留学大図鑑 留学大図鑑

西薗みなみ

出身・在学高校:
樟南高等学校
出身・在学校:
鹿児島大学
出身・在学学部学科:
工学部先進工学科化学生命工学プログラム
在籍企業・組織:


最終更新日:2025年09月16日 初回執筆日:2025年09月16日

北欧アクティブラーニング×VR×化学

留学テーマ・分野:
海外インターンシップ
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • リンシェーピン大学理工学部, S:t Lars gymnasium授業サポートボランティア, Futuclassインターン
  • エストニア・スウェーデン
  • リンシェーピン・タリン・タルトゥ
留学期間:
10カ月
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,860,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

私は「北欧のアクティブラーニング × VR × 化学」という3つの要素を組み合わせた授業形態構築を通じて、日本の子どもたちに化学のワクワクを伝え、主体的な学びと深い思考力を育むICT活用教育の可能性を探求することを目的に留学しました。

具体的には、まずスウェーデンのリンシェーピン大学に6か月間交換留学し、その後リンシェーピン市内の高校(S:t Lars Gymnasium)で約1か月半、授業サポートのボランティアとして教育現場に参加しました。さらに、エストニアの化学VR教育コンテンツ企業(Futuclass)でインターンシップを行い、日本語版実装のための翻訳作業や、実際の教育現場での運用見学・機器使用の補助などにも携わりました。

留学の動機

今の教育の問題点は、知識が知恵に結びつかず思考力が育っていない点であると考えています。自分自身も知識を使って新たな考えを生み出すことを苦手としていました。その能力を学校教育で培う“アクティブラーニング”について深く知りたいと思うようになりました。
また、大学に進学しコンピューター上で分子を動かしたり多面的に見た経験からVRを用いた没入体験を使った化学教育に興味を持ちました。

成果

北欧のアクティブラーニング手法とVR教材を活用した化学教育の可能性を実践的に学び、日本の子どもたちに主体的・探究的な学びを促す指導法を構想できるようになりました。スウェーデンの大学・高校での教育体験やその他小学校見学などを経て、エストニアの化学VR教育企業で教材開発に参加し、ICTを活用した深い思考力育成や授業への具体的な導入法について理解を深めました。

ついた力

ヘルプシーキング、ネットワーク、情報収集力

まずヘルプシーキング力(助けを求めるスキル)は確実についたと思います。助けを求めなければどうにもならない場面が日本にいる時より格段に多かったからです。明確に何に困っていて何を求めているか伝えることは恥ずかしいことではなく、自分の目的を果たすためのスキルです。同様に力が付いたネットワーク力も併用して多くの人脈に助けやアイデアを求めることは、確実に次のステップに繋がります。

今後の展望

今後は、インターンで携わったコンテンツの翻訳が実装された後、鹿児島のDXハイスクールや離島でITを活用して町おこしに取り組む団体と連携し、実際に化学の授業を行いたいと考えています。さらに、修士課程に進学後も北欧で学んだアクティブラーニングやVR教育の知見を生かし、日本の教育現場におけるICT活用・探究的学びの可能性を引き続き探求していきたいと考えています。

留学スケジュール

2024年
9月~
2025年
3月

スウェーデン(リンシェーピン)

大学の協定校派遣を利用し、リンシェーピン大学に秋学期・春学期前半の合わせて7カ月間留学を行いました。
留学前は教育やIT関連の授業も受講を希望していましたが、履修条件や時間割の関係で履修が難しく自分の専門である化学や生物の授業を中心に受講しました。加えて、スウェーデン語の初級クラスも受講しました。
具体的に受講した授業は以下の通りです。
・Protein Chemistry:タンパク質化学
・Molecular Environmental Toxicology:分子環境毒物学
・Probability and Statistics, first course:確率・統計学(初級)
・Biological Measurements:生物学的測定
・Gene Technology:遺伝子工学
・Project Course, Chemical Biology:プロジェクトコース(化学生物学)
・Beginners Course in Swedish, level 1:スウェーデン語初級コース レベル1

実験やプレゼンなどチームやペアで行う活動が多く、私の取っていたクラスはほとんどがスウェーデン人だったため最初は不安でした。しかし、メンバーにやさしくスウェーデンでの大学生活について教えてもらいながら少しずつ慣れることが出来ました。スウェーデン語のクラスは交換留学を中心とした留学生が多いため、様々な国の友達を作ることが出来ました。
春学期は後半も授業を履修する予定でしたが、春学期後半に私が履修できる授業がないと留学中に大学から伝えられたため、4月からの在籍先を探すのに苦労しました。大学からの紹介で1度訪れた高校の日本語クラスでボランティアとして受け入れていただけることになり、4月からも住む場所は変えることなく活動を続けることが出来ました。

大学では教育について学ぶ機会・子どもと関わる機会がほとんどなかったため、リンシェーピンの教会少女合唱団に週1回ボランティアに通っていました。スウェーデンでの子どもとの関わり方、価値観についての学びは勿論貴重なものでしたが、それ以上に週1回子どもたちと会い歌うことで自分自身がとても救われました。

