留学大図鑑 留学大図鑑

荻野 紗

出身・在学高校:
出身・在学校:
東京藝術大学大学院
出身・在学学部学科:
美術研究科建築専攻
在籍企業・組織:
某テレビ局

ヨーロッパ中の建築を見に行ってきました。また、留学の最中に日本での就職活動も重なり大苦労。何とか内定をいただき来年からテレビ局で念願の映像デザインの仕事に就きます。留学の諸々はトビタテ生で始めたブログにまとめてあるので、まずは覗いてみてください。個別の相談も、返信遅いかもしれませんが返信します~


最終更新日:2023年03月27日 初回執筆日:2023年03月27日

陶芸×建築でヨーロッパ中へ!

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • ミラノ工科大学+Genuine Education Network(GEN)
  • イタリア
  • ミラノ
留学期間:
9カ月
総費用:
1,409,294円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 160,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 挨拶など基本的な会話ができるレベル<EFテスト B2レベル> 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

「陶芸×建築」をテーマに、イタリアのミラノへ留学しました。具体的には1セメスター(6カ月)をミラノ工科大学にて学び、その後3カ月間をかけて主にイタリアを中心にヨーロッパ中の陶芸産地や建築の名所を周る旅を行い、現地で実測調査等を行いました。陶芸はその土地の土や釉薬、窯の構法などで様々な地域差を持っています。私が元々興味を持っていた「建築家なしの建築」や「ヴァナキュラー建築(その土地固有の建築)」の在り方を、各地域の陶芸を読み解くことからヒントを得られないかというのが研究の目標でした。特に留学後半でのフィールドワークでは、たっぷりと時間をかけて各都市を周り、現地の人や風土に触れながら土着の建築を図面に残すことができました。イタリアと一言で言っても、ミラノ人とシチリア人はまったく別の文化を持っていること、それらの人々の気質の違いが建築や街並みにカタチとして表れていることを発見できたのは、私にとって大きな成果でした。

留学の動機

本音を言えば、コロナ禍で制作がままならない毎日から飛び出したかったからです。東京の小さなアパートでこのままオンライン授業を受けていても卒業設計なんてできない!という気持ちの中で、どうせ休学するなら留学してみよう、最初はそんな思いつきがきっかけでした。そこから元々やっていた陶芸と建築のリサーチに適した国はないか調べ始め、日本と同じく南北に長い敷地を持つイタリアで調査をしようと決めました。

成果

留学とは、学ぶことはもちろん、なにより日本以外の国に住む住民になることです。英語を話せないシェアメイトから「英語はやめて、ここはイタリアだから」と言われることも。日本とは違って行政もだらしないので、遠慮していたら何も進みません。文化の違いを楽しみつつも、おかしいときにはちゃんと抗議する、わからないときに手を挙げる、「うまくやれない自分」を認める経験は器用貧乏な私にとって大切な学びになりました。

ついた力

ここまでやったんだから力

コロナ禍での留学は飛ぶまでが大変でした。最初は思いつきだった留学がいつしか絶対に実行したい目標になり、毎週大学の事務で説得を繰り返す日々。トビタテ生の助けも借りつつ情報交換をし何とか渡航許可を取り日本を飛び立った日は、まだ何もやり遂げていないのに謎の達成感。その後もあの苦労を無駄にしまいと、一日も無駄にしないよう研究に勤しみました。おかげでかなりの物量の成果と図面を日本に持ち帰ることができました。

今後の展望

今後は映像の世界で、架空の世界を設計する人間になりたいと思っています。
日本にいると当たり前に見えている景色も、留学を経て帰ってくるととてもユニークに見えることがあると思います。同じように、人間界にいると当たり前で見過ごしてしまっているものを、もう一度面白がれるような、そんな都市へのまなざしのきっかけになるような空間をいつか設計したいです。

留学スケジュール

2021年
9月~
2022年
2月

イタリア(ミラノ)

