留学大図鑑 留学大図鑑

中嶋

出身・在学高校:
神奈川県立横浜翠嵐高等学校
出身・在学校:
東京工業大学
出身・在学学部学科:
環境・社会理工学院 土木・環境工学系
在籍企業・組織:
建設業


最終更新日:2024年05月15日 初回執筆日:2024年05月15日

地盤災害

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • マラヤ大学工学部土木工学科
  • マレーシア
  • クアラルンプール
留学期間:
3か月
総費用:
600,000円 ・ 奨学金なし

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

留学先では教授の下、「岩盤斜面の非破壊検査機器を用いたハザード評価」というタイトルで研究を行った。岩盤斜面は常に崩落の危険にある。近年、そのハザード評価は非破壊検査装置を用いて行われるようになってきており、東工大にない機器を備えたマラヤ大学で非破壊検査装置の使い方や使い方を中心に学んだ。基本的には、岩石の斜面や岩石の性状を評価するための非破壊検査装置を実際に使って、使い方や仕組みを理解し、担当教授にそのプレゼンを行い議論をしたのち次の器械に進むという流れで進めた。 本来は岩盤現場を訪問し、機器を使って危険度を予測する予定だったが私の担当教授が行っている岩盤調査プロジェクトは、関係者以外は簡単にアクセスすることができず、実際に岩盤を訪れて調査を行うことはできなかった。それでも、実際に数種類の非破壊検査装置を使用し、その使い方や原理を習得することができた。岩盤だけでなくコンクリートにも使用できる器具が多かったため、主にコンクリートに対して使用した。来年4月より建設業界で働くことが決まっており、扱う機会も多くなるであろう将来に向けいい経験になった。以下に具体的な内容を示す。
【課題と経過】
最初の課題は、マレーシアと日本で土砂災害の危険リスクがどのように評価されているかを調査することだった。土砂災害には大きく分けてがけ崩れ、地滑り、土石流の三種類がある。マレーシアにおいてはその種類によらず斜面の高さ、角度、地質などの観点からリスクをスコア化するという手法が一般的である。対して日本は三種類それぞれに起こりやすい地形があることを利用し、地形図で危険な個所を特定したのち斜面と民家などへの距離などを測りながら丁寧に算出する。どちらにも一長一短があり、日本の方法は丁寧だが時間がかかりすぎる。マレーシアの方法では簡単にできるがその精度は日本のに比べ低い。例えば、地形図判読でリスクが高い地域を日本の方法で特定したのち、マレーシア流のスコアシートを使う、など日本とマレーシアの方法を組み合わせれば精度を保ったまま効率を高めることができるかもしれないと感じた。
【成果】
その後、数種類の非破壊検査装置を実際に使い、使い方や原理を学んだ。具体的には、TLS(地上レーザースキャン)、ウォールスキャナー、鉄筋さび探知機、鉄筋探知機、Imapact Echo、UPV(超音波パルス速度)、リバウンドハンマー、GPR(地中レーダー)、AE(アコースティックエミッション)の9つの機器である。これらはコンクリートにのみ使える機器もあるが、岩盤を評価できるものも含まれ、使ってみてその精度や原理を学び、斜面崩壊のリスクを評価するのに非常に役立つことを実感した。特にTLSは盤斜面の破壊危険度を評価するために最も有効な器械の一つである。物体の空間的な位置情報を取得する計測装置でレーザー光線を対象物に当てて往復させ、距離や角度を測定する。1秒間に100万本以上のレーザービームが照射され、点群データとして測定結果が得られる。点群データは空間座標(x、y、z)で記録され、照射された物体の形状に関する正確なデータを提供する。このことは岩盤斜面など危険な場所のデータをそこに立ち入らずとも安全な位置から取得できることを意味し、岩盤斜面リスク評価に際し極めて有効な器械である。実際に装置を使う予定だったが、教授のスケジュールの都合でそれはかなわなかった。とはいえ、オンラインで実際の使い方の講習を受け、点群データを瞬時にかつ正確に取得できることを目の当たりにし、岩盤斜面の評価をより少ない時間と少ない人数でできることを学んだ。結論、実際の岩盤を見学することはできなかったが、岩盤斜面のハザードアセスメントに使用できる非破壊検査機器の原理や使い方を学ぶことができ、もともと自分で設定していた「岩盤斜面の非破壊検査による斜面崩壊危険度評価」というタイトルにふさわしい研究を行うことができた。英語でコミュニケーションをとらなければならない環境を含め、かけがえのない研究経験となった。

留学の動機

留学に行こうと思ったのは環境を単純に変えてみたかったからというのが最大の理由である。これまでずっと実家に暮らし、小中高大も言い方は悪いが似たような趣味・境遇を持つような友人とばかり付き合ってきて、インターネットでは自分が知りたい情報ばかりがカスタマイズされて表示され、環境に強く規定されてきた。それを打破したかった。また、研究テーマは専門分野における知識の拡充を図り選定した。

