留学大図鑑 留学大図鑑

Tai

出身・在学高校:
一宮西高等学校
出身・在学校:
横浜国立大学大学院
出身・在学学部学科:
Y-GSA
在籍企業・組織:

・フィンランドはヘルシンキの建築設計事務所で働いていました。
・社会における働くことの意義や捉えられ方の違いや、人々の「働く場」がどのように作られ成果が社会に還元されるのかに、建築家として興味を持ち活動していました。
・将来海外での就職を考えているので、ぜひ興味がある方々とお話しできればと思っております。


最終更新日:2019年10月15日 初回執筆日:2019年10月15日

「働くこと」の本質を探る

留学テーマ・分野:
海外インターンシップ
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • Casagrande Laboratory
  • フィンランド
  • ヘルシンキ
留学期間:
10か月
総費用:
2,000,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,600,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 挨拶など基本的な会話ができるレベル 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

ヘルシンキの建築設計事務所で一年間インターンとして働いてきた。月に一度のペースで新しいプロジェクトを任され、小さいものでは家具のデザイン、大きいものではヘルシンキ港の再開発計画の提案などを行った。事務所内での仕事の回し方が特徴的でありプロジェクトの始めは、かなり漠然とした題を与えられ、「遊んでみろ」という指示が出る。課題に対して自分なりの捉え方を模索するため、分析する時間が与えられるのだ。勤務時間内容等は基本的に自由だが、プレゼンやミーティングの手ごたえによって次の題を決めているようで、一所員であっても主体的に仕事を進めていける環境が整っていた。他業者との摩擦や理解のギャップを減らし、社員の仕事効率を上げるため常に先進的なソフトやサービスを導入。各々の家族や友人、ペットまでもがオフィスに訪れくつろいでいる様子を見て驚愕した。仕事は生きるためのものであり、彼らは文字通り生き生きと働いていたのだ。今日の日本では、労働環境の劣悪さが叫ばているが、そもそも「働く」ことの意義や本質を理解し、生きることに対する真摯さを尊重した社会においては、仕事か暮らしかのどちらかを選ぶというような問いは生まれないのかもしれない。人々の価値観と働く場、そこから生まれる成果物と社会への還元、それぞれが連関した大きなサイクルを理解したうえで今、働く場というものこそ、日本における重要な課題だと思われる。

留学の動機

建築を基盤とし、働くことと暮らすことを等しく扱い、個々の経験が活かされる組織を作ろうと考えています。学校では、自分自身を含む社会に対して、批評的な視点や切り口を持った設計の大切さを学んでいますが、 建築家として働くことの本質は十分に触れられていないと感じます。つくるものだけでなく、働き方自体新しさを持った建築事務所は日本よりも海外に多く、そこで実際に働く必要があると思い、留学を決めました。

成果

よく働くこと、良い暮らしをすること。この二つは、合理的な社会においては、同義であるべき事柄だった。フィンランドに特有な平等性、誰もが自分の意見を持ち共有しうることのできる基盤というのは、そのような合理的な社会に生きようとする人々のあらわれであった。また、ひと月に一度のペースで新しいプロジェクトに携わることが出来た。どれもとても個性の強い良い経験になり、経歴として示すことのできる実作が増えた。

ついた力

思想力

今いる状況から得られる情報や学びを、捉え直し、意味づけし、最大化させて自分に還元させる力がついたと思う。日々をどうやって生きるか、自ら選択していくことが何よりも自分の成長に必要なことだと知った。専門分野において価値のあるものを生み出すことと、日々何を食べ、どこに住み、誰と話すかなど、日々の何気ないことは、互いに同じ連続の中にある自分を形成していくもの一つだという考えを得た。

今後の展望

これからの社会、どう働きたいかを自分たちに問い直す”場”を立ちあげる予定である。第一回目の活動としては、海外建築事務所でのインターンを経験してきた学生たち同士での座談会を行う。聴講者も含めそれぞれの立場からの意見というものを尊重することで、場自体が今の日本における、建築を学ぶ、もしくは始める時代の様相を表すものとなると考えている。活動を続ける中で、卒業後の身の振り方を考えていきたい。

留学スケジュール

2018年
10月~
2019年
8月

フィンランド(ヘルシンキ)