大学の学生寮で6~8人ほどで生活していました。個室にシャワーとトイレはあり、キッチンとリビングがシェアのタイプの寮でした。共用の部分はメンバーと清掃日と担当者を決めて清掃していました。ランドリーやサウナが敷地内にあり、管理会社が頻繁に管理・清掃してくださるので快適に過ごすことが出来ました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

60,000 円

生活費:月額

- 円

大学図書館:アプリで予約できるミーティングルームが便利
学生実験の様子
教会少女合唱団のミサ時の制服
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

60,000 円

生活費:月額

- 円

2025年
4月~
2025年
5月

スウェーデン(リンシェーピン)

S:t Lars gymnasiumというリンシェーピンの高校で一カ月半ほど日本語のクラスの授業サポートボランティアを行いました。
日本語での漫画制作の補助、日本の社会科の授業(日本史・地理)、日本の学校生活の紹介などを行いながら、スウェーデンの高校の授業構造や生徒の勉強に対する姿勢について知ることが出来ました。

日本の社会科の授業をした際にリアクションを収集したところ予想以上の反応がありました。
・山地と平地の割合のスウェーデンとの違いに驚いた
・日本の歴史の区分の仕方が気になった(縄文・弥生とはどのような意味か)
・アイヌや琉球など日本の民族集団についてもっと知りたい
・都道府県・県庁所在地を覚えなければいけないことに驚いた
生徒の授業に対する関心の高さ・鋭い視点に驚きました。

授業でのインプット・自学自習・プレゼンでのアウトプットのバランスが良く、日本にはない授業形態が興味深かったです。自学では疑問はすぐ質問し解決。プレゼンもとても上手で、スウェーデンの大学生のプレゼン作成・発表のスムーズさは高校時代からの経験の結果なのだと知ることが出来ました。

授業のない日に他に活動できる場所はないかと探した結果、DVなど様々な理由で自宅で暮らすことが出来なくなった女性を保護しているシェルターでガーデニング・庭掃除のボランティアを行うことが出来ることになりました。利用者の方と直接関わることは出来ませんでしたが、過ごしやすい庭を造るという点で支援が出来たのではと考えています。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

60,000 円

生活費:月額

- 円

高校のクラスの生徒たちと
漫画製作の授業風景
女性保護シェルターでのガーデニング
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

60,000 円

生活費:月額

- 円

2025年
5月~
2025年
6月

エストニア(タリン・タルトゥ)

エストニアに拠点を移し、Futuclassという化学・物理学習用VRソフトウェアを開発している企業で1カ月のインターンを行いました。
最初はスウェーデンでインターンを探していましたが、オンライン面接まで漕ぎつけても修士以上・VR開発技術など要求条件に合わず、ヨーロッパ全体まで探す範囲を広げました。トビタテのコミュニティを活かして歴史の学習用VRソフトウェアを開発している企業にアプライしたところ、添付した私のCVやプレゼン資料を見てFutuclassに繋いでいただき、結果受け入れが決まりました。

インターン先の方が1カ月10万円ほどでアパートの一室を貸してくださると言ってくださいましたが、旅行・移民難民関連のミートアップと何度もお世話になっていたトビタテOGのお宅に1か月間滞在させていただくことになりました。

業務は主に日本語の実装のための翻訳作業で、オンラインで仕事を行いました。VR機器も滞在先でも使えるようにと、会社から1台貸していただきました。その他の活動としては、Futuclassのコンテンツを使っている学校にVR機材を持って行って使用の補助をしたり、エストニアの化学教員に授業についての話を聞いたりしました。VRを実際にどのように授業に活用しているのか知り、さらにどのような機能や授業の工夫があればさらに効果的か模索する機会となりました。

活動の他にもエストニアの大学院に通っている日本人との交流や、ミートアップで会ったメンバーと再開し夏至祭を一緒にお祝いしたりとエストニアの文化にも触れることが出来ました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

VRを使った化学の理解度テスト
インターン先の方と
ステイ先の猫
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

この国のことが、とても好きになった瞬間

スウェーデンで外国人としてありがたかったのは、英語が子供からお年寄りまで話せること・フラットな視点です。

留学が開始して間もないころ、スーパーのお肉コーナーで翻訳のカメラを通してお肉を見ているとスウェーデン語で高齢の女性に話しかけられました。私が「すみません。スウェーデン語話せないんです...。」と英語で言うと、瞬時に英語に切り替えて「今日安売りの肉はこれかな?知ってる?」と尋ねてきました。私は勿論分からなかったので、2人で店員さんを探して尋ねました。高齢の方の流暢な英語に驚くとともに、外国人に対する視点がとてもフラットなのだと感じて嬉しかった瞬間でした。

