留学大図鑑 留学大図鑑

児玉 幸斗

出身・在学高校:
大館鳳鳴高等学校
出身・在学校:
東北大学
出身・在学学部学科:
工学部機械知能航空工学科航空宇宙コース
在籍企業・組織:

フィンランド留学やアアルト大学などについての情報や、Aaltoesをはじめとするフィンランドのスタートアップエコシステムについて共有できます。


最終更新日:2024年09月18日 初回執筆日:2024年09月18日

SFの実現に向けプロダクト開発を学ぶ

留学テーマ・分野:
大学生:交換・認定留学(日本の大学に在籍しながら現地単位取得を伴う留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • アアルト大学機械工学科、応用物理学科
  • フィンランド
  • エスポー
留学期間:
11か月
総費用:
2,500,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 910,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル<英検準1級、TOEFL iBT 76点> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

私の留学全体のテーマは、「プロトタイピングをはじめとするプロダクト開発の手法を実践的に学ぶ」ことです。このテーマのもと、私はフィンランドのアアルト大学で①プロダクト開発と②スタートアップエコシステムを学びました。
 まず、アアルト大学には、「Product Development Project (PDP)」という実践的な製品開発のPBL型の授業があります。PDPでは、1年間、1万€の予算の元、企業と連携してプロダクトの開発を行います。私のチームは、生分解性の素材の研究及び生産を行うスタートアップと協力し、その素材を用いた靴のインソールの開発を行いました。
 また、アントレプレナーシップに関しては、「Startup Experience」という起業に向けた準備を経験できる授業を受講したり、Aaltoesというアントレプレナーシップコミュニティのイベントやプログラムに参加したりしました。日本の1/20にも満たない人口を持つフィンランドは、学生によるボトムアップの支援、そして失敗も経験と捉え挑戦し続ける文化によってそのエコシステムが構築されている事を実感しました。

留学の動機

私は宇宙エレベーターの実現を目指しており、その要素技術である自走式昇降機を産業に応用するプロジェクトを進めてきました。留学後にはこれを起業と連携しプロダクトとすることを目指し留学を決めました。また、今後の宇宙開発には複数の専門性が求められ、開発スピードも速まると予想されます。そのため、アプリ開発などで用いられるプロトタイピング型のアプローチを学び、実践したいと考えたことも留学の動機です。

成果

製品開発に関しては、B2Bかつハードウェア、Deep Techの製品の開発手法だけでなく、企業との連携の形についても経験できました。アントレ関係に関しては、数多くのボランティアやインキュベーションプログラムへの参加を通して、学習&経験としての起業へのモチベーションを高めることができました。精神面では、まず飛び込んでみる積極性、主体性、そして他人と比較せずに自分は自分と割り切る力が身につきました。

ついた力

飛び込み力

"Dare to Dive" が私の留学中の行動指針でした。1年という限られた期間だからこそ、異文化、アウェイな空間、経験したことがないことにも積極的に飛び込みました。具体的には、スタートアップの授業で最年少ながらリーダーを務めたり、学生が自分以外にいないカンファレンスで参加者に積極的にインタビューをしたりしました。そうすることで失敗しても経験になるという考えを自然に身につけることができました。

今後の展望

毎日英語に触れること、周りの目を気にせずに新しいことに挑戦し続けること、自分から行動することは毎日の習慣としたいと考えています。長期的な視点では、ロープ自走式昇降機を応用させる産業を適切に選び、企業と連携しながら開発を行っていく予定です。最終的には世界に進出できるスタートアップの立ち上げを目標としたいと思います。

留学スケジュール

2023年
8月~
2024年
7月

フィンランド(エスポー)

アアルト大学の機械工学科の学部生として、プロダクト開発やアントレプレナーシップについての授業の受講、およびスタートアップイベントのボランティア、インキュベーションプログラムなどの参加をしました。
【受講した授業】
・製品の分析の手法を学ぶ授業
・メカトロニクスの授業
・イノベーションを起こすためのプロトタイピングの授業
・積層造形のプロジェクト型の授業
・製品開発を行うプロジェクト型の授業
・スタートアップの立ち上げを経験する授業
・スタートアップの基礎知識を学ぶプロジェクト型の授業
・デザイン思考の授業
・フィンランド語の授業
【ボランティア活動】
・Junction(ハッカソン)
・Slush(スタートアップのイベント)
【インキュベーションプログラム】
・Aalto Digital Creatives Program 参加
・Kiuas Bootcamp 参加
・Ignite 応募
【生活】
・3か月間ホステルに滞在
・その後8か月間、フィンランド人の家族とホームステイ
【その他】
・洋上風力発電の見学
・洋上風力発電のカンファレンスに参加し、アイデアに対してのフィードバックを得る