最初の半年はイタリアのミラノ工科大学に所属し、主に建築理論や建築民族史などを中心に学びました。実は履修期間に出遅れ人気のスタジオをとれないという大失敗も。しかし、日本では座学と呼ばれるタイプの授業であっても積極的なディスカッションやグループでの設計課題があり、スタジオほどタフではないけれど、ほどほど忙しい程度の生活を送ることができました。グループでの制作では留学生も正規生もごちゃまぜになり、図面やドローイング、模型製作を行いました。制作を通してそれぞれの国の建築教育や建築への考え方がわかり、いい意味で自分だったら作らないものができたことが成果でした。授業のない日は少し遠出してヴェネチアやドイツに行ったり、ミラノの教会をめぐったりして過ごしていました。毎週末は大学の友人とカードゲームナイトを開催し、拙い英語ながら楽しい時間も過ごしました。
家は大学から自転車で5分程度のLoretoにあるシェアハウスで、シチリアから来た生粋のイタリア人と二人暮らしをしていました。英語も話せず、終始ママと電話するか大音量でスマホをいじってリビングに寝転がる彼との生活は色々大変でしたが笑、同時に自分自身当たり前と思っていたことを自覚することができたのは経験としては必要だった、と今は思うことができるようになってきました…。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

75,000 円

生活費:月額

30,000 円

友達とイベントに参加しミラノの街を走り回り2位でゴールした時
毎週末のカードゲーム、この時は人狼のクライマックス
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

75,000 円

生活費:月額

30,000 円

2022年
3月~
2022年
5月

イタリア(イタリアの小都市29か所)

Genuine Education Network / JINOWA Consortiumに所属し、イタリアの小さな陶芸産地を巡る調査を行いました。特にアクセスが難しいイタリア中部の陶芸産地は、イタリアで活躍されている陶芸家の林由紀子さんにアポイントを取り、現地の陶芸工房や民家を実測記録させていただきました。イタリアの郊外は英語話者が少ないのですが、林さんのサポートのおかげで実際に陶芸家の方のお話や暮らしを理解することができたのはとても大きな学びになりました。私がもっとイタリア語が話せたら!と後悔する気持ちもありつつ、当時は英語だけでいっぱいいっぱいだったなとも思い返したりします。
また、陶芸産地の合間をぬってヨーロッパの都市を巡り、名建築を見たり実測したりする日々を送りました。
この時期はミラノの家は解約し、3カ月ほどドミトリーを点々としながら調査をしていました。ドミトリーには世界中いろんな人が集まり、リビングでは毎日会話があります。長期滞在する都市では友人もでき、今でもSNSで連絡を取り合う仲です。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

30,000 円

項目:移動費・宿泊費

600,000 円

アテンドしていただいた家のマンマとお別れの時
実際に名建築に泊まって描いた実測図面
偶然ドミトリーで同室だった4人でおでかけ
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

30,000 円

項目:移動費・宿泊費

600,000 円

スペシャルエピソード

留学中にやってしまった、私の失敗談

ドイツにあるズントー設計の教会に行ったときのこと。ものすごい僻地なのであらかじめ帰りのタクシーを予約して出発したけど、待てど暮らせどタクシーが来ない!
段々日も暮れ始め、あぁ今日はここで寝るのかと諦めかけたとき、同じく建築を見に来ていただろうドイツの夫婦が声をかけてくれました。それだけでなく、事情を知った彼らは近くの民家まで一緒に来てくれて、ドイツ語で熱心に説明してくれたのです。
おかげで住民のお姉さんの車で片道30分の駅まで送ってもらうことができました。お姉さんも私もカタコト英語ながら楽しく会話し、最後に「元々タクシーに払うつもりだったから」とお礼のお金を渡そうとすると「お金はいらないよ。それよりあなたはアーティストなんだよね?せっかくだからあなたの絵が見てみたい!」と粋な回答。ドイツ旅行初日にしてすっかりドイツが大好きになった日でした。

