留学大図鑑 留学大図鑑

チンタオ

出身・在学高校:
甲陽学院高等学校
出身・在学校:
岡山大学
出身・在学学部学科:
医学部医学科
在籍企業・組織:


最終更新日:2018年07月23日 初回執筆日:2018年07月23日

医療とカネ

留学テーマ・分野:
大学生:交換・認定留学(日本の大学に在籍しながら現地単位取得を伴う留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • デブレツェン大学医学部付属病院
  • ハンガリー
  • デブレツェン
留学期間:
2か月
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 490,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<IELTS Academic module 6.5点> 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

2018年4月16日から2018年5月18日までハンガリーのデブレツェン大学病院へ、臨床実習という形で留学しました。留学先では、救急病棟・ICUと血液内科に所属していました。日本では医療費の増大が問題になっており、中でも検査費用が大きく増大していることについて疑問を持ち、先進機器の導入があまり進んでいないハンガリーで、日本と異なる診察法や技術がないかを探すこと、そしてそれを習得して持ち帰ることをテーマとしていました。留学中、毎日異なる患者について問診から診察までを行い、予想される鑑別疾患について教授とディスカッションし、治療を考える日々を送りました。

留学の動機

まず、日本では医学生は常に指導医の後ろに立って実習を行うので、あまり実践的なことができません。また、海外はEBMの本場であること、海外では身体診察からの鑑別という作業が非常に重視されていることを知ったからです。

成果

まず気づいたことは、医学の基本となる問診や身体診察の技術やメソッドはどこへ行っても変わらないということです。その場の検査機器の数など環境によって何にどれだけ重きを置くのかが検査への依存率を左右するのだと感じました。
また、医学を取り囲む経済事情に起因する金銭の受け渡しや栄養価の低い病院食を実際に目の当たりにし、医学を単なる理系の科目として学ぶことの愚かさに気づくことができました。

ついた力

適応力

5週間という短い間、ハンガリー語しか話せない患者には問診ができない状況でどのように仲間を作り助けてもらうのか、一人の実習ではどう対応するのか、学生として教授に認められるために必要とされるアティチュードは何か。短い時間の中で大きく事情の異なる環境に適応する力が付いたと思います。「痛い」というハンガリー語が分からず、お腹を指さしながらOK?と何度も患者に尋ねたのは今となってはいい思い出です。

今後の展望

とにかく現場を経験しようと思います。世界で活躍するために、基本となる技術をとにかく現場の経験で磨き上げる。その中で、医学英語も技術も、自分の将来の目標を達成するために必要な能力は実戦で養っていきたいと思います。
一人一人の患者や働く地域特性、患者の希望など、社会的側面にしっかり目を向けられるスポーツ医になります。

留学スケジュール

2018年
4月~
2018年
5月

ハンガリー(デブレツェン)

ICUでは、毎朝異なる患者を充てがわれ、問診と身体診察から鑑別疾患を論理的に考え、教授とディスカッションをする毎日でした。若い人であれば英語で、お年寄りであればハンガリー語での問診を余儀なくされました。海外ではまず疾患概念をしっかり理解し、それぞれのキーを押さえに行くのが通常で、自分の新しい勉強法が見つかりました。血液内科では、教授が受け持っている患者は全員担当し、より医療スタッフとしての働きが求められました。長期間入院する人も多い中、言葉の壁を挟んで信頼関係を築くことの難しさを知りました。日本ではありえないようなことも病院では普通に起きていたりと濃厚な経験ができました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

65,000 円

生活費:月額

50,000 円

血液内科を一緒に回ったイラク人とナイジェリア人。
小さな診療所のような病棟がいくつも並ぶ病院敷地内。
現地学園祭では日本料理は大人気でした!
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

65,000 円

生活費:月額

50,000 円

スペシャルエピソード

ココでしか得られなかった、貴重な学び

実習中、病棟では救急車や担架で運ばれてくる人を多く見かけました。もちろん患者さんには家族が付き添ってくるわけですが、日本ではご家族は医師や看護師などスタッフにお礼を言うのがいつもの光景でした。ですが、多くのご家族は、カバンからおもむろにお札を出したかと思うと、救急隊員や医師の服のポケットにそれをねじ込んだのでした。僕ははじめ、それがハンガリー流の感謝の気持ちの表し方なのだと思っていました。ですが、ハンガリーの医療事情を知っていくうちにそれが賄賂であったことを知りました。
医師の給料は毎月9万円から10万円で、学生が一人暮らしするのがやっとな額。患者はより質の高い医療をスピーディーに受けるために医療費のほかに賄賂を払い、医師は高い税金を逃れ生活を成り立たせるためにそれを受け取る。まるでサービス業と化した医療現場に僕は悲しさを覚えましたが、よい医療はよい経済の上に成り立つのだと思うと、社会を支える医療なのではなく社会に支えられている医療なのだということを痛感しました。

病院受付前。

言葉を使わない会話

  • 語学力 : その他の言語

基本的に患者さんはハンガリー語しかしゃべれない、というのが一番のネックでした。旧ソ連による教育主導の影響というのも大きかったと思います。一通り英語での診察などができるようにはしていましたが、全く通用しませんでした。

個人的に行った解決法としては、
1.挨拶はハンガリー語で!
何人であろうと挨拶はやはり欠かせないのでこれだけはスムーズに受け答えできるようにしていきました。向こうも留学生だとわかっていて、頑張ってハンガリー語で話してくれることに嫌な気持ちはないはず。日本から来ました、など簡単な自己紹介ができると喜んでくれる患者さんも多かったです。
2.ボディランゲージの多用。
身体診察では体のいろんなところを触りつつ、患者さんがその間にどういう感覚を得るかモ重要でした。特に痛いかどうかは重要だったので、「痛い」というハンガリー語を知る前は尋ねたい部分を指さして”OK?”と尋ねたりしていました。その分、知らない人の前で恥じらいを捨てる勇気もひつようでした。

留学前にやっておけばよかったこと

もっと口を使って英語の練習をすればよかったな、と思います。医学英語といった専門用語は聞いたり読んだりする分にはスラスラと内容が理解できるのですが、アウトプットするとなると全くでした。
言葉を自分のものにするには積極的に使って口になじませるのが一番だと痛感しました。

留学を勧める・勧めない理由

留学では考える力が付くと思います。留学中、自分に新しい武器をつけることも大事ですが、次々と直面する課題や困難に自分の持ち合わせた武器でどう立ち向かうかを考える機会は日本の数百倍だと思います。実際帰国すると今まで見えなかった問題やその答えを考えるのが速くなっている自分に気づくことができました。留学はそのチャンスだと思います。

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学で成功する人、失敗する人、色々います。中には失敗して後輩にそんな思いをしてほしくない、という意味を込めて進めない人もいると思います。僕は今回、挫折したまま留学を終えました。どんな試練や結果が待っていてもその経験こそが価値になると信じて僕は今暮らしています。人生一度きりと思って何事にも全力で、全身でぶつかって、楽しんできてください!