①留学中の経験とそこから得た気づき
・9月~11月:英語でのディスカッションについていけない経験→完璧に話すことを諦め、とりあえずやってみる、ということを1年間続けた。
・1月~4月:Startup Experienceで10回以上インタビュー→プロダクト開発においてインタビィーはテーマに対する客観的なイメージをもち、チーム全員で同じ目線に立つために重要であることを学んだ。
②異文化体験からの学び
・11月:ハッカソン「JUNCTION」のボランティアで、指示をただ待っており受動的な姿勢になっていたことを反省。
・12月:東大生×Aalto大学生のアントレ交流イベントを主催。その際、Aaltoes(アントレプレナーシップコミュニティ)の方ℊあ協力してくれたが、私に任せてくれる裁量が大きかった。フィンランドは経験や学びを重要視することを実感した。
・5月:洋上風力発電のカンファレンスに参加し、5人以上にインタビューをした。対等な立場でフィードバックを得ることができた。
・6月:ホストファミリーのサマーコテージで数日過ごした。電気も水も無い中で、その不便さを楽しんでいることが印象的だった。
③自己成長のきっかけ
・2月~4月:Startup Experienceのリーダーを務めた。私が最年少だったが、年齢は関係ないと実感した。メンバーの意見を聞いて、柔軟に決定することがリーダーの役割であることを学んだ。
・授業のプロジェクトで、どうやって自分が貢献できるかわからず苦労した。しかしハッタリをかけ、文書化やビジネス開発を積極的に引っ張った。結局意外とみんなもそうやってスキルを身につけていることを後で知った。
④前提・水準を変えた情景
・ハッカソンでのアイデアから数か月で企業した学生が、「技術もアイデアもあるなら、挑戦しない理由がない。失敗も経験だし。」と言っていたのが印象に残っている。
・ホームステイを通して、小さなことにも目を向け、幸せを実感すること、また、周りの目を気にせずに自分がやりたいことをやることの重要性を学んだ。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

100,000 円

生活費:月額

60,000 円

1年間の製品開発の成果を発表するデモデイでの写真。
Startup Experienceのチーム。
ホストファミリーのサマーコテージに行った時の写真!
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

100,000 円

生活費:月額

60,000 円

2024年
6月~
2024年
7月

フィンランド(エスポー)

アアルト大学応用物理学科のリサーチアシスタントとして、1年間の製品開発プロジェクト「PDP」での開発を夏休みの期間も続けていた。
私たちは生分解性のインソールの開発をしていた。この2か月間は、
・素材の固さを増す
・スタートアップの立ち上げに向けた準備をする
・パイロットプロジェクトに向けた準備をする
ことに時間を費やした。
特にビジネス開発については私がリーダーとして積極的に活動した。結局ステークホルダー同士の関係構築に時間がかかり、留学中の起業は叶わなかったが、B2Bの製品開発の手法を実際に学ぶことができたことは大きな成果である。
【参加したプログラム】
・Nexus 参加
・GAEA regional pitching competition 2nd prize 獲得

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

100,000 円

生活費:月額

60,000 円

GAEAピッチコンテストの地区予選で準優勝したときの写真
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

100,000 円

生活費:月額

60,000 円

スペシャルエピソード

留学中に手に入れた、今でも大事にしているもの

帰国の2日前に、製品開発のチームメイトがくれたキーホルダーです!サンダルを3Dプリントしたものをもらいました。私たちはProduct Development Project(PDP)及び夏休みのRAで生分解性の素材を用いたインソールの開発をしてきました。このサンダルは、インソールのProof-of-Concept としてPDPでの1年間を通して開発したものです。みんなで試行錯誤しながらアイデアを出したり何度も失敗作を作ったりしながら開発したものであり、プロトタイピングの経験やチームでの1年間の思い出が詰まっています!

