留学内容
交換留学生として約1年間、国立台湾大学芸術史研究所に所属しました。
私は日本の絵画、とくに江戸時代に描かれた仏教絵画について研究しています。美術史学とは「作品がいつ、どこで、なぜ、誰によってつくられ、つくられたあとどのように鑑賞されてきたのか」を探ることを通し、作品の果たしてきた社会的機能を解釈することであると、私は考えています。また、それを通して時空を違える他の人間の思考/思想について理解し、広く紹介することです。
日本美術の歴史を考えるとき、中国文化の存在は無視できません。日本の画家や絵画の鑑賞者にとって、中国美術は常に意識されるものであり、取捨選択しながらみずからの内に取り込んできました。じつは「江戸時代」も「仏教絵画」も、日本美術史学の花形です。しかし、その両方の要素をもった私のような研究領域は、まだまだ未開拓です。私はこの領域を開拓するにあたり、中国美術史についての知識が必要と考えました。鎖国下にあった時代でも、すでに日本に伝来していた元朝以前の作品や、長崎を通して新たにもたらされた明清朝の作品は選択的に受容されていたという事実があります。国内のみに目を向けた狭量な視野では充実した学問になり得ません。
このような意識のもと、台湾大学芸術史研究所を拠点に、故宮博物院や台湾師範大学芸術史研究所などで、中国美術や、その日本とのかかわりについて研究しました。