こんなところで一晩は、怖い!
後日お姉さん宛てにお礼の手紙を出しました

笑いあり、涙あり!留学中にあった、すごいエピソード

英語が話せないシチリア人の男性との2人暮らしで、「自由」の意味の違いを感じたお話。

彼はナンパな男で、出会って2日で「僕の部屋に来ないか、ベッドで待っている」とメッセージが来たので、なんとなく毎晩個室の鍵を閉めて眠っていました。
そんなある日彼から、「どうして部屋の鍵を閉めるんだ!君はいつでも僕の部屋に来ていい。だから君も鍵を閉めないで。僕らは自由なんだよ!」と熱弁。
私もDeepLを使って翻訳しながら、「なるほど。では私も自由なので、鍵を閉めます。」と送るも、永遠と一方通行の会話に。

彼らの感覚では「自由」だから、電車の中で電話をしたり、公園でカラオケをはじめてもOK。
私の感覚では「自由」だから、歌を聞きたくない人の「聞かない自由」や、プライバシーを守りたい人の「ドアを閉める自由」も守りたい。

それぞれの国の「自由」の定義のすれ違いに気付いて、彼の「自由」をほんの少し許せるようになった日でした。

慣れない料理でパスタを水で洗おうとするシェアメイト

現金は小額のみ、カードは複数枚使えるものを!

  • 生活 : お金

イタリア周遊中、ジェノバでチケットを買おうとしたらカードが通らない。急いで問い合わせてみるとどうやらカードが上限額に達した模様。
スリが多いイタリアでは現金を持っているのはとても危険なので財布には数ユーロ、次にカードが使えるのは1週間後。
一瞬絶望したのちふと、大家さんからデポジットを返してもらった時の500€紙幣1枚の存在を思い出す。約7万円の紙幣を崩せる場所もなくずっと持ち歩いていたけれど、とうとうこれを使う時が来た。決して治安のよくないジェノバで、移民たちの間をすり抜け、マーケットの主人にこっそり「両替できますか…?」と相談。初めは100€紙幣と持ち掛け、ちゃんと交換してくれそうかお札を確認して、「実は500€なんだけど…」と白状するとこころよく分けてくれた。お礼に少し多めのチップを渡して、札束を服の奥深くのセキュリティポーチに隠しながら、尾行されていないか何度も振り返ってドミトリーまで帰ったあのスリルは、もう一生味わいたくありません…。みなさんもカードの上限額には気を付けて!

ちなみに私は渡航時3枚カードを持っていきましたが、イタリアで使えたのは1枚だけでした。原因不明なまま放置したのも今回の失敗、使えなかった時はめんどくさがらずカード会社に確認しましょう。

ジェノバとナポリはイタリアの中でももっとも治安が悪い雰囲気

留学前にやっておけばよかったこと

外国語についても日本という国についても可能な限り知識があった方がよいですが、どこまでやれば大丈夫というラインはありません。裏を返せば、知識不足に関する不安は留学を躊躇する理由にはならないということです。
もっとも、渡航前ネイティブ英会話を毎日必死にやった私ですが、現地のイタリア語訛りの英語はまったく別物でした笑。何事も気構え過ぎずに続けられるペースで始めるのがおすすめ◎

留学を勧める・勧めない理由

留学を勧める大きな理由として、自分のことを知れるという点があります。例えば電車で大声で電話をする人が気になったり、自分がした親切が親切で返ってこないことに少しいら立ったりするたびに、「自分って案外図々しい性格だったんだな」「おおざっぱと言われてきたけれど、世界規模でみると神経質なのかも」と発見がありました。自分でも自覚していない日本人的な自分に出会えたのはとても面白い体験でした。

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学ってキラキラして華やかに見えるかもしれないですが、実際は地味で孤独な日々がほとんどです。周りや先輩と比べてうまくやれていないかもと落ち込む日もあるかもしれませんが、みんなの輪の真ん中で流暢に英語を話すあの人も、机にかじりついて単語帳を覚えた日々があるかも。
そして留学生活は日本にいるよりずっと長く感じます。アクセルを踏みすぎず、周りを見すぎずに自分らしいペースで楽しんできてほしいと思います。