右手に持っているものがもらったキーホルダーです

ココでしか得られなかった、貴重な学び

Startup Experienceという授業では、チームのリーダーを務めました。分野も出身国もバラバラの中、最年少である私がリーダーに立候補しました。日本だと大体、専攻や年齢は一緒のことが多いので、この留学でしか得ることの無い経験でした。その授業では、スタートアップの立ち上げに関しての基礎知識だけでなく、実際にチームで課題を見つけ、それに対してのアイデアを作ります。はじめは各々のモチベーションや考えていることがバラバラだったのですが、積極的に外に出て様々な人にインタビューをしたり、じっくり話し合って共通の興味分野を見つけたりしました。結果として、フィンランドに来た移民が仕事を探しやすくなるための言語学習アプリを開発しました。プロトタイプの開発に当たっては、移民局や言語センターへのユーザーインタビューを行うなど、多くの人を巻き込むことができました。

チームメイトの写真

この国のことが、とても好きになった瞬間

8か月間のホームステイでは、クリスマスをはじめとしたホストファミリーの行事に誘ってもらいました!その中でも特に印象に残っているのが、ミッドサマーの時に招待してもらったサマーコテージです。サマーコテージは都会から離れた市の中から、さらにボートで湖を渡った先にあります。電気も水道もない中で、自給自足の生活をしており、とても新鮮な経験となりました。特にフィンランドの静かな自然や、穏やかな湖が好きで、その中でゆったりと過ごす時間は言い表せないほど幸せでした。さらに、サマーコテージでは各々が「プロジェクト」として、絵をかいたりアコーディオンを弾いたりしていることも印象的でした。物質的な豊かさだけではなく、このようにそれぞれが好きなことを好きなだけやれる、という空間を経験して、新たな幸せの価値観を得ることができました。

サマーコテージの前に広がる景色

トライアンドエラーあるのみ

  • 語学力 : 英語

留学のはじめの頃、授業での英語のディスカッションについていけない、ということがありました。みんなが話している内容は理解できるけれど、何を発言すればよいかわからないor話したいことがあっても文法を考えている間に話題が移ってしまう、ということが何度もありました。
悩んだ末、「完璧に話すことを諦める」ことにしました。そこからはほかの学生と同じタイミングで話し始め、文法は気にせずに話すことを心掛けました。意外と、言葉に詰まってもみんな待ってくれるし、思っていたよりも通じます。

留学開始から3か月が経った頃には、日常会話やディスカッションにはついていけるようにはなりました。しかし次の課題が生まれます。しっかりとした正しい文法で話す必要がある場面では言葉に詰まってしまう、ということです。ビジネスインキュベーションプログラムの一環として、ちょうど留学100日目の日に、私のビジネスアイデアを動画に撮影する、という回がありました。その際、正しい文法で話さなければならないという考えと緊張感で言葉が詰まってしまい、思うような撮影ができませんでした。とても悔しかったです。
この経験をリベンジする機会がその2週間後にありました。インキュベーションプログラムのまとめとしてのピッチイベントです。私は何度も練習し、ピッチしている様子を自分で撮影し見返して英語の表現やジェスチャーなどを改善していきました。結果としてピッチイベントでは自信をもって発表することができ、動画撮影の際に手伝ってくれた方からも褒めてもらいました。

結果として、
話しだせない→完璧な文法で話すことを諦め、とりあえず話してみる
緊張する→何度も練習し準備して望む
ということにより課題を解決することができ、英語力をステップアップさせることができました。

ディスカッションの一例
ビジネスアイデアの動画を撮影したスタジオ
ピッチイベントでリベンジ!

留学前にやっておけばよかったこと

・英語のアウトプット
・日本の歴史、文化の勉強
・国内旅行
・留学先で会いたい人、行きたい場所、参加したいイベントのリストアップ
・留学をするために変更したことのリストアップ(クレジットカードなどのアカウントに登録されている電話番号、郵便物の住所、国など。帰国してからなにをどう変えたのかがわからなくなります)

留学を勧める・勧めない理由

新しいことに挑戦し続けることで、新しい人やコミュニティと出会うことができ、自分の価値観をアップデートすることができます。留学は生活するだけでもそれができる最高の環境です。いつまたパンデミックなどが起きて行けなくなるかは誰にもわからないので、行けるときに留学に行きましょう!

これから留学へ行く人へのメッセージ

ダメ元で飛び込んでみる、ということを積極的にやってみましょう!自分が思っているより、周りの人はそれを応援してくれます。日本を飛び立ち、新しい環境にどんどん飛び込んでいきましょう。