留学内容
私は将来学芸員になり、忘れ去られそうな「記憶」――出来事、当事者たちの経験や思いを残し、その教訓とその「記憶」そのものを若い世代や後世に引き継いでいきたいという目標がある。「記憶」を未来へ繋いでいくには具体的にどうしたらいいのかよりよい方法が知りたくて、第二次世界大戦後に街を市民の手で再現・復興したことで有名なポーランドの首都・ワルシャワに留学した。「記憶」を残すことに対する市民の意識が高いと思ったからである。ワルシャワ大学で、実際に「History, memory, trauma」という題目の講義を受けたり、ミュージアムに足を運び展示方法を分析したり、第二次世界大戦当時の記憶を持つ人たちや直接は経験していない同世代の若者たちにインタビュー調査を行なったりした。結果、私の予想に反して世代が下がるほどに「記憶」を残すことに対する意識は薄くなっていった。だが彼らはミュージアムという施設そのものには高い関心を示した。このことから、ミュージアムが市民に対して果たしている・果たしうる役割そのものを考え直すことで、ミュージアムそのものの在り方をもっと柔軟に考えることができるようになるのではないかと思うようになった。ミュージアムが「記憶」を引き継いでいくことに対してどういう役割を果たせるのか、修士論文の執筆を通して引き続き考えていきたい。