学習にもう少し力を入れておくべきだったと思う。逆に、インドネシア語で会話ができたことはスムーズだった。外国人とは英語で会話することになり、慣れない英会話に戸惑ったりもしたので、英語と現地の言語の習得は留学前に力を入れるべきだと思う。

留学を勧める・勧めない理由

わたしは多くの人に留学を勧めたい。それは二つの価値があるからである。一点目は、現地で自分が学びたいものを現地で、さらに一定期間集中して、直接学ぶことができるということである。二点目は、自分の力で課題を解決する行動力がつくという点である。留学中は多くの苦労もあるが、それを乗り越えるために、自分の殻を破り、積極的に行動することになる。これらの経験は、留学で得ることのできるかけがえのない経験だと思う。

これから留学へ行く人へのメッセージ

一つアドバイスをするなら、英語も含めた語学の習得はしっかりしておくといいですよ。他に言語が必要な人はその言語もしっかりと。最初は不安も大きいかと思いますが、留学が始まってしまえば、困った時は必ず誰かが助けてくれます。感謝の気持ちを持ってコミュニケーションをたくさんとりながら、積極的にチャンスを掴みにいきましょう。あとは、真摯な気持ちで学ぶ姿勢が大切です。先生も本気で教えてくれますよ。