ボランティアの説明会に行ったときも、スライドの写真を撮って翻訳をスマホでしていると、隣に高齢の男性が席を移ってきて「もしよければ、スウェーデン語を隣で全部英語に翻訳しましょうか。」といって英語で説明をしてくださいました。

週1回半年間行っていた教会少女合唱団のボランティアでは、小学生の子供たちは英語で私に話してくれて、私のたどたどしいスウェーデン語も根気強く聞いてくれました。スウェーデン語で「私はシナモンロールが好きです。」と言ったのを覚えてくれていたのか、ミサの後のFikaでシナモンロールが出たときには、みんなで私を呼びに来てくれました。

とても優しく温かい大好きな国です。

合唱団の子供たちとクリスマスオーナメント作り
ボランティア説明会のカフェ(元教会)
通った寮近くのスーパー

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

協定校派遣が始まった頃、私は大学の授業についていけない+慣れないスウェーデンでの学生生活に行き詰っていました。

そんな時ペア活動をいつも一緒にしてくれて、ラボプロジェクトなど大きなグループで活動するときも仲間に入れてくれる友達が一人出来ました。彼女は私より少しお姉さんで、教室の場所・提出物の提出方法・レポートの書き方の決まり・ミーティングルームの予約方法などスウェーデンの学校生活に必要なことの全てを教えてくれました。
私とペアになることでスウェーデン人と組むより確実に労力はかかっていたはずなのに、嫌な顔をせずに「あなたはとても頑張ってる。」「大丈夫。今度はこれをやってみよう。」と励ましながら一緒にいてくれて感謝してもしきれません。

彼女がいなければ大学での思い出はもっと苦しい思い出ばかりになっていたと思います。いつかまたスウェーデンで彼女に会ってあの時の感謝を改めて直接伝えられたらいいな...と思っています。

留学を支えた友達・Fika・エナジードリンク...
ドキドキの学生実験

笑いあり、涙あり!留学中にあった、すごいエピソード

派遣留学終盤、インターン先がなかなか決まらない&授業が難しく苦労&大学の在籍期間が急に短縮&暗く寒い冬...、様々なことを原因として精神的に参ってしまいました。何も出来なくなり一緒に暮らしているシェアメイトとすら話せない状態になり、ひたすら部屋に閉じこもっていました。

夜中2時眠れず涙を流しながら当日の日本行のチケットを購入。バスの始発の6時ごろリュック一つで寮を飛び出し、何も家族に言わないままスウェーデンから鹿児島の自宅の玄関にたどり着いてしまいました。
インターホンを鳴らすとカメラに写る私を見て真っ青になって飛び出してきた母、目を丸くして顔を出した妹、奥でうろたえる父。

どんな顔で会えばいいか分からなくなっていた私でしたが、その光景を見て笑ってしまい「帰ってきちゃった!」と笑顔で言うことが出来ました。

一週間弱日本に滞在し、大学に休学届を提出(協定校在籍期間変更のため)することもでき、前期分の授業料をカット。結果的に有意義な一時帰国にすることが出来ました。元々母が私の帰国の一週間後スウェーデンに来る予定だったため、同じ飛行機を取り一緒にスウェーデンに戻りました。

一時帰国①妹が連れて行ってくれたお店
一時帰国②妹が買ってきてくれたさつま揚げ
一時帰国③母と出国前に両国で食べたちゃんこ鍋

CV・資料を作りこむ

  • 留学先探し : インターンシップ

私は最後までインターンシップの受け入れ先が決まらず苦労しました。
色々と試した中で効果的だったのは
①CV・資料を作りこむ
②メールタイトルだけでも現地の言葉で書く
③メールを送る時間を気にする
④コミュニティの繋がりを利用する
です。全くつながりのない外国人がメールを送ってきても情報が少ないとどんな人物か分かりません。CVや自分自身がどういう留学目的でヨーロッパに来ているのか分かる資料をメールに添付し興味を持ってもらえるように工夫をしていました。
また、メールボックスの中で英語で書いたタイトルより現地語の方がチェックをしてもらえる可能性が上がります。AIや翻訳サイトを利用してタイトルだけでも現地語にするのをお勧めします。
また、週末の夜にメールを送ってもメールが読まれる週明けには埋まってしまっていて読まれないかもしれません。平日の昼頃に送るなど時間も気にすると返信がある可能性が上がります。
もしトビタテを始めとした繋がりを利用できるのであれば受け入れ側も見知らぬ人を受け入れるより安心して受け入れてもらえます。困ったことがあれば早めにヘルプを投げて、情報が引っかからないかアンテナを張ることをお勧めします。

タリン、エストニア

これから留学へ行く人へのメッセージ

楽しみなこと・不安なこと沢山あると思います。
バスで出会ったイラン人のおじいちゃんの言葉を置いておきます
「人間は人間。それだけは忘れちゃいけない。」
言葉・文化・価値観が違っても同じ人間です。追い込まれた時・行き詰った時は簡単なことに立ち返ってみてください。
皆さんの留学を応援しています!