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最終更新日:2022年12月28日 初回執筆日:2022年12月28日

ドイツにおける子どもの貧困対策に学ぶ

留学テーマ・分野:
短期留学(3か月以内、語学・ボランティアなど各種研修含む)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • NPO法人ディ・アルヒェ(箱舟)
  • ドイツ
  • フランクフルト、シュヴェービッシュ・ハル
留学期間:
50日
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 400,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
ドイツ語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

ドイツに19の施設を持つ非営利団体「ディ・アルヒェ(箱舟)」は1995年以来、貧しい子どもたちを支援する活動を行っており、地域の子どもたちを対象に無料の食事を提供している。子どもの支援も充実しているが、食堂の調理スタッフの一部に失業者を起用するなど、困窮した大人にも寄り添っており、サービスの利用者はドイツ国内で4000人いる。留学ではフランクフルトの「箱舟」の施設でボランティア活動を行い、スタッフや子どもたちと触れ合うことによって、肌感覚でドイツにおける貧困対策の実態を学んだ。併せて。低所得家庭やひとり親世帯の支援がドイツではどのように実施され、成果を出しているのかリサーチを行った。

留学の動機

私は、土曜日の昼に地域の親子を対象に無料で食事を提供する子ども食堂である「しずおかキッズカフェ」の代表を務めている。2015年に「箱舟」の創設者、ベルント・ジゲルコフ氏のインタビューがNHKで放送され、「国が持つ最も大きな潜在能力は子どもである。子どもに投資しない国は真に豊かだとは言えない」と述べていた彼の言葉が強烈に印象に残り、ドイツ留学を志すようになった。

成果

短い留学期間ではあったが、日本と同じような課題に取り組んでいるドイツの実態を自分の目で見ることが出来た。3万人以上(5人に1人)の子どもたちが相対的貧困で、しかも離婚率が比較的高いドイツは、ひとり親世帯でHarz IV(無職のひとり親に対して支給される社会福祉給付金)を受給している家庭が多い。箱舟のような慈善団体は様々な家庭の事情を抱えた子どもたちにとって大きな精神的・物質的支えとなっている。

ついた力

人見知り克服力

最初の頃は誰に対しても人見知りをしてしまい、「あなたは傍観者のようだ」と注意された。消極的な理由を言葉の壁のせいにしていたが、「言葉は関係ない。ここにはドイツに移民して間もなくドイツ語が話せない子どもたちがいるけど、皆と問題なく遊んでいる」とスタッフの方にご指摘を受けた。子どもたちと遊んだり、英語の宿題を手伝ってあげるなど、自分が出来ることから始めてみたら、人見知りを徐々に無くすことができた。

今後の展望

私は、商店街の空き店舗を利用して「しずおかキッズカフェ」という団体で子育て支援活動を行っている。気が向いたときに親子で立ち寄れる場として、若い親子によってコミュニティに賑わいが創出されつつある。留学によって、地域で子育てを支える仕組みをより充実化させるためのヒントを得ることが出来た。今後も地域での活動を継続していきたい。

留学スケジュール

2017年
8月~
2017年
10月

ドイツ(フランクフルト)

フランクフルトにある三か所の箱舟の施設(ノルトヴェストシュタット、グリースハイム、エーリッヒケストナー)でボランティア活動を行った。施設内はアットホームな雰囲気で、子どもたちは小学校が終わる13時頃になるとまっすぐ箱舟にやってきて、16時頃までご飯を食べたり、宿題を終わらせたり、遊んだりして思い思いに放課後の時間を過ごしていた。フランクフルトの箱舟を利用している子どもたちの約40%がモロッコ系、さらに約40%がロシア系の移民の子どもたちだった。ドイツに移民して数日しか経過していない子どももいたが、異なる宗教や人種の子どもたちの間に友情が芽生え、仲間意識を育んでいくのを間近に垣間見ることができた。箱舟では、一人ひとりがかけがえのない存在であるという自信をつけさせ、のびのびと育っていけるよう、手厚い支援を行っていた。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スーパーや薬局、イスラム服飾店の並びの一角にある、箱舟の施設
モロッコ系の名前に多い「Y」の引き出しは名札でいっぱい
箱舟の子どもたちと日本の折り紙や紙風船で遊んでいる様子
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

