留学内容
ヘルシンキの建築設計事務所で一年間インターンとして働いてきた。月に一度のペースで新しいプロジェクトを任され、小さいものでは家具のデザイン、大きいものではヘルシンキ港の再開発計画の提案などを行った。事務所内での仕事の回し方が特徴的でありプロジェクトの始めは、かなり漠然とした題を与えられ、「遊んでみろ」という指示が出る。課題に対して自分なりの捉え方を模索するため、分析する時間が与えられるのだ。勤務時間内容等は基本的に自由だが、プレゼンやミーティングの手ごたえによって次の題を決めているようで、一所員であっても主体的に仕事を進めていける環境が整っていた。他業者との摩擦や理解のギャップを減らし、社員の仕事効率を上げるため常に先進的なソフトやサービスを導入。各々の家族や友人、ペットまでもがオフィスに訪れくつろいでいる様子を見て驚愕した。仕事は生きるためのものであり、彼らは文字通り生き生きと働いていたのだ。今日の日本では、労働環境の劣悪さが叫ばているが、そもそも「働く」ことの意義や本質を理解し、生きることに対する真摯さを尊重した社会においては、仕事か暮らしかのどちらかを選ぶというような問いは生まれないのかもしれない。人々の価値観と働く場、そこから生まれる成果物と社会への還元、それぞれが連関した大きなサイクルを理解したうえで今、働く場というものこそ、日本における重要な課題だと思われる。