具体的な設計内容一覧 1.個人邸宅用サウナ設計 2.☆新居住地域の配置・外構並びにコモンサウナ設計 3.★高校の実務研修の担当 3.CLT を用いた難民向けモジュールハウスの設計 4.☆ソマリア戦災地域への輸送用モジュールハウスのプロポーザル 5 ★.都市漂流型展覧会(Nomadic Exibition)のトータルデザイン 6.★港湾地域の環境適応型居住空間への再開発プロ ポーザル(Helsinki Paracity) 7.★TV番組Big Brother Suomiの内装設計 8.☆Soulmade Hotel デザインコンペティショ ン 9.★ライブハウス(Glive Lab)のインテリア設計 10.療養地における企業向けサテライトオフィスの設計

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

オフィスでピクニック
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

フラットメイトの一人で同い年のロシア人がいた。  彼は、自身が不自由な経験をした体験から新しい教育の仕組みを確立しようと ヘルシンキで起業しており、私の一番の親友でもある。彼とは幾度もキャンプに出掛け、様々な場所で語らいながら夜を明かしたのだ が、そのなかでも最も印象深い経験は、冬の最も厳しい頃、自分がプロジェクト で行き詰まっていた時に、森の中にある湖へ行こうと誘われた時のことだ。その時期、日はほとんど沈まないので、森の中、生き物の音が遠のいていくの が夜の訪れを知る唯一の手掛かりであった。雪がひらひらと舞い始めたとき、儚い音を立て、水面に消えていく白い影を、 かがり火のそばでじっと眺めていた。言葉もなく一時間ほどたった後、彼は幼少期にADHDを患い、その中で周囲 の期待に沿うように自分を押し殺すことに必死だったそうだ。しかし、この国にきて様々な人と出会ううちに、その行為がとても悲しいことだったと気づき、事業を始めたんだと、思いを語ってくれた。その時自分は、人が自分らしくいられる国に来てるんだと感動した。それから は、肩の荷が下りたように、自分にできることは何なのかを落ち着いて考えられ るようになった

雪の降る森の中で

人との繋がりを作り、生きる

  • 住まい探し : シェアハウス

ヘルシンキでは郊外や他の欧州地域からの移民により住居不足が深刻化している。家賃の相場も驚くほど高く、特にサポートを受けられない非学生の若者たちは住み家を探すのにとても苦労している。日本からSNSを通して手配していた部屋は、コミュニケーションの齟齬か生じたのか想像よりもはるかに劣悪で、家具はおろか電灯さえ無い状態だった。翌日、会社の同僚と仲良くなり、住む場所についての話をしたところ、彼の暮らしている場所を紹介してくれた。なんて運のいいことだと喜び勇んで行ってみると、そこは家ではなく港に停泊している夏季旅客船の一室という驚くべき展開が待ち受けていた。寒く不便ではあったが、仲間や思い出がたくさんでき、楽しい日々の中で語学力も向上し、暮らしの知恵が増えていった。彼らを通じて移った次の住居では、連日パーティが行われる日本じゃ不可能な程に賑やかなシェアハウスであったが、日々同居人の異国人達を理解し、暮らしに適応していく中で、文化の差や偏見等がみるみるなくなっていった。国を去る時期が近づくころには、どこにでも自分の居場所があり、また、つくることが出来るという自信がついていた。日本にいると、人とのつながりによって生かされるという実感が手に入りにくいかもしれないが、留学においては周りに人がおり、彼らに感謝して生きるということが生きていくのに必須であるといえるだろう。そうした人とのつながりの中にこと、学ぶことのできる本質的なものがたくさんあるということが実感できたのだった

シェアハウス、みんなで朝ご飯

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学中、賞や資格など客観的に明示できるものがない自分に、ここまで投資をする意図とは一体何なのかを模索していた。ふと、それを自分で見つけ出せるような人間を生み出すことが、この組織の意図ではないかと気が付いた。「自身に価値がある事」を前提とし、その価値を自分で見つけ出すことが留学の価値であり、今自分が生きている環境を俯瞰して眺め、自分がどこに行こうとし、どこに行きたいのかを考える時間なのだと思います。