成果

岩盤や斜面災害についての知識、経験が身についたことは今後土木技術者としてのキャリアを歩むうえで大きなアドバンテージとなった。また、海外に生活することで、環境の規定から少しでもはみ出し世界が広がったという感覚や「検索ワード」の変化、日本のよさの再発見。それらが最大の成果だったように思う。

ついた力

世界は狭いと感じる力

色んな国籍の友達ができ、飛行機に乗ればものの数時間で国境を越え外国に行けることができると再認識し、日本で耳にする海外ニュースもそう遠くはない同じ惑星で起こっていることとして他人事には感じられなくなった。

今後の展望

卒業後は建設会社への就職が決まっている。そこで土木技術者として日本はもちろん、世界で活躍したい。この留学で地盤工学の知識・研究経験の幅が広がったこと、外国語での会話を余儀なくされる環境に滞在した経験は大きなアドバンテージとなった。今後も土木工学はもちろん、外国語や世界の様々な文化の勉強も続けていこうと思う。

留学スケジュール

2023年
9月~
2023年
11月

マレーシア(クアラルンプール)

平日の5日間はマラヤ大学で担当教授と話し合いながら非破壊検査機器を用いて実験やそのデータ整理を行っていた。教授は朝10時から午後4時頃までしかおらず、日本では考えられないほどゆったりしており、それに合わせて登下校していた。部屋から学校までは45分程度で電車とバスで通学していた。交通費がとにかく安く、電車は7駅ほど乗って¥90程度、バスは1.5kmほど乗って¥30程度だった。キャンパスが広いだけあって最寄駅から研究室までが遠かった。食生活に関してランチは毎回¥300程度で学食で食べていた。学食は安価でかつ充実していた。夜ご飯は住んでいたコンドミニアムの下にあるレストランでインド系料理であるナシカンダーをこちらもまた¥300程度で食べていた。ナシカンダーはビュッフェのようなもので栄養バランスをとるのに最適だった。朝ごはんは自炊というほどではないが、白米を炊いて輸入で日本の3倍程度する納豆と、野菜サラダを食べていた。おやつなどを含めても一日¥1000程度で自炊をした方が高くつくくらいであった。また、週に一回、学部の仲間とサッカーをし、週に二回、知人が住むコンドミニアムのジムに通い汗を流した。
週末は旅行に行った。高速バスは東京-名古屋間ほどの距離があっても¥1200程度だったため、バスで行きやすい場所に行く際に利用した。具体的には様々な宗教が混在するペナン島、マラッカ、チキンライスとホワイトコーヒーで有名なイポー、美しい茶畑のあるキャメロンハイランドに訪れた。またクアラルンプール国際空港からはLCCのエアアジアが多くの都市に就航しており、格安のチケットを見つけてボルネオ島や国外に訪れた。具体的にはボルネオ島の富士山よりも高いキナバル山を有するキナバル国立公園、巨大洞窟を持つグヌンムル国立公園の二つの世界遺産、半島側ではマングローブで知られるランカウイ島、国外ではシンガポール、ブルネイ、カンボジア、モルディブ、スリランカ、インドネシアに行った。宿は毎回¥1000程度の安い宿をとったが特に不満は覚えなかった。
食費、交通費、宿泊費の安さゆえに旅行に多く行けることは東南アジア(シンガポール除く)留学の醍醐味である。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

27,000 円

生活費:月額

33,000 円

大都市クアラルンプール
学部の仲間とサッカー
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

27,000 円

生活費:月額

33,000 円

スペシャルエピソード

留学中に、自分を勇気づけてくれたモノ・コト

留学途中、おそらくコーヒーの飲みすぎで胃酸過多のような状態になり、10間ほどろくに物を食べることができなくなった。だが大学でできた友人が薬や薬局の情報を教えてくれ、薬剤師の的確なアドバイスもあり、無事に回復した。外国で体調を崩すことは想像以上に心細かったが、そんな中で助けてくれた友人や電話で励ましてくれた家族のありがたさ、人間関係の大切さを痛感した出来事だった。

温かい研究室の友人

当たって砕けろ

  • 留学先探し : 大学院

私はとにかく海外で研究がしてみたかったため、渡航先に関して特に強い希望は無かった。そこで大学のプログラムを使用した留学であったため、その協定校の十近くの大学に連絡を取ってみたが、返信すらしてもらえないことも多く、受け入れ先の確保に難儀した。見つからないまま数カ月、運よくマラヤ大学が受け入れてくれることになった。外国語でメールを書くのも一苦労で、留学をあきらめることも検討したが、数打てば当たった。研究・専攻分野が一致さえしてれば研究テーマは後からどうにでも設定できる。希望のテーマでなくても思わぬ成果が得られ、後から振り返れば大抵素晴らしい経験となり、一生の財産となる。留学に少しでも興味があり、研究テーマに強いこだわりがないのであれば、渡航先にもこだわらず貪欲に受け入れ先を探すことも重要である。

これから留学へ行く人へのメッセージ

トビタテの同期など留学経験者と関わっていて、留学したことを後悔している人に一人も会ったことがありません。楽しいことばかりではないかもしれませんが、世界が広がり、確実に一生の財産となると断言できます。