留学内容
建築設計・都市計画の双方の観点から、地域特性を生かした建築まちづくりを学ぶために、フランスで7か月のインターン留学を行った。はじめに、エピナル市役所住宅・都市再生課(グラン・エスト圏)で4か月のインターンをし、地方都市の再生と住環境改善を目指す国家プログラム事業に携わった。その後、坂茂建築設計パリ事務所で3か月のインターンを行い、主に模型製作などに従事した。
最終更新日:2023年09月05日 初回執筆日:2023年09月05日
語学力:
言語 | 留学前 | 留学後 | |
---|---|---|---|
フランス語 | 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<TCF B2(2019), フランス語検定準1級(2015)> | → | 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル |
建築設計・都市計画の双方の観点から、地域特性を生かした建築まちづくりを学ぶために、フランスで7か月のインターン留学を行った。はじめに、エピナル市役所住宅・都市再生課(グラン・エスト圏)で4か月のインターンをし、地方都市の再生と住環境改善を目指す国家プログラム事業に携わった。その後、坂茂建築設計パリ事務所で3か月のインターンを行い、主に模型製作などに従事した。
高校時、AFS交換留学で1年間フランスに滞在。昔の洗濯場をバス待合所として使う住民の自発的行動を見て建築が人に与える影響に感銘した。大学進学後、見た目のよさだけでなく、建物の立地個所の歴史や特徴等の地域特性を生かす建築まちづくりに興味を持つ。日本では空き家や廃校等既存建築物が増えているが、フランスではその有効活用や地域特性を生かした建築まちづくりが進んでいる為、その仕組みや事例を学びに留学した。
「美しい」と称されるフランスでまちづくりのヒントを得る為に渡航したが、現地でも空き家増加やスプロール化等日本と同様の課題を抱え状態の悪い建物も多いことを知り、驚いた。そして、その課題を克服する為に「地方都市中心部の再生」という一貫した目的で国家プログラム事業による住宅改修が展開されていると知り、その先進的な取り組みに感銘を受けた。
設計事務所ではコンペを通じて実務における建築の形成過程を学んだ。
海外での生活・マネジメント力
エピナルではホームステイだったが、パリでは一人暮らし。自炊、スーパーやコインランドリーの早い閉店、自力での病院移動、交通ストライキ混乱等、言語や文化の違いに直面しながらの生活とインターンの両立は正直簡単ではなかった。しかし、インターン仲間との助け合いや地元のアドバイス、時間配分の工夫で克服。他にも公的手続き不備等、想定外の出来事にも対処し、フランス人相手でも堂々と問題提起・主張する重要性を学んだ。
建築・都市計画分野で、日仏の架け橋になる!
2022年
10月~
2023年
2月
エピナルは、フランス北東部に位置し、人口3万人の地方都市である。私はこのエピナル市役所の住宅・都市再生課で、国家プログラム事業「市街地再開発対応住居改善プログラム事業(Opération programmée d’amélioration de l’habitat – renovation urbaine: OPAH-RU)」に携わった。
このプログラム事業は、地方都市の再生と住環境改善を目的として、都市中心部の劣化住宅の修復を促進し補助金を提供するものであり、全国230以上の地方都市で展開されている。エピナルでも2018年から2023年まで第一期が行われたが、未だに状態の悪い建物が多数残っている。そのため、私はプログラム事業第二期の必要性を示すため、市や国の関連機関に向けた報告書を作成する役割を果たした。具体的な業務は以下の2つである。
・現地調査(建物の状態確認と、共有部の写真撮影)
・調査内容の文書化(建物状態の記録と地籍上の所有者情報)
調査対象地に実際に足を運び、計200棟以上の建物を文書化した。この成果により、課の上司から「市役所にとって非常に重要な仕事を果たしてくれた」と評価していただいた。また、市長や他組織の出席する会議や住民ワークショップにも参加し、関係組織との連携や住民の意向調査・合意形成の側面からも有益な経験を得た。
学費:納入総額 - 円 |
住居費:月額 - 円 |
生活費:月額 - 円 |
