留学大図鑑 留学大図鑑

中村優平

出身・在学高校:
福岡県立京都高等学校
出身・在学校:
長崎大学
出身・在学学部学科:
多文化社会学部
在籍企業・組織:


最終更新日:2018年01月15日 初回執筆日:2018年01月15日

イスラーム教徒の人々と生きる。

留学テーマ・分野:
大学生:交換・認定留学(日本の大学に在籍しながら現地単位取得を伴う留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • オックスフォード=ブルックス大学・アンカサ=プラ2・ザンジバル州立大学
  • インドネシア・タンザニア・イギリス
  • オックスフォード・ジャカルタ・ザンジバル
留学期間:
13か月
総費用:
2,150,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 2,150,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語, インドネシア語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

イギリスのオックスフォード=ブルックス大学へ交換留学しました。学問分野は、日本の大学で学んできた国際法や社会学です。ただイギリスは実際に大量の移民やその子孫を抱えている国ですので、現実的な人権問題や移民政策を授業で行っていました。またオックスフォードの街は住民の7%ほどがイスラーム教徒であり、学生、教員、職員、運転手など様々な場所でイスラーム教徒の方々が居ました。またイベントや交友関係を通じて、イスラーム教徒の人々と先祖代々イギリスに住んできた人々の関係を伺いました。

また在日イスラーム教徒の人々で、一番人口の多い出身国はインドネシアです。つまり日本では沢山のインドネシア人が働いていることになります。だからインドネシア人が現にどのような働き方をしているのかを知りたいと考え、国有航空運営会社であるアンカサ=プラ2でインターンシップをさせていただきました。インドネシア人の価値観や性格に戸惑いましたが、なんとか乗り越えることができました。

タンザニアのザンジバルでは、長崎大学とザンジバル州立大学の方々に支えられながら、フィールドワークを行いました。ザンジバルを走る自動車の90%以上が、日本の中古車です。インド洋に浮かぶ島で、日本語をみかけたときは面白かったです。ザンジバルにおける人口の99%はイスラーム教徒の方々で、人々の働き方はイスラームと密接に関連していました。

留学の動機

グロバール化の進む日本で、移民の人々は増えていきます。移民の中でも私は、イスラーム教徒の人々に興味がありました。だから既にイスラーム教徒の移民やその子孫が多く暮らすイギリスで移民政策や実際の対応を経験し、そして移民を送り出す側である、インドネシアとタンザニアで現地の人々の暮らし方を体験しようと考えました。

成果

イギリスでイスラーム教徒として暮らすことは、大変ではありません。特別な対応はあまり必要をせず、該当するのは礼拝と食事だけです。礼拝室は部屋を1つ設ければいいだけですし、食事はベジタリアンの方もいるので当たり前という感じでした。寧ろ気になったのは、出身国で固まり孤立してしまうことや、英語が話せないと生活が困難といったことでした。宗教ではなく、文化や言語の壁が高いと感じました。

ついた力

なんとかなる精神力

どんなに辛くても、どんなに無理だ思えても、最終的にはその状況から抜け出せるので、壁にぶつかった時には何とかなると思いながら行動するようになったこと。また、最悪な結果になったとしても日本に帰れば、全て闇に葬ることが出来ると思うと心が楽になること。

今後の展望

留学を通して大学院に進学し、学びを続けたいと強く感じました。ただ将来は日本に住む外国人労働者の支援を行いたいです。特にイスラーム教徒の方々をお手伝いできればと思います。またインドネシアを初めとしたイスラーム圏の国々へ進出する日本企業のお仕事に関わりたいです。日本人労働者と現地の方々との意思疎通のお手伝いが出来たら幸せです。日本人側と外国人の間に入れる人材になれたらと思います。

留学スケジュール

2016年
9月~
2017年
5月

イギリス(オックスフォード)

イギリスのオックスフォード=ブルックス大学へ9ヵ月ほど交換留学しました。学んだ分野は、日本の大学で学んできた国際法や社会学が主です。例えば、イギリスの抱える大量の移民やその子孫に対する、現実的な人権問題や移民政策の授業を取りました。また、オックスフォードには数多くのモスクやイスラーム関連の機関があるため、それらのイベントや交流を通じて、イスラム教徒の方々がどのように生活しているのか、移民とその子孫としての現状と課題などといったことにも触れました。そしてメディアではテロや過激派などといったことが報道されていましたが、現実の生活では特に問題とかはありませんでした。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

