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うし

出身・在学高校:
国立東京工業大学附属科学技術高等学校
出身・在学校:
東京農工大学
出身・在学学部学科:
情報工学科
在籍企業・組織:
某大学助教

博士後期課程(もしくは進学予定)で電気電子情報系の研究留学について悩んでいる方はぜひご相談ください。


最終更新日:2017年01月31日 初回執筆日:2017年01月31日

トップ研究グループで学んだ国際共同研究

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)・工学(機械・航空・宇宙・海洋・物質・材料・化学・医療・情報・画像・電気電子)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • サウサンプトン大学 電子・コンピュータ科学専攻
  • イギリス
  • サウサンプトン
留学期間:
4か月
総費用:
1,200,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 840,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル<TOEIC820点> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

無線通信分野を率いるトップ研究グループに客員研究員として在籍し、多国籍の研究者と共同で研究しました。留学中の研究成果は、情報通信分野の学術団体IEEEの国際論文誌に計3本が採録となりました。それぞれの論文で、携帯電話ネットワークにおける広帯域通信手法、ミリ波デバイス簡易化手法、低演算マルチアンテナ通信手法を提案しました。

留学の目的は、世界最高速(*)の新しい技術を提案し、国際共同研究のノウハウを学ぶことです。提案技術の新規性と有効性は論文の査読によって認められます。また、留学先のリーダーだけでなく、年齢の近いポスドク研究者二人と特に絆を深め、帰国から1年経った今でも共同で研究プロジェクトを進めています。留学期間中は大変な経験ばかりでしたが、新しい仲間と仲良くなれたことが今後一生の財産になると実感できているため、留学してよかったと心の底から思っています。

視野を広げるために、休日はパリで数学者のお墓参りをしたり、ミラノ万博を見学したりしました。また、ロンドンで開催された日本発信イベントJapan Matsuriにボランティアとして参加しました。帰国後はトビタテ留学マップ(http://tobitatemap.org)を開発しました。このサービスは、トビタテ生が世界中を飛び回っている様子を地球儀上に可視化します。

(注釈*)制限付き平均相互情報量による比較

留学の動機

留学の動機は危機感です。ある調査では、日本の研究者の出版する論文数が他国と比べて伸び悩み、この原因が国際共同研究の不足にあると結論付けられています [1]。私のこの傾向を変える一つの力になりたい考え、留学を決意しました。
[1] 阪 彩香, 桑原 輝隆, "科学研究のベンチマーキング2012 ―論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況―", 文部科学省科学技術政策研究所, 2013年3月.

成果

IEEEの国際論文誌に論文3編が採録。これらの成果により博士課程を計2年早期修了。
[1] http://ieeexplore.ieee.org/document/7469311/
[2] http://ieeexplore.ieee.org/document/7454778/
[3] http://ieeexplore.ieee.org/document/7422823/

ついた力

つぶれない力

実は、研究成果の一つは一度新規性を失いました。研究テーマが、北京大学とプリンストン大学の共同研究と被ったのです。世界で初めて私だけが手にしたと信じていた成果が、他の研究者によって先に発表されたとき、私は打ちひしがれました。数千時間の投資が水の泡になったと感じました。しかし、冷静に現実と向き合い、自身の成果の利点をより伸ばすことで新たな発見をし、何とか論文出版に結びつけることができました。

今後の展望

日本人研究者として日本の研究を世界に発信し続けたいです。そのために、日本の大学で研究室を主宰し、大学院生が世界に向けて研究発表できる環境を整えます。また、トビタテを通してできた仲間が世界各国の大学などで活躍しているはずなので、そこに指導学生を送り込みます。もっと欲を言えば、留学中に仲良くなった共同研究者と死ぬまで一緒に研究したいです。これらの目標を達成できるよう、一つずつ実績を積み重ねます。

留学スケジュール

2015年
6月~
2015年
9月

イギリス(サウサンプトン)

無線通信分野を率いるトップ研究グループに客員研究員として在籍し、多国籍の研究者と共同で研究しました。ここで、「トップ」とは、研究グループに在籍している研究者のGoogle Scholarにおける論文被引用回数の合計がトップであることを指します。当初は、「誤り訂正符号」の一つである「ターボ符号」の研究に取り組む予定でした。ターボ符号は第三世代以降の携帯電話ネットワークでも使われている技術で、微弱な電波でも高信頼なデータ通信を可能とします。ペースメーカーを体に埋め込んでいる方でも携帯電話を使えるようになったのはこういった技術の蓄積による影響が大きいです。留学先の研究グループは「ターボ符号」の世界的権威です。IEEEの国際論文誌に採録となった論文3本のうち、2本はこの技術と関連しています。残り1本は全く無関係で、このテーマは現在も継続中です。このテーマで新たに共同研究の成果2本を投稿予定です。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

70,000 円

生活費:月額

50,000 円

サウサンプトン大学 Mountbatten Building
割り当てていただいた研究スペース
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