学費:納入総額 - 円 |
住居費:月額 - 円 |
生活費:月額 - 円 |
2023年
2月~
2023年
4月
設計事務所ではコンペに提出する作品3点に関与した。主な業務内容は以下の通りである。
・リサーチ
・模型作成(スタディとコンペ出展用)
・図面作成
スタディ模型(設計案の確認や修正のために作成するラフな模型)を作成した際は、所員の方が「やっぱりPCで見るよりわかりやすいね。このアーチの形はCGだと綺麗に見えるけど、模型を見ると実際はそうではなさそうだからやめておこう。」と話され、実務における建築の形成過程を実感した。また、建築家の名前を冠するコンペ出展作品の模型を製作することは正直プレッシャーもあったが、実際にコンペのプレゼンテーションで使用された様子を聞いて、やりがいを感じた。これらの作業を通じて、建築家が描いたイメージスケッチが、どのように現実の建築になっていくかを身近に学べ、その一部に関わらせていただけたことに非常にありがたく思った。
そして、1つの作品を完成させるには、多国籍のインターン生、ランドスケープデザイナーや構造家、イベントデザイナーなど、事務所内外の多様な人々が関わるため、チームとしての建築作成のプロセスを学ぶ機会となった。
学費:納入総額 - 円 |
住居費:月額 - 円 |
生活費:月額 - 円 |
学費:納入総額 - 円 |
住居費:月額 - 円 |
生活費:月額 - 円 |
今回の留学で経験したことはどれもかけがえのない思い出だが、一生の思い出となったのは、2か所目のインターン先の所長、坂茂さんと直接お会いしたことだ。坂さんは建築のノーベル賞とも言えるプリツカー賞を受賞した、世界的な建築家である。私がお会いできたことにこんなにも感激したのには、このような経緯がある。
最初は、2014年、高校生でフランスに留学(AFS交換留学プログラムで滞在)していた時である。美術の授業で、メッスのポンピドゥーセンターに行き、初めて坂さんの名前を知り、彼の建築に興味を持った。その後、TED Talkで、紙の筒を用いた建築で難民や被災者を支援する活動のお話を聞いて感銘を受けた。そして、大学受験の際には「尊敬する建築家」の欄に坂さんと書いた。当時は、まさか坂さんの事務所でインターンしたり、一緒にお食事できるなんて、想像もしていなかった。ここに来るまで、卒業設計や修士論文、ビザ取得の困難などで何度も心が折れそうになったが、お会いしたときに、「今まで諦めずにやってきてよかった!」と心から思った。インターン中は坂さんの名前で模型を作成することがとてもプレッシャーに感じられたが、よく考えれば非常に光栄なことだと気づいた。
市役所でのインターン中、渡航後わずか2週間の時期に、住宅調査(建物内外部の写真撮影など)に、私一人で行くよう任された経験が、大きな学びの機会となった。
上司が多忙な時期だったため一人で行くよう言われたのだが、日本人がほぼいない田舎の小さな街で、業務内容をフランス語で質問されてもまだ自信をもって回答できない段階で、一人で一般市民の住居地に入ることは非常に不安だった。「知らない日本人がフランス人の住宅に入っていくのを見て不審がられたり、何をやっているのか質問されてもとっさにフランス語で答えられずに市の不信感につながってしまうのではないか」と思い、とても怖かった。
同僚たちは「日本人一人でフランス人のアパートメントに入っていくなんて、そりゃあ不安よね」と声をかけてくれたが、「具体的にどの程度不安なのか、何をしたら不安が軽減されるのかまでは先方もわからない」ということを今回改めて感じた。そして、「何が不安か」ということだけでなく、先方に何をしてもらいたいかを伝えることが重要であるということを学んだ。今回の場合は、初めからフランス市民からの不信感を少なくするために、市職員用のジャンパーをお借りしたり、必要に応じて住民に提示するための住宅調査許可証(市長のサイン入り)と名刺を作成してもらうようお願いした。また、「調査は問題ないが、市民に何をしているか質問されたときに対応できるかまだ不安」と伝えた際は、上司ではない他の職員も、時間を見つけて付き添ってくださった。
このように、困ったことがあるときは、こちらからお願いしたいことを伝えて周りの助けを借りてできることを最大限することで、不安もだいぶ軽減され、やるべき業務に集中することができた。
フランスへの留学ガイドを見る