110,000 円

生活費:月額

40,000 円

項目:航空券

150,000 円

オックスフォード大学中東研究センター。
私(青服)以外が、移民2世のイギリス人。
イギリスの温水と冷水が分かれた蛇口。
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

110,000 円

生活費:月額

40,000 円

項目:航空券

150,000 円

2017年
6月~
2017年
8月

インドネシア(ジャカルタ)

国有航空運営会社であるアンカサ=プラ2でインターンシップをさせていただきました。業務内容としては主に資料整理でしたが、日本語からインドネシア語への翻訳、社内パンフレットの作成、取引先の会場準備なども行いました。インドネシア語は問題なかったのですが、インドネシア人の価値観や性格に戸惑いました。日本とは少し異なった上下関係に悩まされました。また、仕事は雑談が多く何事もゆったりで頼りがいがないのですが、反対に日本人は仕事ばかりを優先して私生活を犠牲にしている節があるのかなと感じました。朝昼晩の激辛料理が辛かったのと、礼拝を呼び掛けるアザーンが鳴るたびに会社の隣にあるモスクに通っていたのが思い出です。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

10,000 円

生活費:月額

30,000 円

項目:航空券

70,000 円

様々なサンバル。全部、唐辛子です。
オフィス内の風景。
管轄空港のあるロンボク島の夕日。
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

10,000 円

生活費:月額

30,000 円

項目:航空券

70,000 円

2017年
9月~
2017年
9月

タンザニア(ザンジバル)

タンザニアのザンジバルでは、フィールドワークを行いました。ザンジバルはあまり日本との接点がないように思われるかもしれませんが、実は走る自動車の90%以上が日本の中古車で日本語が刻まれた自動車をよくみかけました。人口の99%はイスラーム教が占めるザンジバルで、人々がどのように生活したり働いたりしているのか、またどのようにイスラームを体得していくのかを経験しました。またマドラサというイスラーム学校で体験入学も行いました。理由はザンジバルの人々が、ほぼ全員そういったマドラサに通った経験を持つからです。イギリスの旧植民地であり、観光客も多いので外国人と現地人がどのように共存をしているかを垣間見ることも出来ました。

費用詳細

学費:納入総額

70,000 円

住居費:月額

50,000 円

生活費:月額

20,000 円

項目:航空券

160,000 円

マドラサの先生方にインタビュー。
左は通訳の女性。右はその友人。
マドラサでアラビア語を学ぶ少年。
費用詳細

学費:納入総額

70,000 円

住居費:月額

50,000 円

生活費:月額

20,000 円

項目:航空券

160,000 円

スペシャルエピソード

仕事と子育て

インドネシアでのインターンシップで驚いたことは、ある女性社員が赤ちゃんとベビーシッターを引き連れて、出勤したことです。しかも、赤ちゃんとベビーシッターを部長の部屋に座らせていました。そして男性部長の反応は「(笑)誰や。わしの部屋に赤ちゃんを置いたのは。(笑)(笑)(笑)」でした。女性社員は、数時間置きに部長の部屋に入っては授乳していました。これがインドネシアで当たり前のことなのかは分かりませんが、子連れ出勤は珍しいわけではないみたいです。「子どもを連れても生産性はあるけど、休んでしまってら生産性はゼロ。ベビーシッターも連れてきたから、他人に迷惑はかけてないよ。」と言われたとき、なるほどと思いました。

ベビーバナナ。可愛いかったです。

飲み会に参加しないという選択肢

  • 生活 : 食事

少々大げさかもしれませんが、日本社会で飲み会に参加しないことは時と場合によって周囲との隔絶を意味することがあります。それでも私は飲み会に参加するのが好きではありませんし、参加することも稀です。別にプライベートを重視したいから、意義が見いだせないからという訳ではありません。お酒の匂いと酔った人が苦手なのです。元々、会話をするのは好きなので御飯会には積極的に参加していましたが、やはり飲み会と比べるとお酒のない御飯会は少ないと言わざるを得ません。こんな私ですが、日本では上手くやっていけました。