70,000 円

生活費:月額

50,000 円

スペシャルエピソード

ココでしか得られなかった、貴重な学び

留学先はイギリスの大学院ですが、博士後期課程からはイギリス出身の学生がマイノリティになります。中国、インド、トルコ、サウジアラビア、ギリシャなど、母国の大学を首席で卒業した学生が一同に集い、日々プレッシャーにさらされつつ全力で研究を進めています。なぜ全力かというと、学生の大多数が教員の研究予算で雇用されているからです。つまり、成果を出せなければ学費を払えなくなって強制退学になります。非EU圏出身の学生に課せられる学費は非常に高く、なかなか払える金額ではありません。一部の学生は教員の求める基準を満たせず自腹で在籍しているようでしたが、その違いは傍から見て一目瞭然でした。研究グループ内で残酷な格差があります。中でも特に、中国とインド出身の学生の優秀さは圧倒的でした。両国ともに日本と人口が一桁違います。日本よりもずっと厳しい競争を勝ち抜いてきただけあって、潜在的な意識の違いを感じました。グローバルな土俵に立つとき、私は彼らと比べられることになる。この事実が私を一層研究に集中させました。

研究グループの中国出身のポスドクと一緒に食べた中華料理

イギリス・サウサンプトンにおけるシェアハウス探し

  • 住まい探し : シェアハウス

留学を始めてから住居を確定するのが特に大変でした。本来は留学を始める前に見つけておくのが望ましいですが、現地に頼れる人がいない、不動産業者にメールしてもすべて無視されてしまうなど事情のある方もいると思います。ここでサウサンプトン大学に研究留学する場合のシェアハウス探しの手順についてまとめておきます。

留学前までにした方がよいことは以下の三つあります。
1. 大学のメールアドレス (*soton.ac.uk) が交付されたらまずは大学の寮 (hall) に空きがないかメールで問い合わせてみてください。短期の客員研究員 (short term visiting academic) 向けにも貸し出してくれる場合があるようです。

2. 空きがなければ次はSASSHで探します。SASSHはサウサンプトン大学とサウサンプトンソレント大学が共同で運営している不動産紹介サービスです。民間の不動産業者と違って紹介手数料がかかりません。特に長期留学の場合はいい物件を見つけられると思います。

3. 夏の間(7月上旬から9月上旬)だけ留学する場合はサウサンプトンソレント大学の学生寮に格安で泊まれます。大学の公式ページからオンラインで申し込めます。

これら1から3の手順で物件を見つけられなかった場合は、現地に着いてから探すしかありません。City centreとPortswoodのあたりに不動産業者のオフィスが集中しています。メールは基本的に無視されるので、電話か直接訪問のどちらかが望ましいです。短期契約可能な物件は少ないですが、数をこなせば見つかると思います。契約書はサウサンプトン大学の事務に確認してもらうこともできます。

より詳しくはブログ記事にまとめてあります。もし興味があれば「サウサンプトン シェアハウス」で検索してみてください。

一つ目のシェアハウス
たまに壊れるシャワー

イギリスで国民保険サービスNHSの歯科診察を受ける方法

  • 生活 : 病院

留学中に親知らずが痛くなりました。加入している海外保険で歯科は保証対象外でしたが、なんとか国民保険サービス(National Health Service; NHS)の診察を受けることができました。以下にそのときの記録をまとめます。

イギリスには公的医療機関と私的医療機関があります。前者はNHSを通して利用でき、歯科と眼科を除いて原則無料です。後者は料金が高いので、保険などで支払いを代替するのが一般的だそうです。

大学に在籍している場合はまず保健管理センターに行ってみてください。簡単な診察であればその場で受けられる機関が多いようです。サウサンプトン大学の場合、歯科の診察は対象外でしたが、すぐNHSに登録してもらえました。

NHSを利用した歯科の診察予約は電話で行います。111に電話すると、住所・氏名・電話番号を聞かれます。NHSに登録されていることが確認されると、症状について詳しく聞かれます。私の場合は、緊急性の高い症状だと判断され、その日のうちに歯科治療を受けられました。ブログ記事などを検索すると、緊急性が低いと判断され、1年以上待たされたケースもあるようです。

より詳しくはブログ記事にまとめてあります。もし興味があれば「イギリス 親知らず 痛い」で検索してみてください。

Bootsで急ぎ買った痛み止めと塗り薬

これから留学へ行く人へのメッセージ

一般に研究留学をすると開始後数ヶ月は慣れるだけで精一杯なので短期的な成果は減ります。生活習慣の違いから身体を壊すこともあります。シェアハウスの同居人から差別されて悲しい思いをするかもしれません。留学期間中に他国で開催される国際会議への参加が規定で自腹になる可能性だってあります。にも関わらずなぜ留学するのか、心の底から信じられる何かを見つけて、有意義なものにしてください。