2017年
8月~
2017年
9月

ドイツ(シュヴェービッシュ・ハル)

インテンシヴ4という集中ドイツ語コースを受講した。テストの結果振り分けられたのはヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に基づく6段階の共通評価レベルの4番目のレベルに相当するB2レベルのクラスだった。文法や作文、リスニング、スピーキング、ディスカッションやプレゼンテーションの授業を通して、ドイツ語を毎日徹底的に鍛えられた。授業中は辞書の使用は禁じられていて、分からないことがあれば授業の進行の邪魔をしてでも手を挙げて質問しなければならなかった。多国籍のクラスメイト達と授業時間以外にもカフェテリアや寮での共同生活はドイツ語で会話を交わし、毎週のテストに向けて夜まで一緒に勉強することもあった。クラスメイトの多くが、ドイツで将来働くことや進学することを希望している人たちで、ドイツの経済的豊かさや生活水準の高さを求めていかに多くの諸外国の人々がこの国に住むことに魅力を感じているのかを実感した。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

絵画のような美しい町並みのシュヴェービッシュ・ハル
ドイツで一番感動した、聖ミヒャエル教会
語学学校の先生とクラスメイトで食事会
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

ココでしか得られなかった、貴重な学び

語学学校では、「声が小さいよ」「もっと自信を持って話してごらん」とよく指摘された。日本では当たり前の態度が、海外に渡ると異様に映るのだと驚いた。留学を通して、自信を持って自分の意見を発言することが大切だと学んだ。日本の謙遜や遠慮の文化は良い面もあるが、自分の考えを述べることが出来なければ外国では相手にされない。語学学校の授業のなかで「あなたの長所はなんですか」という質問に、私は答えることができなかった。先生に「長所が無いなんてことはないでしょう。言ってみなさい」と促されても、「ほかの人の長所を見つけることができるのが私の長所です」と答えてしまった。自分の取り柄はなんだろうと考えさせられた。日本にいると、日々忙しく自分のことについてあまり深く考えることがなく、現状に甘んじていて向上心もあまり持っていなかった。しかし、留学を通して自分はまだまだ勉強不足で、もっと自分を磨かなければいけないと気付いた。私の留学体験談は決してサクセスストーリーではなく、失敗や挫折のほうがたくさん味わった。しかし、留学をしたおかげで、世界のどこに行っても自信を持てるような自分の強みを見つけたいと思うようになった。

語学学校で4週間共に学び成長した、大切な仲間

日本のことが、とても好きになった瞬間

ドイツでは、日本のようにどこでもトイレがあるわけではなく、見つかったとしても(50セントぐらいで安いのだが)有料のトイレであったり、汚いトイレしか見つからないことが多かった。また、飲食店の衛生面も少し気になった。パン屋さんの店員さんはお金などを触った素手でパンを袋に詰めていたり、サンドイッチにはハエがたかっていたりした。ドナルド・キーン氏が「日本人は清潔だ」と言っていたのを思い出した。日本のトイレと衛生管理は世界に誇れるレベルだと感じた。

デパートの有料トイレ

現地の言葉あるいは英語で自分からコンタクトを取る!

  • 留学先探し : ボランティア

ボランティアの受け入れ先には、留学の3カ月ほど前からドイツ語でメールを通してコンタクトを取り始めました。失礼にならないように、ドイツ語のEメールの書き方についての本を参考にしました。最初はなかなか返信が遅く不安でしたが、再度問い合わせると返信がすぐに返ってくるようになりました。メールの返事が遅くても、あきらめないことが大切だと思います。また、現地の言葉が分からない場合には、ヨーロッパなら英語がよく通じるので、グーグル翻訳などの機械翻訳を使わずに、コミュニケーションを英語で通すのも大切だと思います。

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学の期間は、あっという間に終わってしまいます。私は短期留学だったので特に、時間が少なすぎてやりたかったことが全ては出来なかったことが一番心残りでした。時間とお金に余裕のある人には、長期の留学をおすすめします。休学をしたくない人は、夏休みなどの長期休暇をフルに活用する留学を何度か経験すると良いと思います。