留学内容
途上国開発に関して科学技術と実社会の関係性を深く学びたいと考え、オックスフォード大学大学院の修士課程「水科学と政策、マネジメントプログラム」に進学しました。東京農工大学で過ごした学部時代には農業環境工学を学び、灌漑技術の研究をしていました。灌漑の専門知識を足掛かりに、水問題について広く学べる上記修士課程に進学しました。
授業では非常に幅広いトピックを扱い、気象システム等について学ぶ自然科学色の強いものから、「水をH2Oと表記するのは還元主義的かどうか」等といった論題を扱う哲学の授業もありました。
私は実行に近い部分の水問題に関わりたいと考え、アラビア半島西部の位置するヨルダンの灌漑用水管理を修士論文のテーマとして扱うことに決めました。ヨルダンは平均年間降水量が200 mmを下回る一方、年間約2000 mmの水を蒸発させるほど温暖で乾いています。ヨルダンは慢性的に水不足であり、「世界一乾いた国」と呼ばれています。実際、人が生きていくためには最低年間一人当たり500 m3の水が必要ですが、ヨルダンでは持続可能な水資源は年間一人当たり161 m3しかありません。
水資源の有効活用のためには効率的な農業用水利用が不可欠な一方、高効率の灌漑設備は高価であることが多いです。そこで、水価格を適切に設定することで持続的に高効率の灌漑設備を運用することが可能か調べました。