しかしイギリスで暮らし始めたばかりのころ、私はイギリス人の飲酒文化に付いていけませんでした。日本人と異なり酒豪の多いイギリス人は半永久的に飲み続けることが出来ます。つまり一晩中、寮で飲み続ける学生が多かったのです。「郷に入っては郷に従え」と多くの留学生は、その付き合いに加わりました。しかし考えた抜いた結果、私はそういった付き合いに参加しないことにしました。無理して付き合うよりも、自分らしくあろうと思ったのです。

そして気付けば同じようにお酒を苦手とするイギリス人の友人が出来ました。そして彼ら彼女らを通して、お酒を介さない付き合い方を知ることも出来ました。単刀直入にいうと、その意思を伝えることです。そうすればイギリスでは、カフェでお茶をしたりパーティーで炭酸飲料だけにしたりしてくれました。飲み会をしたい者は飲んで、飲みたくない者は飲まない。こんあ当たり前なことで私は悩んでいたのかと思わされました。

何が言いたいかと言うと、自分らしさを貫いてもいいということです。異文化につかるということは、自分らしさを失うことではありません。そうした自分の軸があれば、自ずと道は開けます。

飲まない関係の友人達。

病むんです、私。小さいことなのに。

  • 語学力 : 英語

イギリスのロンドン・ヒースロー空港、インドネシアのスカルノ・ハッタ国際空港、タンザニアのアビード・アマニ・カルーム国際空港に着陸したとき私は病んでいました。飛行機は着陸が近づくにつれ、翼が広がっていきます。その翼が広がるにつれて鬱になっていくのです。そして着陸した後、飛行機のドアに向かう列の中で胸が苦しくなってしまいます。

そう、私は新しい土地に行くとすぐに病むタイプなのです。特に初めてイギリスに着いた時は大変でした。自分でも不思議ですが、英語を話したくなかったのです。ロンドンの空港からオックスフォードの大学まで英語を話しませんでした。本当に最初の2週間は部屋から出ることも苦痛だったのです。インドネシアでもタンザニアでも似たようなことが起きました。その地を離れるころになると、帰りたくないとなっているので不思議ですが。

毎日が楽しくなった後も、週末など一日中部屋に1人でいるときは虚しい気持ちで満たされていました。良い意味でも悪い意味でもストレスが溜まることが多かったです。良い意味というのは、友人と多く語り合った時などです。やはり母語ではない英語が語り続けるのは、体力がいります。

とはいえ、そんなこんなで留学を無事に終えることが出来ました。これから留学が不安だという方に、時は過ぎていくものなので辛いことも過ぎ去る、と思って頑張って欲しいと思います。

病んだときはインド洋を眺めてました。

留学前にやっておけばよかったこと

クレジットカード、デビットカード、キャッシュカードの違いを把握することです。クレジットカードしか持っていかなかったせいで、現金を引き出すことが出来ませんでした。仕方なく、クレジットカードで現金を買うといった生活を1年近く続けました。反省です。また留学開始の際、現地の空港から住居までの生き方を把握することです。大きい荷物を持ちながら、道に迷うと途方に暮れてしまいます。

留学を勧める・勧めない理由

私は小学5年生のときにインドネシアで暮らしていたのですが、大学生になってインドネシアへ行った際に多くのカルチャーショックを受けました。そして多くのことを学ぶことが出来ました。時間と場所が違えば、異なった体験をすることになります。留学が全てではありませんが、高校や大学といった学生時代の数か月や数年を日本の外で暮らしていくことは大変有意義になると思います。

これから留学へ行く人へのメッセージ

持論ですが、「留学」自体を目標にしないことです。それを目標にしてしまうと留学開始で夢が叶ってしまいます。だから留学で「何がしたいか」を設定することは大切です。また留学中にぜひ「イスラーム教徒の人々」と関わってみて下さい。世界人口の4人に1人はイスラーム教徒です。留学すれば彼ら彼女らに会うことは難しいことではありません。イスラームを知れば、きっと視野がさらに広がると思います。